私を虐めたりしたらカウンターが発動してあなたは酷い目に遭いますよ?

真理亜

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「ま、まぁ、なんだその...と、とにかく! 明日になったらバレット様に誠心誠意ちゃんと謝るように! 以上だ!」

 グラントは強引に切り上げた。

「わ、分かりました。も、申し訳ありません...」

 本当は納得していなかったが、グラントを殴ってしまった手前、強く言えなくなったビビアンは、そう言って父親の執務室を後にした。


◇◇◇


 自分の部屋に戻ろうとしたビビアンに罵声が飛ぶ。

「ビビアン! 廊下の掃除が終わってないじゃないの! このグズ! なにをチンタラやってるのよ! さっさと終わらせなさい!」

 顔を歪めて怒りを露にするのは義母のイライザである。ビビアンはこの家で使用人と同じ扱いを受けていた。

 本来の使用人と同じように、掃除、洗濯、炊事と家事は一通り全てやらされている。
 
 義母と義妹がこの家に来てから5年間、毎日こき使われていた。そのせいでビビアンの両手は、伯爵令嬢とはとても思えないほど手荒れが酷かった。

 前妻の娘であり、伯爵家の正当後継者であるビビアンが憎くて堪らないイライザは、こうやって鬱憤を晴らしていたのだ。

「も、申し訳ありません、お義母様。お父様に呼ばれておりまして...すぐにやります」

「言い訳無用! その体に思い知らせてあげるわ!」

 イライザは乗馬用の鞭を振り上げ、ビビアンを強かに打ち付けようとした。だが...

 ススッ! パチーン!

「へぶぅっ!」

 イライザの鞭打ちをスルッと躱し、ビビアンの見事なカウンターパンチが顎にヒットした。イライザはもんどり打ってひっくり返った。

「はわわわっ! す、すいません! お義母様! すいません! すいません!」

ビビアンはコメツキバッタのようにペコペコとお辞儀を繰り返して謝った。

「...えぇ、分かってる分かってるわ...ビビアン、あんたに悪気は無い...全てはカウンタースキルの発動したせいだってことなのよね?」

「は、はい...」

「分かっちゃいるけど納得いかないし、痛いもんは痛い~! あとなんでグーで殴るの!? せめて平手打ちにしてよ! 私、女なのよ!?」

 イライザの絶叫が家中に轟いた。何度もビビアンにやられているのに懲りない女である。

「お母様!? 何事なの!?」

 騒ぎを聞き付けて義妹のブレンダがやって来た。そして場を一瞥して状況を瞬時に判断したようだ。

「よくもお母様を! この悪魔! 覚悟しなさい!」

 イライザが取り落とした鞭を拾い上げてビビアンに向かって来るが...

 ススッ! パチーン!

「へぶぅっ!」

 以下同文...

 本当に懲りない親娘である...
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