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12無くしものは夢の中【2】
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「ねぇ、フィアナ。レオンハルト殿下のことは好き?」
それは私の6歳の誕生日当日。
お母さまはいきなり私に尋ねた。
「?すきだよ」
そもそもおとうさまとおじいさまとレオン様以外の殿方に会ったことないし、レオン様のことが特別嫌いなわけでもないからねー。
「そう。わかったわ」
あからさまにホッとするお母さま。
「でもね、やっぱり一番はおとうさまとおかあさまと、おばあさまとおじいさまと…みんなが大好き!」
「フィアナ…」
あり?お母さま、感極まっちゃったのかな。
泣きそうになってる。
「おかあさま。大丈夫だよ!フィアナ一人でもおかあさまたち養っていけるようにがんばるから!だから心配しないで!」
娘は強かに生きるから心配しないで!というメッセージは伝わったかな。
「フィアナ。大丈夫よ、あなたを一人になんかしないからね。この間ね、正式にレオンハルト殿下とフィアナの婚約も決まったのよ!」
えええええええええーーー!
「こ、こんやく?おかあさま」
「そうよ。将来二人は結婚するの。そのお約束なのよ」
「けっこんのおやくそく?フィアナひとりじゃない?」
「そう!…でも、おかあさま、やっぱりフィアナを残して逝くのは当分無理ね。心配のし過ぎで成仏出来ないかもしれないもの」
成仏できない=おばけ ってこと?
「おばけはやだっ」
「わかったわ。フィアナに嫌われるのは嫌だから、ちゃんと成仏する」
「うん!」
ということで、お化け云々は置いといて、婚約が決まったみたい。
婚約…ねぇ。
そういう事なら、家にあったラブレターの存在も頷けるかも。
やっぱりこれはゲームじゃなくてリアル…。信じがたいリアルだけれど。
婚約が決まってからも、レオン様は家にやってくる。
まるで、はなから私たちの婚約がなかったことのように。
笑い、遊び、寝て、本を読んで、また寝て、時間は過ぎていく。
「ねえねえ、レオンさま!今日はこの絵本を読んで!」
「『ワンダー・クロウと秘密の冒険』?いいよ」
そうして、レオン様の優しい声で、昔実在したとされる偉大な魔術師ワンダー・クロウが再び私たち2人の前に現れるのだ。彼の冒険はドキドキワクワク、スリリングに満ち溢れている。それが、まるで私たちの目の前で起こっていることのように感じるのだから、この本を執筆した小説家はすごいと思う。
「そうして、偉大な魔法使いワンダー・クロウは、最愛のお姫様と結ばれたのでした。めでたしめでたし」
絵本を読み終わると、レオン様はその絵本について少しだけお話ししてくれる。
ほら、今だってーー。
「ねえフィア」
「なあに?」
「フィアはワンダー・クロウの恋についてなにか知っている?」
「ううん。私ぼうけんの話しか知らないわ。教えてレオン様」
「いいよ。ワンダー・クロウはね、その昔皇子の婚約者に恋をしていたんだ」
「ええっ?…でも」
「フィアの言いたいこともわかるよ。でも、彼は彼女に好きだという気持ちを伝えなかったんだ」
「どうして?伝えなければ、相手はわかってくれないわ」
「彼女を愛してるからだよ」
「愛…?」
「そう。彼女を本気で愛しているからこそ、彼女の幸せを考えればこそ、自分の想いは彼女の邪魔になると考えたんだろうね」
「恋や愛って、むずかしいのね。レオン様」
「そうだね。でも、その気持ちが、人を動かす時だってある、人を救う時だってあるんだよ。現に、さっき読んだ絵本の最後、ワンダー・クロウは大好きなお姫様と結ばれる。これは実際にはありえなかったことだ」
「この絵本を書いた方が、つけくわえられたのですか?」
「付け加えた、というより、想像でもいいから彼が最愛のお姫様と結ばれる結末を書いてあげたかったんだと思う。彼の想いを、お姫様と皇子以外の誰もが知っていたというし」
「レオン様、本当のお話では、ワンダー・クロウはどうなってしまうの?」
「お姫様は、見ず知らずの女性に皇子を横取りされ、皇子には婚約破棄を求められ、挙句の果てには犯してもいない罪のために処刑されてしまうんだ」
「そんな…」
「ああ。ごめん、フィアにはこの話はまだ早すぎたね」
「いいえ、いいえ。レオン様。話してくださって、ありがとうございます。私の知らないワンダー・クロウは誰よりもかっこいい方でしたのね」
「誰よりも?」
「あ、ま、間違えました!レオン様よりもかっこいい方はおられませんわ!」
「うんうん。よくできました」
そう言って頭をポンポンとされるが、内心冷や汗ダラダラだ。
気をつけなきゃ。外面の皮の厚さは皇族の十八番じゃないか。
油断したらやられる!これ鉄則!
