15 / 28
第15話
しおりを挟む
男性陣に疑いの目を向けながらも、今回だけ女性陣は信じることにした。
「取り敢えず犬の訓練待ちってことで、次は一週間後に集まりましょうか。それまでは各自、自分の役割をしっかり果たして下さいね? 何か動きがあったら、すぐ私に連絡を。以上です」
いつものようにアズミが場を締めて、この場はお開きとなった。
「なぁ、アズミ。ちょっといいか?」
「どうしました?」
ハインツに呼び止められたアズミは訝し気に振り返った。
「その...このあと一緒にお茶でもしないか?」
「どうしたんです? 急に?」
「いやその...ここのところ婚約者らしい語らいが無かったなと思ってね...どうだろうか?」
ハインツがモジモジしながら続ける。
「ふ~ん...語らいですか...」
アズミが目を細めた。
「そう言えばカズミはマインツ様と一緒に、今王都で一番人気のオペラを観に行ったそうですよ? なんでもマインツ様がプレミアチケットを手に入れたそうで。ラブラブでいいですよねぇ~」
「へ、へぇ~...それ凄いね...」
ハインツの目が泳ぐ。アズミは続ける。
「サズミはヤインツ様と馬で遠乗りしたそうです。その後はお洒落なコテージで一泊したとか。とっても美味しい山の幸を堪能したようです。食べてみたいなぁ~」
「へ、へぇ~...そうなんだ...」
ハインツの目がますます泳ぐ。アズミは更に続ける。
「タズミはラインツ様と温泉旅行に行ったそうです。美人になると噂の名湯だったそうで。お肌がツルツルになったって自慢してましたよ。羨ましいなぁ~」
「へ、へぇ~...行ってみたいね...」
ハインツの目は泳ぎっ放しだ。アズミはまだまだ止まらない。
「ナズミはワインツ様と一緒に教会のバザーに参加したそうです。まるで店を経営している夫婦みたいだって評判だったそうですよ。仲良しでいいなぁ~」
「へ、へぇ~...羨ましいね...」
ハインツの目は泳ぎ疲れてしまった。アズミはニンマリと怪しく微笑む。
「それで? ハインツ様? なんでしたっけ?」
「あぁ、え~と...その...」
ハインツは固まってしまった。
「どうしました?」
アズミが優しく催促する。
「...その...後日、王都で一番のホテルの最上階にある展望レストランを予約するから、一緒に食事をしてくれないだろうか?」
「フフフッ! えぇ、喜んで! 楽しみにしてますわね!」
アズミは花が咲くような笑顔を浮かべた。ハインツはホッと息を吐いた。
だがこの約束が守られることはなかった。
何故なら...
「取り敢えず犬の訓練待ちってことで、次は一週間後に集まりましょうか。それまでは各自、自分の役割をしっかり果たして下さいね? 何か動きがあったら、すぐ私に連絡を。以上です」
いつものようにアズミが場を締めて、この場はお開きとなった。
「なぁ、アズミ。ちょっといいか?」
「どうしました?」
ハインツに呼び止められたアズミは訝し気に振り返った。
「その...このあと一緒にお茶でもしないか?」
「どうしたんです? 急に?」
「いやその...ここのところ婚約者らしい語らいが無かったなと思ってね...どうだろうか?」
ハインツがモジモジしながら続ける。
「ふ~ん...語らいですか...」
アズミが目を細めた。
「そう言えばカズミはマインツ様と一緒に、今王都で一番人気のオペラを観に行ったそうですよ? なんでもマインツ様がプレミアチケットを手に入れたそうで。ラブラブでいいですよねぇ~」
「へ、へぇ~...それ凄いね...」
ハインツの目が泳ぐ。アズミは続ける。
「サズミはヤインツ様と馬で遠乗りしたそうです。その後はお洒落なコテージで一泊したとか。とっても美味しい山の幸を堪能したようです。食べてみたいなぁ~」
「へ、へぇ~...そうなんだ...」
ハインツの目がますます泳ぐ。アズミは更に続ける。
「タズミはラインツ様と温泉旅行に行ったそうです。美人になると噂の名湯だったそうで。お肌がツルツルになったって自慢してましたよ。羨ましいなぁ~」
「へ、へぇ~...行ってみたいね...」
ハインツの目は泳ぎっ放しだ。アズミはまだまだ止まらない。
「ナズミはワインツ様と一緒に教会のバザーに参加したそうです。まるで店を経営している夫婦みたいだって評判だったそうですよ。仲良しでいいなぁ~」
「へ、へぇ~...羨ましいね...」
ハインツの目は泳ぎ疲れてしまった。アズミはニンマリと怪しく微笑む。
「それで? ハインツ様? なんでしたっけ?」
「あぁ、え~と...その...」
ハインツは固まってしまった。
「どうしました?」
アズミが優しく催促する。
「...その...後日、王都で一番のホテルの最上階にある展望レストランを予約するから、一緒に食事をしてくれないだろうか?」
「フフフッ! えぇ、喜んで! 楽しみにしてますわね!」
アズミは花が咲くような笑顔を浮かべた。ハインツはホッと息を吐いた。
だがこの約束が守られることはなかった。
何故なら...
1
あなたにおすすめの小説
攻略対象の王子様は放置されました
蛇娥リコ
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
〖完結〗冤罪で断罪された侯爵令嬢は、やり直しを希望します。
藍川みいな
恋愛
「これより、サンドラ・バークの刑を執行する!」
妹を殺そうとした罪で有罪となった私は、死刑を言い渡されました。ですが、私は何もしていない。
全ては、妹のカレンが仕組んだことでした。
刑が執行され、死んだはずの私は、何故か自分の部屋のベッドの上で目を覚ましたのです。
どうやら時が、一年前に戻ったようです。
もう一度やり直す機会をもらった私は、二度と断罪されないように前とは違う選択をする。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全14話で完結になります。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
婚約破棄までの七日間
たぬきち25番
恋愛
突然、乙女ゲームの中の悪役令嬢ロゼッタに転生したことに気付いた私。しかも、気付いたのが婚約破棄の七日前!! 七日前って、どうすればいいの?!
※少しだけ内容を変更いたしました!!
※他サイト様でも掲載始めました!
【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~
山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。
この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。
父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。
顔が良いから、女性にモテる。
わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!?
自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。
*沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
【完結】ロザリンダ嬢の憂鬱~手紙も来ない 婚約者 vs シスコン 熾烈な争い
buchi
恋愛
後ろ盾となる両親の死後、婚約者が冷たい……ロザリンダは婚約者の王太子殿下フィリップの変容に悩んでいた。手紙もプレゼントも来ない上、夜会に出れば、他の令嬢たちに取り囲まれている。弟からはもう、婚約など止めてはどうかと助言され……
視点が話ごとに変わります。タイトルに誰の視点なのか入っています(入ってない場合もある)。話ごとの文字数が違うのは、場面が変わるから(言い訳)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる