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彼らの再会
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「リノ!リーゼ連れてきたよ~」
「遅いわよ!いつまで待たせて…」
扉を開けると、逆光の中に小さな影が一人。
「リーゼ‼︎生きてて…よかった」
不意に衝撃が身体を襲う。勢いあまって後ろに倒れる。
そこには、瞳を目一杯潤ませた天使がいた。
************
ーーこれはね、リーゼとお兄さまだけが知らない。秘密の同盟なの。厳密にいえば、リーゼが知らないというには語弊がある。これは私が、リーゼが記憶を手放す前に頼まれたこと。そこにリーゼとお兄さまの恋路を応援していた王宮のみんなが入ってきた…という状態。
私が頼まれたのは、お兄さまのリーゼとの記憶を封じ込めた雫石の経過を観察すること。
それを頼まれた夜、私は実行に移した。
お兄さまが眠っている間に、リーゼから貰って毎日着けているピアスを外し、例のーーリーゼから預かったピアスをつけた。
その日からお兄さまは明らかに変わった。毎日毎日「リーゼリーゼ」と言っていたのに言わなくなった。あの石の効果なのだろう。お兄さまはすっかり10代後半の独身男性へと変身してしまったのだ。
それからは大変だった。
何と言っても若い兄。ついでに美丈夫だから、すぐに恋人を作ろうとする。こっちは堪ったもんじゃない。
だから言ったの。リーゼのこと。
でも、石が真面目に仕事をしているのか、兄は一日経てばリーゼのことを忘れてしまった。
自慢じゃないけど、毎日毎日リーゼの肖像画をもってお兄さまの部屋を訪れたわ。でも、毎日同じ反応をするの。
「リノ、その可愛い人は誰だい?教えておくれ」って。
ずっとこの繰り返し。もう、ほとほとウンザリしてた頃、事件は起こった。
その日も、お兄さまの部屋へ押し掛けに行こうとしてた。その途中、丁度廊下でお兄さまと遭遇したの。…でも、気づくのが遅くて、勢よくぶつかって二人とも吹っ飛んで…。
私が気づいたとき、お兄さまと肖像画のリーゼがキスしてて、慌てて引き剥がしたわ!
私の、穢れのない綺麗なリーゼが汚される!そんな焦燥感を感じて。
それで、兄さまを見た→なぜか顔をうっとりさせている→なんか気持ち悪い→よし。もう私の手には追えん、トンズラだっ‼︎
そして逃げた。きっと明日になれば忘れている。そう思ったから。
しかし、現実はそうは甘くなく(?)…。
「リノ、私は昨日素晴らしい女性とキスしてしまったんだ。これはもうその女性と結婚するしかないだろう?」
ないだろう?ってお兄さま。キスしたのは生身のリーゼじゃないですよ。結婚って…絵とですか?お兄さま。
本物リーゼは絵よりももっと綺麗で素敵なひとなのに。
あろうことか絵と本物を間違える兄に驚きもしたが、今は怒りの方が優っている。
私はきっと疲れていたのだと思う。
だからこんなことを言ってしまったのだ。
「お兄さまの気持ちはよくわかりました。お兄さまが考えられているように、確かに昨日の女性は私の友人です」
「!それなら」
「焦らないでください。彼女はとても内気な人なんです。それに、昨日のことで彼女は領地に帰ってしまいました」
「それなら!」
光の速さのごとくリーゼを迎えに行こうとする男ーーもとい兄の服を思いっきり引っ張る。
「性急すぎますわ。お兄さま」
「だが、こうしているうちに彼女が口説かれているかと思うと、…こう。身体が言うことを聞かないんだ」
お兄さまの言葉に、なんとか踏み止まるリノ。
「…わかりましたわ」
これが最終的にお兄さまを甘やかすことになるのは目に見えている。だから…これくらい意地悪してもいいわよね。
「ですが、お兄さまが彼女を泣かさない男になるという条件つきですけど」
「それでもいい。彼女に会えるのなら」
即答するお兄さま。
あらあら、久しぶりに記憶が無くなる前のお兄さまに会ったみたいだわ。
リノは少し嬉しくなった。
