殿下、人違いです。殿下の婚約者はその人ではありません

真理亜

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「ん? あれは...」

 なにかに気付いたリリアナが遠くに目を凝らす。

「リリアナ、どうした?」

 それに気付いたクラウドが声を掛ける。

「どうやら来たみたいですよ」

「本当か!?」

 クラウドもリリアナと同じ方向に目を凝らす。

「確かに...なにかが空を飛んで来てるな」

「えぇ、恐らくあれがサモンなんでしょう。おじ様!」

「どうした?」

 呼ばれたガストンが駆け寄って来る。

「サモンが来たみたいですので、私と殿下は直ちに迎撃に向かいます。おじ様達は封印の用意をお願いします」

「分かった。任せとけ」

「リリアナ、どうやら敵はサモンだけじゃないようだ」

 そこへずっと遠方に目を凝らしていたクラウドが割って入った。

「と言いますと?」

「魔族軍を率いて来ている」

「あぁ、なるほど」

「リリアナ、魔族軍は俺とガストン達で防ぐ。お前はサモンに集中しろ」

 クラウドが冷静に指示を下す。

「了解。ファルファル!」

「クエッ!」

 リリアナは一人、ファルファルの背に跨がって空に舞い上がった。


◇◇◇


 一方その頃、ミランダは魔族領を蹂躙していた。

『氷よ、砕け散れ!』

『光よ、爆ぜろ!』

『炎よ、燃やし尽くせ!』

 ありとあらゆる攻撃魔法を駆使して魔族軍を壊滅に追い込んでいた。

「フゥ...こんなとこかな」

 後に残ったのは惨憺たる状態になった魔族領のみだった。

「これだけ暴れても魔王が戻って来る様子が無いところを見ると、やっぱり南の砦でなにかあったんだろうな」

 そうミランダは独り言ちた後、北の砦へと帰還した。


◇◇◇


「ぬおっ!? な、なんだこの状況は!?」 

 一人先行して空を飛んで来たサモンは、派手に抉れた地面とそこに描かれた封印の魔法陣を見て絶句した。

「こんにちわ。初めましてかしらね。あなたがサモンね? おおっ!? こりゃ確かに魔王そっくりだわ! さすが双子の兄弟ね!」

「な、なにぃ!? だ、誰だ貴様は!?」

「私はリリアナ。南の砦を守護する者よ」

「なるほど、貴様が! 名前は聞いているぞ!」

「そりゃどうも。私も有名になったものね」

「どういたしまして...じゃない! 一体これはどういうことだ!? 兄貴は!? 魔王アモンはどこに行った!?」

「魔王ならあそこよ」

 リリアナは封印の魔法陣を指差した。

「な、なんだとぉ!? 良くもやってくれたな、人間ども! 絶対に許さん! 兄貴の敵を討たせて貰うぞ!」

 さっきまで殺し合っていても、やはりそこは兄弟ということだろうか。サモンはアモンがやられたことに本気で激昂しているようだ。

「やれるもんならやってみろ!」

 リリアナは戦闘態勢を取った。
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