嫁いで来たその日に家から追い出されたので、報復するついでに領地改革しようと思います

真理亜

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「クソッ! なんでこの俺様がこんなことを...」

 マルクは毒吐きながら自分の部屋を掃除していた。使用人が誰も居ないので自分でやるしかないのだ。

 これ以上汚れるのは我慢ならなかったので、生まれて初めて掃除道具を手にしていた。

「クソッ! クソッ! 高貴な俺様がなんだって使用人の真似事を!」

 屋敷の中は酷い状態だ。廊下は歩く度に埃が舞い上がり、使ってない部屋は埃がうず高く積み上がっている。

 マルクは取り敢えず自分の部屋と台所、浴室のみ掃除することにしたのだが、慣れない作業に悪戦苦闘していた。

「クソッ! 自分が汗臭いなんて!」

 当然ながら洗濯もしていないので、服は汗まみれである。着替えの服も底を突いて着る物がない。

 洗濯しようにも洗濯の仕方が分からないので、汗臭いのを我慢して汚れた衣類の山から比較的マシな物を選んで着るしかないのだ。

「は、腹が減った...」

 食事は缶詰めのみ。冷たい食事だけではあまり食欲も湧かない。皮肉なことに慣れない家事仕事と不味い食事のお陰で、マルクは随分とスリムになった。

「あぐ...痒い痒い~!」

 対策をしていないので『ツツガノムシ』による被害が収まるはずもない。痒みによるストレスは溜まる一方だ。

 マルクは今にも発狂しそうだった。

「クソッ! クソッ! クソオオオッ! なんで俺様がこんな目にぃ! それもこれも全てあの淫乱女のせいだあああっ!」

 マルクの呪詛の叫びがいつまでも響き渡っていた。


◇◇◇


 今日、エリスは珍しく一人で街に来ていた。ヒナとキクを迎えに来たのである。

「二人ともお待たせ~」

「エリス様、もう出来たんですか!?」

「信じられない...」

 二人が目を丸くする。

「小麦を挽いて小麦粉を作ったからね~ いつでもパン屋さんを開店できるよ~ 早速荷造りしようか~」

「「 はい! お願いします! 」」

 まずはヒナの家に行って荷物をストレージに放り込み、次にキクの家に行って同じことを繰り返す。

「じゃあ行こうか~」

「「 はい! 」」

 三人でエリス農場に向かった。


◇◇◇


「ほ、本当に小麦粉が出来てる...」

「す、凄い...こ、こんなに...」

 二人はまたしても目を丸くした。

「じゃあ後はヨロシクね~」

「「 はい! お待たせ下さい! 」」

 この日、エリス農場には焼き立てのパンの香ばしい匂いが漂っていた。

「みんな~! 今日からパン屋さんが開店だよ~!」

 エリスの言葉に従業員全員から喝采が上がった。

 その日の食卓には焼き立てのパンがこれでもかというくらい並んでいた。
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