私を虐めたりしたらカウンターが発動してあなたは酷い目に遭いますよ?

真理亜

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 噂の内容はこんな感じだ。

 曰く「バレットとアマンダは道ならぬ恋に落ちて駆け落ちした」曰く「アマンダは既にバレットの子を宿している」曰く「二人は既に細やかながらも結婚式を挙げて幸せに暮らしている」などなど。 

 根も葉もない出鱈目なのだが、本人達が登校して来ない以上、噂を否定する者もなく噂は一人歩きを続けた。

 ついには「筆頭公爵家としてのスキャンダルを恐れるあまり、愛し合う若い二人の仲を引き裂き、あまつさえお腹の子共々秘密裏に始末した」なんていう噂まで飛び交うようになった。

 これにはさすがにバレットの父であるヘンリーも無視できなくなり、慌てて自分の屋敷に戻った。

 ちなみに普段は沢山囲っている愛人宅を泊まり歩いており、滅多なことでは屋敷に戻ったりはしない。この父にしてこの子ありといった所か。

「バレット! バレットはおるか!」

「ふえっ!? げっ!? ち、父上!?」

 ヘンリーが帰らないことを良いことに、学園をサボってのほほんとしていたバレットは慌てた。昼間から惰眠を貪りだらしない生活を続けていた愚息にヘンリーはぶちキレた。

「この愚か者がぁ!」

「ひでぶっ!?」

 まずはバレットを殴り飛ばして目を覚まさせる。

「なんだあの噂は!? 貴様は一体何を考えている!?」

「へっ!? う、噂!? あ、あれは根も葉もない出鱈目で...」

「だったらなぜそれを否定せん! 家に引き籠って何をしとるか!」

「だ、だってあんなもんは放っておけばその内に下火になって...」

「このたわけ者がぁ!」

「たわばっ!?」

 ヘンリーはもう一度バレットを殴り飛ばした。

「貴様とアマンダは純愛に殉じた悲劇の主人公で、儂は前途有望な若い二人の仲を引き裂き、お腹の子諸とも死に追いやった極悪非道の大悪人とまで言われておるのだぞ!」

「は、はぁ!? 純愛!? お腹の子!? 死!? はぁぁぁっ!?」

 全く身に覚えがないバレットは困惑するしかない。
 
「ち、父上! そ、それは何かの間違いです! お、俺はアマンダとはとっくに別れましたし、あ、アマンダとそんな関係になったことは...」

「...あるんだな?」

「た、確かにありましたけど、妊娠なんてそんな...」

 バレットは大量の汗を顔から流した。

「ハァッ....」

 ヘンリーは特大のため息を吐いた後、バレットの首根っこをひっ掴んだ。 

「とにかく来い!」

「ど、どこへ!?」

「アマンダ嬢の所だ。こうなった以上、貴様は責任を取ってアマンダ嬢と添い遂げるしかあるまい。噂を払拭するにはそれしかない」

「えぇっ!? で、でもそうなったら俺は...」

「無論、貴様は廃嫡する。ビビアン嬢を娶れなかったのだからな」

「そ、そんなぁ~!」

「つべこべ言うな!」

 バレットは呆然としながらただヘンリーに引き摺られて行ったのだった。
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