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63 (第三者視点4)

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「な、なんですってぇ!? よくも私の黒歴史を! 思い出したくない過去を!」

 そう叫んでスカーレットはアンリエットの頬を思いっきり張った。アンリエットは体勢を崩した。すぐ側に大きな窓があり、アンリエットは窓ガラスに頭から突っ込むような形になった。

 ガシャーンッ!

 窓ガラスが砕け散る。その破片がアンリエットの頬を切り裂く。

「ぐうっ!」

 痛みにアンリエットの顔が歪む。

「アーッハハハッ! 良い気味だわ! 人の物を盗ろうとするからそんな目に遭うのよ! ざまぁないわね! アーッハハハッ!」

 スカーレットはおかしくて堪らないとばかりに笑い出した。アンリエットは痛みで気が遠くなりそうな所を、歯を噛みしめてグッと堪える。

「そうだわ! 良い事を思い付いた! 首吊り自殺に見せ掛けるより、この窓から突き落として飛び降り自殺に見せ掛けた方が良いわよね! そうすりゃアンタの顔の傷も誤魔化せるし!」

 そう言ってスカーレットは、狂気を宿した目のままアンリエットに近付いて行った。


◇◇◇


 パリインッ!

 クリフトファーがロバートの案内で、アパートの隣にあるという大家の家に向かっていた時だった。

「おい、なんだあの音は!?」

 見上げるとキラキラ光るガラス片が宙を舞っていた。

「ガラスの欠片!? 窓ガラスが割れたのか!? 一体なんでまた!?」

 ロバートは上を見上げて首を捻る。

「アンリエットだ! あの部屋にアンリエットが居る!」

 するとクリフトファーが確信を持ってそう叫んだ。

「本当か!?」

「あぁ、絶対間違いない! あの部屋は...2、3、4、5階か!」

 クリフトファーが指差しながら階数を数える。

「クソッ! 俺の部屋と同じフロアーかよ!」

 ロバートが歯噛みする。

「急いで戻るぞ!」

 クリフトファーとロバートはアパートの階段を駆け上がった。


◇◇◇


 スカーレットがアンリエットの体に触れようとした時だった。

「ふっざけんなぁ! 殺されて堪るかぁ!」

 そう叫びながらアンリエットが頭からスカーレットに突っ込む。

「カハッ!」

 完全に油断していたスカーレットの鳩尾にキレイに入ったようだ。スカーレットが悶絶してアンリエットと一緒に縺れるようにして倒れ込む。

「ぐうっ!」

 アンリエットは足に渾身の力を込めてなんとか立ち上がろうとする。だが、

「に、逃がさないわよ! この泥棒猫!」

 スカーレットがアンリエットの足を掴む。

「手を放せ!」

「放すもんか!」

 女同士で揉み合いになり床に転がる。先に体勢を整えたのは、当然ながら後ろ手に縛られていないスカーレットの方だった。

 スカーレットはアンリエットに馬乗りになり首を締める。

「死ねぇ!」

 アンリエットの意識が飛びそうになった。

 


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