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入学式のイベントは無事回避した。
第2王子のマリク殿下とも会わなかった。これで一安心...と、思っていたら...
「あっ! 痛っ!」
「オーッホホホッ! あ~ら、ごめんあそばせ。長い足が絡まってしまいましたわ。でもそうやって地べたを這ってる方が、卑しい身分のあなたにはお似合いでしてよ? ずっとそうしていらしたら? オーッホホホッ!」
おかしい。なんで私は廊下ですれ違い様に足を引っ掛けるなんてベタな虐めを受けてる!? 悪役令嬢がホントに虐めてたらダメじゃん! 何やってんの!? ストーリー変わっちゃうよ!?
しかも今時「オーッホホホッ」って、昭和かよ...今はもう令和だぞ...しかしなんで第2王子ルートの悪役令嬢である公爵令嬢のエレノアが私に絡んでくるんだ!? マリク殿下と私には何の接点も無いのに。
さっぱり分からん! 何がどうなっているんだ!? 誰か教えて欲しい!
「はぁ...」
私はクラスの自分の机に着いてため息を吐く。机には「淫売」だの「娼婦」だの「売女」だの落書きされている。教科書もノートもビリビリに引き裂かれている。これはあれか? 私が平民の分際でマリク殿下を誘惑してるとか思い込んでる? いやいや、有り得ないから!
クラスのあちこちから私の陰口を囁く声、嘲笑う声が聞こえて来る。四面楚歌というのはこういう状態のことを言うんだろうなぁ...なんて他人事みたいに思っていた。
その後も陰湿な虐めは続いた。足を引っ掛けられるのは日常茶飯事で、エレノアのみならず、その取り巻きも仕掛けて来るので、私は体中が傷だらけだ。
教科書はもう何冊もダメにされた。何度も購買に買いに行くので、売り子のおばちゃんに不審がられてる。クラスでは完全にハブられてて友達なんか一人も居ない。
こんな状況、普通の人ならとっくに心が折れてるだろう。だが私は折れない。その理由は一重に、
首チョンパされるよりはマシだからだ。
死ぬより辛いような状況でも本当に死ぬよりは遥かにマシだ。耐えていればその内に誤解は解けるだろう。なにせ私とマリク殿下とはクラスが違う。顔を合わせたことも無ければ会話を交わしたことも無いのだから。
そんな毎日が続いていたある日、私は昼食を取るために人気の無い中庭のベンチに腰掛けていた。最初は学食で食べていたんだけど、トレイに料理を載せて歩いているところに足を掛けられ、料理をぶちまけてしまってからは、購買でパンを買って一人で食べるようにしている。あれは危なかった。危うく大火傷するところだったから。
パンをちぎって鳩にエサを上げながらのんびり過ごしていると、不意に人の気配がした。気付いた時には5、6人の女子生徒に囲まれていた。エレノアの取り巻きどもだ。ニヤニヤと下卑た嗤いを浮かべながら近付いて来る。
人気の無い所に居た私を見付けて、甚振ってやろうという魂胆なんだろう。まず二人が私の両腕をホールドして、残りの三人が殴る蹴ると暴力を振るう。私は奥歯を噛み締め耐える。意識が飛びそうになった時だった。
「何をしている!」
誰かの声が響き渡った。
第2王子のマリク殿下とも会わなかった。これで一安心...と、思っていたら...
「あっ! 痛っ!」
「オーッホホホッ! あ~ら、ごめんあそばせ。長い足が絡まってしまいましたわ。でもそうやって地べたを這ってる方が、卑しい身分のあなたにはお似合いでしてよ? ずっとそうしていらしたら? オーッホホホッ!」
おかしい。なんで私は廊下ですれ違い様に足を引っ掛けるなんてベタな虐めを受けてる!? 悪役令嬢がホントに虐めてたらダメじゃん! 何やってんの!? ストーリー変わっちゃうよ!?
しかも今時「オーッホホホッ」って、昭和かよ...今はもう令和だぞ...しかしなんで第2王子ルートの悪役令嬢である公爵令嬢のエレノアが私に絡んでくるんだ!? マリク殿下と私には何の接点も無いのに。
さっぱり分からん! 何がどうなっているんだ!? 誰か教えて欲しい!
「はぁ...」
私はクラスの自分の机に着いてため息を吐く。机には「淫売」だの「娼婦」だの「売女」だの落書きされている。教科書もノートもビリビリに引き裂かれている。これはあれか? 私が平民の分際でマリク殿下を誘惑してるとか思い込んでる? いやいや、有り得ないから!
クラスのあちこちから私の陰口を囁く声、嘲笑う声が聞こえて来る。四面楚歌というのはこういう状態のことを言うんだろうなぁ...なんて他人事みたいに思っていた。
その後も陰湿な虐めは続いた。足を引っ掛けられるのは日常茶飯事で、エレノアのみならず、その取り巻きも仕掛けて来るので、私は体中が傷だらけだ。
教科書はもう何冊もダメにされた。何度も購買に買いに行くので、売り子のおばちゃんに不審がられてる。クラスでは完全にハブられてて友達なんか一人も居ない。
こんな状況、普通の人ならとっくに心が折れてるだろう。だが私は折れない。その理由は一重に、
首チョンパされるよりはマシだからだ。
死ぬより辛いような状況でも本当に死ぬよりは遥かにマシだ。耐えていればその内に誤解は解けるだろう。なにせ私とマリク殿下とはクラスが違う。顔を合わせたことも無ければ会話を交わしたことも無いのだから。
そんな毎日が続いていたある日、私は昼食を取るために人気の無い中庭のベンチに腰掛けていた。最初は学食で食べていたんだけど、トレイに料理を載せて歩いているところに足を掛けられ、料理をぶちまけてしまってからは、購買でパンを買って一人で食べるようにしている。あれは危なかった。危うく大火傷するところだったから。
パンをちぎって鳩にエサを上げながらのんびり過ごしていると、不意に人の気配がした。気付いた時には5、6人の女子生徒に囲まれていた。エレノアの取り巻きどもだ。ニヤニヤと下卑た嗤いを浮かべながら近付いて来る。
人気の無い所に居た私を見付けて、甚振ってやろうという魂胆なんだろう。まず二人が私の両腕をホールドして、残りの三人が殴る蹴ると暴力を振るう。私は奥歯を噛み締め耐える。意識が飛びそうになった時だった。
「何をしている!」
誰かの声が響き渡った。
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