我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「それにしても、あんなブタだとは思わなかったわ。女と見れば片っ端から声を掛けるって聞いてたから、どんなチャラ男が来るのかと思って構えてたんだけどね。色気より食い気を優先してたんですっかりイメージ狂っちゃったわ」

「あぁ、いやいや、色気も食い気もどっちもお盛んなのは間違いないようですよ?」

「そうなの? でもあんなのに声を掛けられたって誰も相手にしないんじゃないの?」

「えぇ、マトモな令嬢ならそうでしょうね」

「それどういう意味?」

 私は首を傾げた。

「お金目当てで靡くような女は居るっていうことです」

「あぁ、なるほど...そういうことね...」

 私は心から納得した。

「でも、もうそろそろお金に物を言わせることは出来なくなるんじゃない?」

「というか、もう既にそういう状態になっているんだと思います」

「あぁ、だから焦ってんのね?」

「えぇ、なにせ火の車ですから」

「あぁ、そうだったわね。実際会ってみて良く分かったわ。あんなのが経営者じゃ傾くのも時間の問題よね」

「左様でございますな」

「さてさて、これからどう出て来るやら」

 私はお茶を飲みながら思いに耽った。

「まずはサンタンデル伯爵に泣き付くんじゃありませんか?」

「でしょうね」

「どうなさるおつもりで?」

「なにも?」

「えっ!? なにも!?」

「えぇ、なにもしないわ。サンタンデル伯爵がなんか言って来ても無視する」

「それで引っ込みますか?」

「知ったこっちゃないわよ。サンタンデル伯爵の顔を立てて会うだけは会ったんだから、もう義理は果たしたでしょう?」

「それは確かにそうなんですが...そのような理屈が通用しない相手という気もしますが...」

「放っておきゃいいのよ。どうせなにも出来やしないんだから。それにね、」

 そこで私は一旦言葉を切って、お茶をもう一口飲んでからこう続けた。

「サンタンデル伯爵はなにもしないと思うわよ?」

「えっ!? そうなんですか!?」

「えぇ、前に言ったでしょ? カスパート家はサンタンデル伯爵が一番嫌うタイプなんだって」

「はい、そうおっしゃっておられましたね」

「お金を借りた負い目があるからカスパート家にウチを紹介したけど、それ以上はカスパート家からなにか言われたってきっと面倒を見ないと思うわよ? ウチと同じで義理は果たした訳だしね」

「あぁ、なるほど...」

「そういう訳だから、あなたもあんまり気に病まないようにしてなさいな」

「分かりました」

 その後、私は溜まった仕事を片付けるのに集中して、カスパート家のことはすっかり頭から抜けていた。

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