我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「家督を継ぎ当主となった俺は、まず最初に国へ援助を申し入れた。割とすんなり受け入れて貰えたよ。どうやら国の中枢の方でも、ウチの領地で起きた水害の件は既に周知の事実だったみたいでな。逆に今頃になって援助を申し入れて来たのを不思議がられたくらいだよ。もっと早く言ってくるかと思ったってな」

 パトリックは自嘲気味に笑いながらそう言った。

「先代が危惧したことは杞憂でしかなかったってことね...」

「というよりも被害妄想の類いと言えるだろうな。一度国の介入を許せば、痛くもない腹を探られると思ってそれを嫌がったんだと思う。まぁ実際に腹の中は真っ黒だった訳だから、探られたらあちらこちらからボロが出ただろうけどな」

「どういう意味!? ウィリアムの不祥事揉み消し以外にもなにかやらかしていたって言うこと!?」

「アンリエットなら国から定められた税率の上限は知ってるな?」

「えぇ、各々の収入に対して4割が上限よね?」

「あぁ、その通りだ。だがそれに対してウチの領民達は収入の6割を納めるように言われていた」

「な、なんですって!? そんなことが許されるの!?」

 私は思わず叫んでいた。それではあまりにも領民達が可哀想だ。

「一応、国からのお達しによると緊急時には6割までなら税を徴収することを認めているんだそうだ」

「それも知ってるけど...だけどそれは今回のように天災で被害を受けたり、他国に攻め入れられた時などにのみ適用されることじゃない!? それを恒常的に行っていたって言うの!? 信じられないわ...良く暴動が起きなかったものね...」

「そこら辺は無能なりに悪知恵だけは働いたみたいでな。領民達には『冷害に強い品種を改良しているから、そのための費用として申し訳ないが協力して欲しい』って説明してたみたいだ。表向きはな」

「実際は?」

「自分達が贅沢三昧するための遊興費として消えた」

「なんてことなの...それじゃあ国の介入を嫌がるはずだわ...」

 私は呆れてしまった。

「そういうことだ。これからの我が領は、先代の愚行を改めたり領地の復興を目指したり国への借金を返したりと、かなり苦しい時期が続くだろう。アンリエットにはそんな俺を支えて欲しいんだ。俺が妻に求めるのは贅沢三昧するような女じゃなく、一緒に苦労を分かち合える女だ。一度家督を継いだことのあるアンリエットならそれが可能だと思っている。それになにより添い遂げるなら好きな女と一緒がいい」

 私は再びなにも言えなくなってしまった。
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