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燃えて、なくなれ【7】
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森に、行きたい…。
気づいたら、離れを飛び出していた。
私の森!私の家!私の…。
焼け焦げた木が視界に入った途端、一瞬にしてはやる気持ちが悲しみに塗り替えられていく。
…痛かったね。苦しかったね。私だけ逃げて、ごめんね。
木は何も答えてくれなかったけど、ずっとそこに居た。私は木の根元に腰を預けて座り、目を瞑る。
焼けた匂いに混ざる、新しい命のにおい。
戻って来れて、よかった…。
涙があふれて…それは水晶になった。
その水晶は、木から何やら黒いものを取り込むと、水になって地面に吸い込まれて消えた。
その木はまた枝を伸ばし、葉をはやしはじめた。
「え…」
『ふぁ~あ。よく寝た。…んん?あなた、リィナ?』
「そうよ!またあなたに会えてうれしい!」
また一つ、また一つ、涙の滴がこぼれて、水晶となり、木を浄化していった。
*******
「すごい…。森がたった一日で、こんなに…」
森の見回りに来ていたカルロスは、突然の森の回復に…否、再生に驚いていた。
一体何が…。
理由を考えようとすると、ちらりと彼女の顔が浮かぶ。
森に住んでいた少女。親もなく、一人で森と共生していた。
もしかして、彼女が?
離れに帰ると、リィナはとても上機嫌で、やっぱり森の再生とリィナは関係があるのかもしれないと、カルロスは密かに思うのだった。
「カルロス」
リィナから珍しく名前を呼ばれた。
ただそれだけで嬉しくなって、「何?」と笑顔で答えると、
「私、森に帰りたい」
その一瞬、カルロスは固まった。
リィナの言葉が脳内を何度もぐるぐると周った。
森に帰りたい…と言うことは、彼女はここを出ていく訳で…。
私のことが嫌になったから出で行きたいと言うことなのだろうか?
私は、フラれたのだろうか。
いや待て、告白さえしてないのにフラれるなんて気が早い。
それに、きっと彼女は森が再生したから以前のように森で暮らしたいだけなんだ。
そうだ、きっとそう。私はまだフラれていない!
そう、脳内で何とか方向転換した結果、森に彼女の家を作ろうと決めた。
「わかった。だけど、女性1人で暮らすのは心配だ。私も森で一緒に暮らすよ」
「それはありがたいのだけど、いいの?あなた、昼間はとても忙しそうにしてるのに」
もしかして、彼女は私を心配して、森で暮らすと…?
そう考えると、さっきまでの絶望感とは打って変わって、嬉しさが込み上げてきた。
「私のことは大丈夫。森に2人で住む家を建てよう」
「ありがとう」
ああ、やっぱり私はこの人が好きなんだ。
輝くような彼女の笑顔を見て、ふと、自分の気持ちを実感してしまった。
気づいたら、離れを飛び出していた。
私の森!私の家!私の…。
焼け焦げた木が視界に入った途端、一瞬にしてはやる気持ちが悲しみに塗り替えられていく。
…痛かったね。苦しかったね。私だけ逃げて、ごめんね。
木は何も答えてくれなかったけど、ずっとそこに居た。私は木の根元に腰を預けて座り、目を瞑る。
焼けた匂いに混ざる、新しい命のにおい。
戻って来れて、よかった…。
涙があふれて…それは水晶になった。
その水晶は、木から何やら黒いものを取り込むと、水になって地面に吸い込まれて消えた。
その木はまた枝を伸ばし、葉をはやしはじめた。
「え…」
『ふぁ~あ。よく寝た。…んん?あなた、リィナ?』
「そうよ!またあなたに会えてうれしい!」
また一つ、また一つ、涙の滴がこぼれて、水晶となり、木を浄化していった。
*******
「すごい…。森がたった一日で、こんなに…」
森の見回りに来ていたカルロスは、突然の森の回復に…否、再生に驚いていた。
一体何が…。
理由を考えようとすると、ちらりと彼女の顔が浮かぶ。
森に住んでいた少女。親もなく、一人で森と共生していた。
もしかして、彼女が?
離れに帰ると、リィナはとても上機嫌で、やっぱり森の再生とリィナは関係があるのかもしれないと、カルロスは密かに思うのだった。
「カルロス」
リィナから珍しく名前を呼ばれた。
ただそれだけで嬉しくなって、「何?」と笑顔で答えると、
「私、森に帰りたい」
その一瞬、カルロスは固まった。
リィナの言葉が脳内を何度もぐるぐると周った。
森に帰りたい…と言うことは、彼女はここを出ていく訳で…。
私のことが嫌になったから出で行きたいと言うことなのだろうか?
私は、フラれたのだろうか。
いや待て、告白さえしてないのにフラれるなんて気が早い。
それに、きっと彼女は森が再生したから以前のように森で暮らしたいだけなんだ。
そうだ、きっとそう。私はまだフラれていない!
そう、脳内で何とか方向転換した結果、森に彼女の家を作ろうと決めた。
「わかった。だけど、女性1人で暮らすのは心配だ。私も森で一緒に暮らすよ」
「それはありがたいのだけど、いいの?あなた、昼間はとても忙しそうにしてるのに」
もしかして、彼女は私を心配して、森で暮らすと…?
そう考えると、さっきまでの絶望感とは打って変わって、嬉しさが込み上げてきた。
「私のことは大丈夫。森に2人で住む家を建てよう」
「ありがとう」
ああ、やっぱり私はこの人が好きなんだ。
輝くような彼女の笑顔を見て、ふと、自分の気持ちを実感してしまった。
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