聖女である私を追放する? 別に構いませんが退職金はしっかり払って貰いますからね?

真理亜

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 アンジュが去ってから一ヶ月後。

 退職金の送付先が連絡されて来た。その住所を見てフリードリヒは首を傾げた。

「バッドランドだと!? 本当なのか!? 間違いじゃないのか!?」

 バッドランドとはその名の通り不毛な大地が広がっている場所である。隣国との国境付近にあるこの地はどちらの国家にも属していない。

 乾燥した土地で草木がほとんど生えていない。大小様々な岩や石がゴロゴロしていて土を耕すことも難しい。そんな理由で使い道無しと判断され、両国から見放された土地である。なぜアンジュがそんな場所に?

 訝しく思いながらも、フリードリヒは送金する準備を進めた。

「陛下、閣議のお時間です」

「分かった」

 この一ヶ月でフリードリヒは正式に即位し、王太子から国王になった。先王に回復の見込み無しと判断したからだ。

「結界の具合はどんな感じだ?」

「芳しくありません。綻びが目立つようになって来ております」

「そうか...新しい聖女探しはまだ難航しているのか?」

「はい、候補は何人か見付かっているのですが、まだこれといった者は出て来ておりません」

 そう、アンジュに代わる聖女を国を挙げて探しているのだ。

「候補者達は結界の維持に協力させよ」

「分かりました」

「騎士団及び傭兵団の整備は順調か?」

「順調ですが予算がそろそろ底を突きそうです」

「国庫で足りなきゃ王家の財産で賄う」

「よろしいのですか?」

「仕方あるまい...新しい聖女が見付かるまでは魔物の侵入は騎士団と傭兵団に防いで貰うしかないのだから...」

 王家が代々貯えて来た財産を自分の代で使い倒すのは忸怩たる思いだが、背に腹は代えられない。

 つくづくアンジュへの退職金の支払いを分割にしておいて良かったとフリードリヒは思っていた。実際はなんの解決にもなっていないのだが...このままだと何れは王家の財産も底を突いてしまうだろう。

「とにかく、全ては新しい聖女を探せるかどうかに掛かっている。各自一層精励せよ」

 フリードリヒは閣議に集まった閣僚達を見渡してそう言ったが、全員の反応は芳しくなかった。

「陛下、恐れながら...聖女アンジュに戻って来て貰うというのは...」

 閣僚の一人がそう進言した。

「それは...ダメだ...」

 フリードリヒは苦しそうにそう言った。たったの一ヶ月で泣き付いたりしたら、アンジュになんて言われることやら...

 それは最後の手段だ。まずは出来ることを一つずつやって行こう。フリードリヒはそう思っていた。
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