殿下、人違いです。殿下の婚約者はその人ではありません

真理亜

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 そしていよいよ、クラウドの立太子の式典当日の朝を迎えた。

 王族の正装である真っ白な軍服を身に纏ったクラウドの姿は、まさに次期国王に相応しい堂々たる威厳に満ちたものだった。  

「おぉっ! なんとも神々しい!」

「これぞ王者の風格! 素晴らしいですな!」

 その姿を目の当たりにした者達からは、称賛する声が続々と上がっていった。そして傍らに控える、リリアナに扮したミランダの姿にも称賛の声が上がっていた。

「いやぁ! なんてお似合いのお二人なんだ!」

「美しい! まさに美男美女のカップルですな!」

 そんな声を聞く度に、王族の席に座るマリウスは気が気じゃなかった。チラチラと不安げな表情でミランダを見やるが、当のミランダは涼しい顔でそつなくリリアナの代役を務めていた。

 その後、儀式は恙無く進んだ。心配されたクラウドの様子は今のところ問題無さそうだった。こちらもミランダ同様、そつなく熟しているように見えた。

 やがて立太子に関わる全ての儀式が問題なく終了し、後は王宮の広場前に集まった民衆に対するお披露目を残すのみとなった。

 まず最初に、国王であるリヒャルトを先頭に王族や大貴族のお歴々、周辺各国の要人が民衆の前に姿を現し手を振った。もちろん、その中にはマリウスの姿もある。

 集まった民衆からは大きな歓声が上がった。そしていよいよクラウドが姿を現す...予定だった。

『キイィィィンッ!』

 その刹那、なんとも耳障りな音がどこからともなく辺りに響き渡った。

「グワオゥゥゥッ!」

 次の瞬間、奇声を発したクラウドが儀式用に装飾された剣を抜いて、国王であり父親でもあるリヒャルトに斬り掛かろうとした。

「兄上! なにをしてるんだ!」

 咄嗟のことでミランダさえも反応が遅れた中にあって、ただ一人マリウスだけが迅速に反応し、こちらも儀式用の剣を抜いてクラウドに相対した。

「クラウド殿下!」

 やや遅れてミランダも駆け付けた。走ったせいでカツラが脱げ、豪奢な金髪が露となってしまったが、そんなことに構っちゃいられなかった。

 いくら最近鍛え上げでいるとはいえ、一騎当千の強者であるクラウドを抑え込むのは、今のマリウスではキツいだろうから加勢する必要があると思ったのだ。だが、

「ミランダ! ここはいい! お前はカーミラを止めろ!」

 マリウスはそう叫んでミランダを制した。

「で、でも!」

「大丈夫だ! こっちは任せろ!」

「ミランダ嬢! 私達もおりますのでご安心を!」

 先に駆け付けた近衛騎士団長にまでそう言われたら仕方ない。

「分かりました! ご武運を!」

 そう言ってミランダはその場を後にした。
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