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【主神視点】
しおりを挟む私の美しい恋人が『首』をぶら下げて帰ってきた。アレは第十五席の女神ではなかっただろうか。首だけになっても死ねない私たち『部品』。煩かったのだろう、首だけの女神は口に布を噛まされウーウー唸っている。
「ただいまぁ、デウス。はい、お土産ぇ♡」
「ああ、おかえりフロウラリア。タイミングが悪いね、見逃したよ?」
「えっ?えっ……あああ!?お風呂!?温泉入ってるの!?なんで!?早くない!?」
私のフロウラリアの最近のお気に入りは、最愛の弟の観察だ。気に入った『堕とし子』と番わせ、守らせ、睦合うのを楽しそうに見ている。
「やだあ~!もうっ!こんなの狩ってるあいだにぃ~!!……ねね?どうだった?可愛かった?ああんもう、早く壊しちゃった記録装置治らないかしらあ!?」
「実に愛らしかったよ。あの小さな体で一生懸命、番の背中を洗って、先程全身を洗われていた。弟はとても愛らしい声で鳴いていたよ」
「んんんん~!ぎゃーんっ!!ひどぉい!呼んでくれればよかったのにい!!ああんもう!」
『首』を床に叩きつける。その腹立たしそうな仕草もまた愛らしい。ぐしゃりと半分潰れた『首』の布が外れる。
「……ぐぁっ…がっ、はっ……は、こ、このっ……気狂いめ…!!フロウラリア!貴様、新参の分際でっ…!!」
「口を慎みなさぁい?ねえ女神マイア?麗しの春の女神。あなたその新参の私に敗れたの。貴女から決闘を申し込んできたのにね?」
「デウス様!!そ、そ、その女!フロウラリアは狂っています!あなた様は騙されている!!いくら決闘に勝ったといえ、こ…こ、こんな…!!」
「………?」
私は首を傾げた。序列を争う神聖なる決闘に敗れた者が口を開く事は許されぬはずだ。互いに消滅を覚悟して争う決闘なのだ。私も遥か昔、そうして父神から『デウス』の名を奪い取った。
「フロウラリアが狂っているのは仕方のないことだ。私は狂っているフロウラリアを愛しているよ」
「……もうっ、デウスったら…!」
愛しい愛しいフロウラリアが笑う。その花の名に相応しく、花弁が綻ぶように。
フロウラリアが咲う。それだけで、この醜い世界も愛おしい。
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