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閑話:オルコット領主2
幸運はさらに続く。こんな田舎町に王太子一行が保養に来ると言う。
王太子殿下は名をエグバードからアルフォンスへと変えた。なんでも『エグバード』と言う名は呪われたらしい。そして妖精姫と呼ばれる公爵令嬢マーガレット様も。マーガレット様はグレイスと名を変えた。妖精から貴婦人への羽化。なんと素晴らしい!
お2人は魔王討伐の戦争中も一度だけこのオルコットへ訪問されたことがある。王族らしい威風堂々とした王太子殿下と、愛らしい妖精姫マーガレット様。確かマーガレット様はあの時はグレン・ナイトレイと御結婚されていたのだが、グレン・ナイトレイは前線に送られ不在だった。か弱い夫人が頼もしい従兄弟に助けを求めるのは当たり前ではないか。グレン・ナイトレイも馬鹿なことをしたもんだ。
たった一度の過ちを許せないなんて。
相手は王妹の娘だ。むしろ捨てないでくださいと懇願するべきではないか。
仲睦まじいお2人のお姿を今でもハッキリと覚えている。
ハッキリと… ーーー 。
「出迎え、大儀である」
「は…!」
………これは、一体誰だ。
傷んで燻んだ髪は、まるで朽ちた黄金だ。顔色が悪くガリガリに痩せた顔。ギラギラとした眼の、その王族特有の暁の朱が辛うじて面影を残す。そのギョロリとした両眼の下には墨を塗ったのかと言うほどの隈が出来ている。
マーガレット様…いや、グレイス様もだ。太った…と言うよりは浮腫みの酷いお顔にはイライラとした表情が浮かんでいる。厚化粧でも誤魔化せない肌の吹き出物。ベタついてフケの浮いた髪と、紅が剥げてカサついた唇。パツンパツンのドレスは腹筋に力を入れればボタンが弾け飛びそうだ。
何があったのだ!?
お付きの高位貴族の令嬢や令息たちも、無駄口一つ叩かずに王太子殿下に付き従っている。
そして晩餐にお出しした料理を、お2人はガツガツと貪った。……まるでゴブリンではないか?!
「……んぐっ…!ぉぃひぃ…!アル…フォンスゥ、はぐっ、んむ…!おぃひぃわぁ…!」
「……ああ、久しぶりに…ングッ…まともな、食事だ…(ゲフゥ…)」
あまりの異様な光景に、給仕の使用人たちも凍りついた。
だがお付きの貴族たちはその異様な光景を見ようともしない。ふと気付く。カチャカチャと……小さくナイフとフォークが震えていた。
「……よし、気に入った!喜べ、この領地は私が治めてやろう」
「…………は?」
私は何が起こっているかわからないまま、地下牢に投獄された。
なんだ、これは…?
私は……あまりに幸運が続きすぎて、怖くなってこんな夢を見ているのか!?
だがこれは現実だ。私は水も食事も与えられず捨て置かれた。ああ…喉が……誰か、誰か………
「ここから出してくれえええええええええええ!!!」
薄れゆく意識の中で、誰かの悲鳴が聞こえた……気が…した………………。
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