けれど、ランディやその他諸々の同盟を結んだ人たちになんて説明しよう…と少し悩んだ。
「遅いわよ!いつまで待たせて…」
扉を開けると、逆光の中に小さな影が一人。
「リーゼ‼︎生きてて…よかった」
不意に衝撃が身体を襲う。勢いあまって後ろに倒れる。
そこには、瞳を目一杯潤ませた天使がいた。
************
ーーこれはね、リーゼとお兄さまだけが知らない。秘密の同盟なの。厳密にいえば、リーゼが知らないというには語弊がある。これは私が、リーゼが記憶を手放す前に頼まれたこと。そこにリーゼとお兄さまの恋路を応援していた王宮のみんなが入ってきた…という状態。
私が頼まれたのは、お兄さまのリーゼとの記憶を封じ込めた雫石の経過を観察すること。
それを頼まれた夜、私は実行に移した。
お兄さまが眠っている間に、リーゼから貰って毎日着けているピアスを外し、例のーーリーゼから預かったピアスをつけた。
その日からお兄さまは明らかに変わった。毎日毎日「リーゼリーゼ」と言っていたのに言わなくなった。あの石の効果なのだろう。お兄さまはすっかり10代後半の独身男性へと変身してしまったのだ。
それからは大変だった。
何と言っても若い兄。ついでに美丈夫だから、すぐに恋人を作ろうとする。こっちは堪ったもんじゃない。
だから言ったの。リーゼのこと。
でも、石が真面目に仕事をしているのか、兄は一日経てばリーゼのことを忘れてしまった。
自慢じゃないけど、毎日毎日リーゼの肖像画をもってお兄さまの部屋を訪れたわ。でも、毎日同じ反応をするの。
「リノ、その可愛い人は誰だい?教えておくれ」って。
ずっとこの繰り返し。もう、ほとほとウンザリしてた頃、事件は起こった。
その日も、お兄さまの部屋へ押し掛けに行こうとしてた。その途中、丁度廊下でお兄さまと遭遇したの。…でも、気づくのが遅くて、勢よくぶつかって二人とも吹っ飛んで…。
私が気づいたとき、お兄さまと肖像画のリーゼがキスしてて、慌てて引き剥がしたわ!
私の、穢れのない綺麗なリーゼが汚される!そんな焦燥感を感じて。
それで、兄さまを見た→なぜか顔をうっとりさせている→なんか気持ち悪い→よし。もう私の手には追えん、トンズラだっ‼︎
そして逃げた。きっと明日になれば忘れている。そう思ったから。
しかし、現実はそうは甘くなく(?)…。
「リノ、私は昨日素晴らしい女性とキスしてしまったんだ。これはもうその女性と結婚するしかないだろう?」
ないだろう?ってお兄さま。キスしたのは生身のリーゼじゃないですよ。結婚って…絵とですか?お兄さま。
本物リーゼは絵よりももっと綺麗で素敵なひとなのに。
あろうことか絵と本物を間違える兄に驚きもしたが、今は怒りの方が優っている。
私はきっと疲れていたのだと思う。
だからこんなことを言ってしまったのだ。
「お兄さまの気持ちはよくわかりました。お兄さまが考えられているように、確かに昨日の女性は私の友人です」
「!それなら」
「焦らないでください。彼女はとても内気な人なんです。それに、昨日のことで彼女は領地に帰ってしまいました」
「それなら!」
光の速さのごとくリーゼを迎えに行こうとする男ーーもとい兄の服を思いっきり引っ張る。
「性急すぎますわ。お兄さま」
「だが、こうしているうちに彼女が口説かれているかと思うと、…こう。身体が言うことを聞かないんだ」
お兄さまの言葉に、なんとか踏み止まるリノ。
「…わかりましたわ」
これが最終的にお兄さまを甘やかすことになるのは目に見えている。だから…これくらい意地悪してもいいわよね。
「ですが、お兄さまが彼女を泣かさない男になるという条件つきですけど」
「それでもいい。彼女に会えるのなら」
即答するお兄さま。
あらあら、久しぶりに記憶が無くなる前のお兄さまに会ったみたいだわ。
リノは少し嬉しくなった。
けれど、ランディやその他諸々の同盟を結んだ人たちになんて説明しよう…と少し悩んだ。
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