ステ振りの王様

プロローグ 死んで生き返るまで

　『紫崎しさき　祢途ねいと君、あなたは死にました。ですが運が良かったですね、今年一万人目の死亡者と言う事で転生させてあげましょう』


　唐突な言葉。
　俺の意識ははっきりとこの言葉を認識した。

　は、転生？１万人目？何言って、死んだ時点で運とか最悪だろ。

「なんで、」

　この疑問は当然だ。「あなたは死にました」などといきなり言われて信じられる人間がいる訳がない。

『まあ事故ですね、不良にリンチされて出血してる状態で足を引きずりながら、道路を横切ろうとしたらトラックにばーんって感じで』

　うぜえ……

　コイツが誰かは解らんがコイツの言葉は耳では無く意識に直接流れ込んでくる。神様とかなんだろうな。


　それに耳なんて無い、何なら手も無い、足も顔も腹も無い。俺は今この場所に意識しか存在していない。


『信じた？じゃああなたの職業を決めるから、この中から選んで、ネイト君」

　は、？展開早すぎだろ！？
　俺の意思を完全に無視して目の前に画面が現れた。 画面には大量の職業とその隣にアルファベットさらに横に★が付いている。

　俺のゲーム知識に照らし合わせると★はレア度だと予想できるが、アルファベットはなんだ？

【ニートＳ・無し】
【農家Ｆ・★】
【冒険者Ｆ・★★】
【狩人Ｆ・★★】
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　と進んでいく。ニートって何、イジメなの？
　アルファベットの意味が解らずガン見していると意識の中にアルファベットの意味が流れる。

職業ランク
Ｆ、カス
Ｅ、初心者
Ｄ、まあまあ
Ｃ、中級者
Ｂ、人間では上位
Ａ、持ってるだけで超一流
Ｓ、ヤバい

　雑すぎる、なんだよヤバいって、カスってのも書き方もっとあるだろ。

　★も同様に意識すると理解できた、やはり★はレア度のようだ、これは多い方が良いのだろう。内容的には★の数はその職業の能力の数と同じだそうだ。
　この職業一覧はレア度順なので、一番下を見てみよう。

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【パラディンＦ・★★★★★★】
【族長Ｆ・★★★★★★】
【領主Ｆ・★★★★★★】
【王Ｆ・★★★★★★★★★★】

「この職業の詳細って…」
『知らないわ』

　最後まで言い終わる前に神様（仮）から返事が返って来た。
　神様は職業神様とかだろうし、まあ下々の者の事なんて知らないか。

　その後、俺は画面を見直し１つだけ熟練度がＦでは無い者を見つけた。ニートは論外だ。

【鑑定師Ｓ・★★★★】、なぜこれだけがＳなのかと言うのは俺の生前の趣味に影響されているのだと思う。俺の趣味は人間観察。
　別にボッチだからと言う理由ではない、心理学に興味が有ったのだ。

　いや、確かに学校では１人でいる事が多かった。だがそれは俺が望んだことだ、断じてハブられた訳では無い。
　まあ、極端にハブられていたのは文化祭とかかな、俺だけ仕事無かったし。いや皆そこは人数多い方が良いでしょうよ気が付こうよ。

　いやいや今は職業だ、それに転生で行くのは日本ではないようだし。
　証拠としてあげられるのは職業だ、王なんて日本には居ない、それに【魔導士Ｆ・★★★★】なんてのが有るのだ日本のはずがない。というか地球じゃない。

　これは異世界転生だと見るべきだ。

『そろそろ決まった？』

　神様が急かしてくる、ここで遅いから職業無しとか言われた頃には人生が詰む、早く考えなければ。

「もう少し待ってほしいです」

『わかった』

　思ったより素直だな。まあいいか。

　ん？
　この画面はスクロールができて、下に行くほどレア度の高い者が表示されている。

　俺は最初から見直そうと画面を一番上に向けてスクロールしていた、だがニートの上を更に上にスクロールする事が出来た。
　そこには１つの職業が書かれていた。

固有職業【変換師】

　これはどう見ても当たりフラグだ。１つだけアルファベットも★も無い。

　これしか無い！！
　スクロールと同じ要領で念じればクリックが出来る、これで決定だ。

＜【変換師】でよろしいですか？＞
＜はい＞　＜いいえ＞

　はいを念じる。

　一覧の下に新たな画面が表示され、３つの空の枠が表示された。
　その１つに変換師の文字が現れた。

『やっと１つ選び終わったのね、じゃああと２つ早く選んで』

　え、職業って３つも選べるの！？

「職業って３つも…」
『ええ、３つ選べるわ、普通は１つしか持てないけどあなたは特別、まあ簡単にいうとチートね』

　また俺の言葉を遮るように俺の疑問に答えてくれた。
　いやまあ答えてくれてるし神様（仮）に文句なんて付けないけどね。

　あと２つかどうしよう。



　結局俺が選んだのは【変換師】【王Ｆ・★★★★★★★★★★】【鑑定師Ｓ・★★★★】の３つだ。

　これで本当に俺のチートライフが始まるのだろうか。

『全部選び終わったみたいね、あなたが選んだ職業の詳細は見たいと思えば【鑑定師Ｓ・★★★★】の能力で見る事が出来る。後、体は前の君の身体を再利用できるから安心していいよ、それじゃあ。ま、行ってらっしゃいネイト君』

　声が薄れていく、もうすぐ転生するみたいだ。





　気が付くと草原に大の字で倒れていた。