齢6才にして、あぶない?婚約者を持ったフィアナなのでした。
それは私の6歳の誕生日当日。
お母さまはいきなり私に尋ねた。
「?すきだよ」
そもそもおとうさまとおじいさまとレオン様以外の殿方に会ったことないし、レオン様のことが特別嫌いなわけでもないからねー。
「そう。わかったわ」
あからさまにホッとするお母さま。
「でもね、やっぱり一番はおとうさまとおかあさまと、おばあさまとおじいさまと…みんなが大好き!」
「フィアナ…」
あり?お母さま、感極まっちゃったのかな。
泣きそうになってる。
「おかあさま。大丈夫だよ!フィアナ一人でもおかあさまたち養っていけるようにがんばるから!だから心配しないで!」
娘は強かに生きるから心配しないで!というメッセージは伝わったかな。
「フィアナ。大丈夫よ、あなたを一人になんかしないからね。この間ね、正式にレオンハルト殿下とフィアナの婚約も決まったのよ!」
えええええええええーーー!
「こ、こんやく?おかあさま」
「そうよ。将来二人は結婚するの。そのお約束なのよ」
「けっこんのおやくそく?フィアナひとりじゃない?」
「そう!…でも、おかあさま、やっぱりフィアナを残して逝くのは当分無理ね。心配のし過ぎで成仏出来ないかもしれないもの」
成仏できない=おばけ ってこと?
「おばけはやだっ」
「わかったわ。フィアナに嫌われるのは嫌だから、ちゃんと成仏する」
「うん!」
ということで、お化け云々は置いといて、婚約が決まったみたい。
婚約…ねぇ。
そういう事なら、家にあったラブレターの存在も頷けるかも。
やっぱりこれはゲームじゃなくてリアル…。信じがたいリアルだけれど。
婚約が決まってからも、レオン様は家にやってくる。
まるで、はなから私たちの婚約がなかったことのように。
笑い、遊び、寝て、本を読んで、また寝て、時間は過ぎていく。
「ねえねえ、レオンさま!今日はこの絵本を読んで!」
「『ワンダー・クロウと秘密の冒険』?いいよ」
そうして、レオン様の優しい声で、昔実在したとされる偉大な魔術師ワンダー・クロウが再び私たち2人の前に現れるのだ。彼の冒険はドキドキワクワク、スリリングに満ち溢れている。それが、まるで私たちの目の前で起こっていることのように感じるのだから、この本を執筆した小説家はすごいと思う。
「そうして、偉大な魔法使いワンダー・クロウは、最愛のお姫様と結ばれたのでした。めでたしめでたし」
絵本を読み終わると、レオン様はその絵本について少しだけお話ししてくれる。
ほら、今だってーー。
「ねえフィア」
「なあに?」
「フィアはワンダー・クロウの恋についてなにか知っている?」
「ううん。私ぼうけんの話しか知らないわ。教えてレオン様」
「いいよ。ワンダー・クロウはね、その昔皇子の婚約者に恋をしていたんだ」
「ええっ?…でも」
「フィアの言いたいこともわかるよ。でも、彼は彼女に好きだという気持ちを伝えなかったんだ」
「どうして?伝えなければ、相手はわかってくれないわ」
「彼女を愛してるからだよ」
「愛…?」
「そう。彼女を本気で愛しているからこそ、彼女の幸せを考えればこそ、自分の想いは彼女の邪魔になると考えたんだろうね」
「恋や愛って、むずかしいのね。レオン様」
「そうだね。でも、その気持ちが、人を動かす時だってある、人を救う時だってあるんだよ。現に、さっき読んだ絵本の最後、ワンダー・クロウは大好きなお姫様と結ばれる。これは実際にはありえなかったことだ」
「この絵本を書いた方が、つけくわえられたのですか?」
「付け加えた、というより、想像でもいいから彼が最愛のお姫様と結ばれる結末を書いてあげたかったんだと思う。彼の想いを、お姫様と皇子以外の誰もが知っていたというし」
「レオン様、本当のお話では、ワンダー・クロウはどうなってしまうの?」
「お姫様は、見ず知らずの女性に皇子を横取りされ、皇子には婚約破棄を求められ、挙句の果てには犯してもいない罪のために処刑されてしまうんだ」
「そんな…」
「ああ。ごめん、フィアにはこの話はまだ早すぎたね」
「いいえ、いいえ。レオン様。話してくださって、ありがとうございます。私の知らないワンダー・クロウは誰よりもかっこいい方でしたのね」
「誰よりも?」
「あ、ま、間違えました!レオン様よりもかっこいい方はおられませんわ!」
「うんうん。よくできました」
そう言って頭をポンポンとされるが、内心冷や汗ダラダラだ。
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