嫁いだら旦那に「お前とは白い結婚だ」と言われました

真理亜

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「クソッ! なんで僕だけがこんな目に遭わなきゃならないんだ!」

 その頃、デュランは下町の安宿で苛立っていた。父親から持ち出すことを許されたのは僅かな衣服とアクセサリー類のみ。

 現金はびた一文持ち出しを許されなかった。仕方なく服やアクセサリーを質に入れ、ようやく多少の現金を手に入れはしたが、泊まる場所は素泊まりのみの安宿が精一杯だった。

「腹減った...」

 素泊まりのみなので当然ながら食事などは出ない。トイレは共同で風呂は無い。金を払えばシャワーを浴びることは出来るが、食費すら削っているような状況なのでそんな所に金を使う余裕は全く無い。

 せめて服を着替えたい所だが、着替えの服まで質に入れてしまったので、仕方なく着の身着のまま状態になっている。

 元伯爵子息として贅沢の限りを尽くして来た身としては、この落ちぶれようは到底看過できるものではなかった。

 なんとか状況を打破すべく、父親の住む伯爵家本家に何度も足を運び、父親に翻意を促そうとしたが、全て玄関払いを食らった。会ってさえくれなかった。

 いい加減諦めて職探しでもした方が余程建設的だとは思うのだが、生まれて此の方働いたことなどないデュランにとっては無理な相談だった。働き口の探し方すら分からないのだ。

 もっとも、例え働き口を見付けられたとしても、能無しのクセにやたらプライドだけは高い元貴族のお坊っちゃんに務まるような仕事はまず無いだろう。

 だから今日も、例え無駄骨に終わることになるとしても、一縷の望みに賭けて空きっ腹を抱えながら伯爵家本家へと赴くしかないのだった。

「それもこれも全てはあの女のせいだ! 僕を利用するだけ利用して、用済みになったらポイッと捨てるなんて許せない! 今度会ったら只じゃおかないからな! 覚悟しておけ!」

 そうやって歩きながらアイラに毒吐くデュランであった。アイラと初めて会ったのは友人に紹介されて行った娼館である。その店のNo.1だと言われて相手に指名したのがキッカケだった。

 貴族のボンボンなので遊び慣れているかと思えば、実はそうでもなかったデュランは一発でアイラに夢中になってしまった。それからは毎日のように娼館へ通い詰めるようになった。他の男の指名を受けないようにするためだ。

 デュランの子を身籠ったと聞いた時には有頂天になったものだ。すぐに身受けして店を辞めさせ、アパートを借りてそこに住まわせた。

 その頃にはサリアとの結婚が決まり、父親が新居を建ててくれる段取りになっていたからだ。完成した新居にはサリアより先にアイラを呼び寄せたのだった。

 全ては順調だと思っていた。それなのになんでこんな目に...愚かなデュランは何が悪かったのか本気で分かっていなかった。
 
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