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29 (ギルバート視点3)
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別に読む気はなかったが、借りてしまった以上は読むべきだろう。
本の内容に関してアンリエットに何か聞かれても、読んでいなければ答えられない。それはマズい。取り敢えず僕は一通り目を通すことにした。
本の内容は大まかに言えばこんな感じだ。
『主人公はとある子爵令息。ヒロインは平民の幼馴染み。彼らは身分の差を越えて愛を育んでいく。だが悲しいかな、主人公は貴族であるが故に家から命じられた政略結婚を拒むことが出来ない。泣く泣く婚約を結ぶことになったが、主人公の気持ちは幼馴染みのヒロインに向いたままだ。そのことに嫉妬した主人公の婚約者である悪役令嬢は、陰湿な虐めを繰り返しヒロインを主人公から引き離そうとする』
『だがしかし、障害があればあるほど二人は愛は逆に燃え上がり、主人公はヒロインと絶対に別れないと心に誓う。そして悪役令嬢を追い詰めるだけの証拠を掴もうと動き出す』
天啓だと思った。
まるで僕とキャロラインのことを描いているみたいじゃないか!
いやそりゃもちろん、細部に違いは色々とあるが...そもそもアンリエットは悪役令嬢じゃないし。キャロラインと面識も無いから虐めるもクソも無い。
だがそれでも、僕はこの本の内容に自分とキャロラインを重ねてしまった。キャロラインこそが『真実の愛』の相手だと思い込んでしまった。
それからはもう、僕はキャロラインにますますのめり込んで行った。アンリエットの目を盗んで重ねるキャロラインとの逢瀬は、心の底から燃え上がるような高揚感があった。
そして運命のあの日を迎える。
『あぁっ! 愛しいキャロライン! 君とこうやって隠れてコソコソと合わなければならないなんて! 僕達はなんて不幸なんだ!』
『仕方ないわ、ギルバート。私はしがない男爵令嬢で、あなたは侯爵家の次男坊。そして伯爵令嬢の婚約者なんですもの。いくら私達が幼馴染みで想い合っていたって、身分の差はどうしようもないのよ』
『そんなことはない! 真実の愛の前には身分の差なんて関係無いんだ! ほら、この本にもそう書いてある』
『で、でも...一体どうやって!?』
『出来るさ! 僕に任せといてくれ! アンリエットは僕の言いなりだからね! 伯爵家を僕に継がせるように画策して、その後で君に対する虐めをでっち上げて断罪する! アンリエットを家から追い出したら君を迎え入れる! どうだい? 完璧なプランだろう?』
...まさかこの場面をアンリエットに見られていたなんて...
僕は本当に愚か者だった...
本の内容に関してアンリエットに何か聞かれても、読んでいなければ答えられない。それはマズい。取り敢えず僕は一通り目を通すことにした。
本の内容は大まかに言えばこんな感じだ。
『主人公はとある子爵令息。ヒロインは平民の幼馴染み。彼らは身分の差を越えて愛を育んでいく。だが悲しいかな、主人公は貴族であるが故に家から命じられた政略結婚を拒むことが出来ない。泣く泣く婚約を結ぶことになったが、主人公の気持ちは幼馴染みのヒロインに向いたままだ。そのことに嫉妬した主人公の婚約者である悪役令嬢は、陰湿な虐めを繰り返しヒロインを主人公から引き離そうとする』
『だがしかし、障害があればあるほど二人は愛は逆に燃え上がり、主人公はヒロインと絶対に別れないと心に誓う。そして悪役令嬢を追い詰めるだけの証拠を掴もうと動き出す』
天啓だと思った。
まるで僕とキャロラインのことを描いているみたいじゃないか!
いやそりゃもちろん、細部に違いは色々とあるが...そもそもアンリエットは悪役令嬢じゃないし。キャロラインと面識も無いから虐めるもクソも無い。
だがそれでも、僕はこの本の内容に自分とキャロラインを重ねてしまった。キャロラインこそが『真実の愛』の相手だと思い込んでしまった。
それからはもう、僕はキャロラインにますますのめり込んで行った。アンリエットの目を盗んで重ねるキャロラインとの逢瀬は、心の底から燃え上がるような高揚感があった。
そして運命のあの日を迎える。
『あぁっ! 愛しいキャロライン! 君とこうやって隠れてコソコソと合わなければならないなんて! 僕達はなんて不幸なんだ!』
『仕方ないわ、ギルバート。私はしがない男爵令嬢で、あなたは侯爵家の次男坊。そして伯爵令嬢の婚約者なんですもの。いくら私達が幼馴染みで想い合っていたって、身分の差はどうしようもないのよ』
『そんなことはない! 真実の愛の前には身分の差なんて関係無いんだ! ほら、この本にもそう書いてある』
『で、でも...一体どうやって!?』
『出来るさ! 僕に任せといてくれ! アンリエットは僕の言いなりだからね! 伯爵家を僕に継がせるように画策して、その後で君に対する虐めをでっち上げて断罪する! アンリエットを家から追い出したら君を迎え入れる! どうだい? 完璧なプランだろう?』
...まさかこの場面をアンリエットに見られていたなんて...
僕は本当に愚か者だった...
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