【完結】念願の聖女に選ばれましたが、イジワルな悪魔に甘く奪われました~悪魔に甘く奪われて~

柊木ほしな

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第3章

24話

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 リーナがまず向かったのは、神父の部屋だった。
 教会や修道院にあるこの国の歴史についての本ならば、今まで散々読んできた。
 今更読み直したところで新情報が手に入るとは思えない。何にもならないだろう。

 それならば、と。
 リーナは神父の部屋から、こっそりと地下室の鍵を持ち出した。

(神父様、ごめんなさい)

 だけれど、それでも知りたいのだ。 

 聖女が何を意味するのかを。

 自分に何が出来るのかを。
 

 ◇◇◇◇◇◇


 教会の片隅に置かれているパイプオルガンは、実は隠し扉になっている。神父に拾われたばかりの小さい頃に、リーナは神父からこっそり教えて貰っていた。

 昔に起きた戦争の名残だ。
 当時はここに隠れていたらしい。
 今はもう戦争は終わっているため、もうただの空き部屋になっている。
 神父からは、古くて危ないから決して入らないように、とリーナは言われていた。

(急がなきゃ)

 リーナはパイプオルガンを横に動かすと、出来た隙間に身を滑らせた。
 その先は、地下に繋がる階段が続く。

 きしむ古びた木の階段を降りると、小さな扉がそこにあった。
 拝借してきた鍵を鍵穴に差し込む。

(入っちゃ駄目だと、神父様に言われてきたけど……)

 それでも、手がかりがありそうな場所はここしか考えられなかった。
 扉を開いた途端、古びた甘い紙の匂いがリーナの鼻を擽った。
 
「これは……」

 本棚と、小さな机と椅子。
 それからベッド。
 そこには、部屋として必要なものが揃っていた。

(あら?)

 部屋を見回していると、机の上に一冊のノートが置かれていることに気づいた。
 書きかけで出て行ったのだろうか。
 ノートは開かれたまま、ペンは無造作に置かれて転がっている。
 ちらとのぞくと、筆跡は神父のものだった。

(なにが書かれてあるんだろう……?)

 好奇心には勝てない。
 リーナは書かれた文字を目で追った。

 “今回の聖女の魂は、貴族に生まれなかったらしい。なんの気まぐれか、兵士の家に生まれるなど前例がない。上層部が声を聞き間違えたに違いない”

(これは、どういうこと……?)

 今までの聖女は皆、貴族出身である。
 対してリーナは、一兵士の家の出。
 この文面から、書かれている聖女がリーナのことを言っているのであろうことは察せられるが……。

(声?)

 上層部のごく一部の聖職者は、万物の声を聞くことが出来るという。
 聖女に関する神託を得ることが出来るのは枢機卿だけだ。
 まさかその事だろうか?
 
(だとしたら……聖女がどこに生まれるかは予め決まっているの?)

 疑問を感じながら、リーナはページをめくった。

 “私が拾い育てたリーナが聖女など……。そんなこと、信じたくはない。あの伝承が、嘘であることを願う”

(伝承……って、なに……?)

 書かれている内容に、不安ばかりが募っていく。
 リーナはノートをぎゅっと握りしめた。
 

 
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