奪ってみてよ、先輩。

七夕 真昼

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4.仲良くなりました(?)

4-2

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図書館でテスト勉強をしている私は、今日も今日とてあずき先輩に絡まれている。いや、これはもう邪魔されているに近い。

「紅先輩」
「……」

どういうつもりなのか、この人は名前で呼ばないと絶対に返事をしてくれない。名前で呼ぶとそれなりの距離に関係があるみたいで、私は嫌なんだけどな。

「あずき先輩」
「何」

ほら。ちょっと面倒臭い。

「あの、気が散るというか。勉強の邪魔なんですけど。」

さっきから私の髪をくるくる指に巻いて遊んだり、隙あらば太ももを触ろうとしたりしてきて鬱陶しい。セクハラですよ。

「テスト勉強してるの見て分かります?」
「分かんない」

こいつ……。
隣を睨めば、顔をこっちに向けて机に伏せている美形。顔だけはモデルさんみたいにいいのになぁ。
どこまでも中身が残念過ぎる。

この前だって。
そう、この前。初雪さんとの会合の帰り道。街中で女の人と歩く先輩とすれ違ったこと。
その話についてどちらからも触れることはなく。わざわざ聞くようなことでもないけど。
元々そういう噂のある人だし、それを言及するような仲だとも思ってない。

所詮身体だけの関係。欲求を満たせれば良い先輩の、玩具の一つでしかない私。

だから学校で一緒にいることもないと思うのに。

「……千夜子さぁ」
「亜主樹こんなとこにいたー」

声の主を見れば、サラッサラの金髪を後ろに束ねた甘い顔の美形。耳のピアスが目立つ目立つ。いくつつけてるんだろう。

「なんだよ」
「お前、最近すぐどっか行くからさー。って、この子この前のお店のバイトの子? ほんとにうちの高校だったんだ……」

栗生先輩が私を見て目を丸くする。

「こんにちは」
「こんにちはー。おれ栗生拓。まさか学校で会うなんてねー。」

私に愛想の良い笑顔を見せながら、その視線が横にいるあずき先輩に流れる。

「どうりで最近お前の機嫌が良いわけだ。まさか、手出したりしてないよな?」
「出してるけど。」

言い終わる前に私は隣の人の足を思い切り蹴った。

「いッ……⁉ ナニすんだてめェ」
「なにすんだはこっちが言いたいですよ⁉ 貴方の貞操なんてどうでもいいですけどね、私の貞操をこれ以上脅かすのはやめてもらえます⁉」

切れ長の瞳にじろりと睨まれたけど、私は図書室であるという事を最大限に配慮しつつふざけるなとあずき先輩に訴える。

「事実じゃん。」

それでも先輩はしれっと言う。
そんな様子を見てため息をついたのは栗生先輩だ。
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