私を虐めたりしたらカウンターが発動してあなたは酷い目に遭いますよ?

真理亜

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 伯爵家の屋敷に着いた途端、ビビアンに罵声が飛ぶ。

「ビビアン! 遅いじゃないの! どこで道草を食っていたのよ! この役立たず! とっとと掃除をしなさい!」

「お姉様! その前にお茶とオヤツの用意をさっさとしてよね! このスットコどっこい! 私、お腹空いてるんだからね!」

 言わずと知れたイライザとブレンダの親娘である。だがそんな二人は、ビビアンの後に続いて屋敷に入って来た人物を見て驚愕することになる。

「「 な、なんで!? ど、どうしてライオス殿下がここに居るの!? 」」

 少し間を置き、今度は別の声が聞こえた。父親のグラント声である。

「ビビアン! やっと帰って来たか! ちゃんと誠心誠意バレット様に謝罪したんだろうな! この疫病神がぁ! 許して貰えなかったら貴様は今夜メシ抜きだぞ! 分かってんのかごらぁ!...あ?」

 ここでようやくビビアンが一人でないことに気付いたようだ。

「ら、ライオス殿下!? ど、どうしてビビアンと一緒に!?」

 親娘と揃って目を丸くしている。

「...なるほどな...ビビアンがこの屋敷でどんな扱いを受けていたのか、今のでよおく分かった。こんな所に一分一秒だって置いておけない。ビビアン、早く荷物を纏めなさい」

 ライオスは怒りを押し込めた低い声でビビアンに命ずる。

「は、はい...」

 ビビアンはそそくさと屋根裏にある自分の部屋に向かった。ライオスがその後ろ姿を眺めていると、おずおずといった感じでグラントが話し掛けて来た。

「あ、あの...ライオス殿下...先程のは一体どういう意味でしょうか...」

「言葉通りの意味だが? ビビアンは今日から王宮で暮らす。貴様らのような人の皮を被ったケダモノどもと一つ屋根の下で一緒に暮らすなんてとても耐えられるものではないだろう?」

「そ、そんないきなり...」

「なんだ!? 何か不満でもあるって言うのか!?」

「ひっ!」

 ライオスにギロリと睨まれ、ライオスが低い悲鳴を上げた。

「貴様らの処分は追って沙汰を下す。楽しみに待っているが良い。伯爵家の正当後継者を不当に扱ったんだ。甘い処分で済むと思うな? そしてなにより」

 ライオスはいったんそこで言葉を切った。

「俺のビビアンを虐めたヤツらを俺は絶対に許さん! 覚悟しろ!」

「「「 ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ! 」」」

 ライオスの怒気をマトモに食らった三人がその場に崩れ落ちた。と、そこへ、

「お、お待たせしました...」

 小さな旅行鞄一つ抱えたビビアンが下りて来た。

「ビビアン...荷物はそれだけなのか!?」

「は、はい...」

 貴族令嬢としてとても有り得ない。これだけでもビビアンがこの屋敷でどれだけ冷遇されていたのか、手に取るように分かるようだ。

「...ビビアン、行こう」

 ライオスはビビアンの手を取った。

 一刻も早くこの屋敷から出してやりたかった。

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