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22話 龍の事情とサイエンティスト
しおりを挟むドラゴンにシリアの銃は通用しなかった。この4人の中で一番攻撃力が有るのはシ確実にリアだろう。俺がどれだけSTRに振ったとしても、ライフルの貫通力とは大きな差がある。その攻撃が効果をなさないということは、今の俺達ではこのドラゴンにダメージを与える事は出来ないって事だ。
逃げる。
その指示を出そうとした瞬間、ドラゴンが口を開いた。
「主……」
ドラゴンは俺の理解できる言語で言葉を発した。
つまり、意思疎通が可能。だが主と言った理由が分からない。
「お前、喋れたのか」
「我が名は千年龍・クリスタルドラゴン」
3人は龍の気迫で声が、返事が出来なかった。そう3人は。
「長い……」
エリスさん!? 頼むからドラゴンを刺激するような事言わないで。でも冷静になった。
「じゃあクリスタルドラゴンでいいか?」
それでも充分長いが。
「う……うむ。我は争うつもりはない」
え、ダンジョンの魔物にサーチ&デストロイしたらダメなのかよ。
ドラゴンが特殊なんだよな? このパーティメンバー、サーチ&デストロイが向きすぎてて魔物に配慮とか無理だぞ。いや、今そこはあまり関係ないか。
「我が迷宮ダンジョンに入ったのは900年ほど前なのだが、最近まで気が付かなかったのだ、巨体に成長したせいで外に出られなくなっていた事に」
馬鹿だコイツ。
「馬鹿だコイツ」
エリスさん!? 口に出さないで!
「うむ」
うむって自分でもバカだって認めてるのかよ。
「じゃが数日前にある魔力を感知した、それは我の主と同じ魔力の質を持っていた」
数日前? この世界の人間の魔力の質ってのがいつ決まるかは知らないが、指紋のように子供の頃から決まってる物じゃないのか? そうだとすると今そいつは赤ちゃんか、大きくても1歳とかじゃないのか?
「そして我は固有スキルを使って、その物が遠くない未来に訪れる場所に転移した。その結果我の悲願は叶った。……我が主よ」
ドラゴンが膝を折り正座のような体制で頭を垂れた。
まさか……
「その主って此処に居る誰か、なのか?」
「ネイトに決まってる」
「そうですね」
「そうだよね」
いや、俺はドラゴンに聞いたんだけどな。
「名前も昔の我の主と同じなのか……そうじゃ、ネイト。お主が我の主だ」
「そうか」
正直戦力としてはありがたい。ドラゴン、それもシリアの銃弾を眉間に受けて無傷だった奴だ。
「我と契約を結んではくれまいか?」
「何でそんなことする必要があるんだ?」
「我の時空魔法は1年に1回しか使用できない、要するに巨体の我は1年間この迷宮ダンジョンを出られない」
馬鹿だろコイツ。
「つまり契約すれば外に出られるのか?」
「契約を行えば我は主の獣魔となり従魔召喚のスキルで30分間だけ呼び出される事が出来る」
30分か。
「勿論その時間が終了すれば元の場所、つまり此処に戻される訳だが」
「解った契約をしよう」
ドラゴンが戦力になってくれると言っているんだから断る理由も無い。
「では右手を出してくれ」
右手を開きドラゴンの方に向ける。
ドラゴンも腕を前に突き出し、俺の人差し指を爪で切り付け、にじみ出た血を一滴自分の手の甲に垂らした。
その瞬間、俺の手の甲に見た事も無いタトゥーのような紋章がみるみるうちに刻まれていた。
「実は最初の主の右腕はすでに埋まっておってな、初右腕じゃ」
「そ、そうか」
龍って脳筋なんだろうか?
