最初から私を殺す気だったんですね...

真理亜

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「ルージュ・バレンタイン! 貴様の愚行は丸っとお見通しだ! 貴様との婚約をここに破棄する! 俺様のような高貴なる者に貴様は相応しくない! 明日処刑を行う! 首を洗って待っていろ! もっともその首もすぐに亡くなるがな! フハハハッ!」

 上手いことを言ったかのように下卑た嗤いを浮かべるのは、この国の王太子ロベルト・シュタイナーである。その傍らにはここ最近、ロベルトのお気に入りの男爵令嬢マリアンヌの姿があった。

 今日は王家主宰の舞踏会が開かれている。国中の全ての有力貴族が一同に会するこの場での不穏当な王太子の発言に、眉を顰める者が多く居た。

 言われた当人であるルージュ・バレンタイン公爵令嬢は、至って涼しい顔でこう答えた。

「愚行とは何の事でございましょう? 心当たりがございませんが?」

「惚けるな! 貴様はこの天使のように愛らしいマリアンヌに嫉妬して、散々虐めておったそうではないか! 可哀想に! マリアンヌは泣いておったのだぞ!」

 ロベルトは口から唾を飛ばしなから絶叫する。そして、

「ロベルト様~♪ マリアンヌはとっても怖かったです~♪」

 マリアンヌはロベルトの体にクネクネと自分の体を押し付けた。

「...全く身に覚えがございませんが...私が虐めたという証拠はお有りで?」

 それに対してあくまでも淡々とルージュは答える。

「証拠? 証拠か! そんなもん必要ない! マリアンヌが訴えた! それを俺様が承認した! それが全てだ! いいか? 高貴なる俺様が黒と言ったら黒になるし、白と言ったら白になるんだ! よおく覚えておけ! とにかく貴様は明日処刑する! これは決定事項だ!」

「...殿下、それはあまりにも暴論が過ぎ」

「黙れぇ! 公爵令嬢ごときが俺様に口答えするなぁ!」

 諌めようとしたルージュの発言を、口から泡を飛ばしながらロベルトが遮る。

「大体貴様は初めて会った時から気に入らなかったのだ! 公爵令嬢だかなんだか知らんが、高貴なる俺様に対して偉そうにしやがって! 口を開けばやれ『王族たる者、常に皆の模範でなければなりません』だの『国を治める上で学ぶべきことは沢山あります』だの『上に立つ者は下々の者達のことをしっかりと見てあげなければなりません』だの、何様のつもりだ!」

 ルージュにとっては極当たり前のことを言っていただけなのだが、ロベルトにとってはそれが気に障ったらしい。
 
「最初に会ったあの日から、俺様は貴様に消えて欲しいと願っていた! そしてやっとチャンスが巡って来たんだ! 父上が病に臥せ離宮に下がり、母上も看病で付き添っている! 俺様を止めることは出来ん! 目障りだった宰相の貴様の父親は、仕事を押し付けて隣国に向かわせた! 戻って来た時には娘が首だけになっていて、さぞや驚くことだろうよ! フハハハッ!」

「...最初から私を殺す気だったんですね...」

 ルージュは唇を噛んだ。
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