絶対記憶~彼は今日も知識欲を満たす

高戸

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 彼は川を眺めていた。

 高校生の彼が学校がある日には毎日取った行動。

 彼が川を毎日見るのは川が好きな訳でも学校の帰り道に河川敷があるからでもない。

 彼の一日は朝起きて学校に行き放課後河川敷に「ツラかせや」なんて言葉と共に連れていかれる。

 彼が毎日、川を眺めるのは彼以外の者達が全員帰った後に動く気力が無いからだ。

 そんないつも通りの一日だった。

 だがいつもとは違う光景が迫ってきた。突然悲鳴が聞こえたのだ、真後ろの道路に今にも引かれそうな子供がいた。

 彼は必死に走った。

 青染みが残るその体で。彼は自分は死ぬかもしれないなんて考えてもいなかった。

 結果的に子供は助かったが、彼の身体はボロボロになり血が彼の周りを囲むように流れた。

 『彼は死んだ。』

 彼は死んだが意識は白い場所に存在していた、そこで彼は自分を『女神』と名乗る声に耳を傾け。

 転生の機会を貰った。

 理由としては『哀れみ』と『好意』だった女神は彼を哀れみ好み、そして人生をやり直す機会を与えた。

 女神が地球の記憶を引き継いだ場合の転生を1億年に一度しか出来ないなど彼は知るよしもないだろう。

 転生は女神ですらも容易に出来る事では無かった。

 彼の行く世界は魔法、スキル、魔物、そんなものが存在する世界。

 彼としては『テンプレ』、そう考えた世界。

 彼は転生して少しでも賢く強く、そして何よりも、楽しく暮らそうと誓った。

 彼の生前は人間としては最悪の人生だっただろう。

 最悪の考え方は人それぞれだ、生まれて1日で死んでしまった者、両親に暴力を振るわれた者、大量の借金がある者。

 だが女神が一億年に一度の権利を渡したのは彼だった。

 女神には分かっていたのだ彼が本気を出せば不良など簡単に撃退出来た事や、勉強に関しても彼はいつも平均以下だったが彼が本気を出せばテストの満点も楽に出せる事に。

 ではなぜ彼はそうしなかったのか。

 女神はその理由も理解していた。

 単に彼は意欲が無かったのだ。

 彼が不良に反撃してもいいことは余りないだろう。

 もっと人数が増えて彼でも敵わない数になるかもしれない。

 彼は頭が良かった?違う、彼の頭は一般的だ。

 だが彼の周りの人間は一般的ではなかった、以下という意味で。

 人間を作った神は此処に居る女神ではなかったが、一般的な人間とは彼のような者だ。

 そしてそんな平均的な人間は1000年単位でしか生まれてこない。

 理由はこの世界がすでに一般的な人間を作れる環境では無かったことだ。

 テストにしてもそうだ。

 彼は真剣に授業を聞けば理解して覚えることが出来ただろう。

 だけど彼はそれをしなかった。

 勉強をしても意味がないと知っていたからだ。
 勉強をしてテストで高い点数を取った者は点数を自慢していた。
 彼は自慢なんてしたくなかったし就職に必要とも思っていなかった。

 彼は彼を囲む環境に変化なんて期待はしていなかった。

 無駄だと解っていたのだ。

 ライトノベルやネット小説と同じ事が自分に起こると思っている者など殆どいないだろう。いきなり自分がリア充になる未来など想像もできない。

 これも彼の考えは一般的だと証明する証拠だろう。

 そしてそんな無理無駄と決めつけていた彼を女神は好んだ。

 そんなただノーマルな彼の考えを、そして能力を。

 彼の考え方はは転生後の世界では圧倒的な力になるだろう、そんな彼が転生後の世界でどんな生活を送るのか興味があった。

 彼のように考えている人間の大半は日本では目立つ事無く人生を終わらせる。

 だが彼は異界の未来で成功する、女神はそのことを知っていた。

 一般的な人間が少ない訳とは、一般的な人間ではこの世界を生きて行けないから。

 だが彼は異界でならば成功する。

 ただ彼の未来を夢に見ただけなのだが、女神の見る夢は女神の行動原理に成り得ることだ。

 女神は、考え方の異質な彼を好いたのだ。

 彼が異世界で普通の家庭を持って幸せに暮らす。
 これだけでも女神にとっては十分な光景だ。

 彼の方も転生に戸惑いながらもワクワクしていた。

 彼は転生など出来ないと思っていたが実際に出来るのだ。

 彼のテンションが上がるのは当然だろう。

「俺はTUEEEEEE系の転生になれるかな」なんて事でいっぱいだ。

 結果、彼は転生した。女神のささやかな贈り物を持って。
 
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