「じゃあ俺達は一度ダンジョンの外に出るからな」
「解った、呼んでいただく時をを楽しみにしているぞ」
迷宮ダンジョンの帰り道は一本道なので迷う事無く外に出る事が出来た。
外に出るとまだ陽は上っていた、3時位だろうか。
「ネイト様、大変ですじゃ! 村に変な人族が現れました!」
変なってなんだよ。
「解った案内してくれ」
「畏まりました」
龍と契約したり、訪問者が来たりと今日は忙しいな。
訪問者、その人間の隣には杖としてl使ったであろう棒が倒れており、同じようにその人間も棒の横に前のめりに倒れていた。気絶はしていないようで意識はある。
村に入れる前に事情を聴いて真偽を見定めなければならないだろう。
「おい、動けるか?」
「う、ご、ける!」
その男は仰向けになり、うめき声ともとれる声を上げた。心身ともに限界が近いのだろう。
「君は、人か?」
「そうだが」
「驚いたな、妖精と人族が共存しているとは。だが、そんな事より今は、食料を分けてくれまいか!! ガク」
コイツ自分で「ガク」って言って気絶しやがった。
「しょうがない、一度家に運ぶぞ。それから話を聞こう」
「「「「はい(ですじゃ)」」」」
約30分後
「ここは?」
「俺の家だ、それより腹が減ってるんだろ? 食え」
ハクレイチョウの卵や肉はまだ大量に余っているのでアリアに調理してもらった物を食べて貰う事にした。
「これは親切にどうも、感謝するよ」
「それはいいよ、食い終わったら事情を聴かせてくれ」
「勿論だ、それでいただきます」
更に30分ほど経った。
「ごちそうさま」
その男は律儀に手を合わせ感謝するように一礼した。
日本人だろ。
「私の名前は白樹、考古学者だ」
シロキ? いや白樹か恐らくだが日本人だな。
黒髪黒目、メガネのちょび髭おやじ、髪の毛はボサボサで考古学者という職業に限らず研究者という印象を受ける。服装も考古学教授がテレビで来ているような恰好で完全に日本人だと思う。
これは自分も日本人だと明かすべきなのだろうか。だがこの男少し不用心に見える。人前でいただきますやら考古学者やらと、自分からバラしにかかっているようだ。
「俺はネイト、この村で長のような事をしている。よろしく白樹さん」
「村長は君だったのか、食料をありがとう。助かったよ それとさんずけは不要だ」
「解った、よろしく白樹」
「よろしく頼む、ネイト殿。実は私は固有職業等という物らしく元々いた村から追い出されてしまったのだ」
「誇らしげに言う事では無いな」
「確かにそうだな。それでだ、本題なのだが私もここに住まわせてくれないか?」
「理由は?」
「ほかに行く宛てが無い」
「そうか」
日本人なら人種差別にも疎いだろうし、さっき【鑑定】したところこの男の固有職業は【考古学者】だった。色々と使えるかもしれないな。日本に居た頃から研究者をやっていたのなら俺の国の役に立つ知識を持っている可能性もある。
「住人になる前に幾つか質問させてくれ」
「承知した」
「まず、出身はどこだ?」
「シノ村だ」
流石に日本とは言わないか。
「固有職業と言っていたが内容は?」
「【考古学者】だ」
「どんな能力がある?」
「【解読】という能力で読めない文字が無くなる」
確かに本当の事を言っている。
「貴方をこの村に住まわせることでどんな利益が有る?」
「知識を提供しよう、科学的な事になるがね」
やはり俺よりも多くの日本知識を持っている。それだけでメリットとしては申し分ない。
「解った、許可する」
「ありがとう……転生者殿」
「な!?」
エリスを含めた他の人間はこの部屋に入らないように頼んでおいたのが功を奏した。黒髪黒目の辺りから転生者という可能性は有ったからな、ばれたのは予想外だったが、俺だって黒髪黒目なのだからおかしくは無い。いい意味でもあるだろう。相手が日本人だと確証が持てた。それよりどこで俺が異世界人だと確証を持ったのかが気になるところだ。
「君は私の科学という言葉に疑問を持たなかった。この世界で科学という概念を認識しているのは、天才的な錬金術師か私らのような転生者転移者のみだ。それに君は黒髪黒目でこの世界の人と比べると憧顔だからね、それでかまをかけてみた」
不用心だとか思ってた相手に一杯食わされるとは。俺の方がよっぽど不用心だな。
「それで? 住民にはなるのか?」
「ああ、この村を一世紀は発展させて見せよう」
「それは頼もしい限りで」
俺と白樹は握手を交わし、長く感じた1日は終わりを迎えた。
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