【異世界大量転生5終】辺境伯次男は鬱展開を全力で回避する

とうや

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閑話:国家保安局長アイフェイオン



悪夢だった。


降り頻る雪のホワイトアウト。眼前には白い骨と黒とも緑ともつかない腐った肉。オルコットに到着する前からあまりの悪臭に鼻が効かなくなった。追い縋ってくる腐肉と骨。半透明のレイスが耳元でケタケタ笑う。さあおいで、と。


死ねない…!!


私は夢中で剣を振るう。魔力などとうに底を尽きた。魔力枯渇で頭痛が酷い。ああ、でも死ねばこの頭痛も感じなくなる。ならば、生きなければ。


生きなければ。


まだあのひとに会っていない。きっと居る。きっとこの国に来る。だってこの国はあの人の愛したゲームそのものだから。


この国を守らなければ。


部下たちがひとり、またひとりと死の津波に飲み込まれていく。悲鳴をあげて。ご武運を、と叫びながら。ひとりでも逃さなければ。けれど、なけなしの魔力で編んだ《転移》の魔法は灰のように崩れ、回復魔法は焼けるような痛みに変わり、大した攻撃力も持たない最下級の死霊たちが退く手を阻む。


退路を。退路を!退路を!!退路……!!!


地響きが腹に響く。


「…………っ…!!」


隣にいたシモンがヒュッと悲鳴を吸い込んだ。


真っ白な……竜。いや、違う。竜などではない。翼も、羽も鱗も、鼻も……眼球さえない。ぬるりとした何かは、が唯一顔なのだとわかる部位に口だけがあった。

ガパァと開けた大口に、不規則に釘のような歯が並ぶ。その様を、どこか他人事のように私は見ていた。


「局長!!」


シモンの声とともに激痛が走る。咄嗟に丸呑みは防いだが、私は化け物に下半身を咥えられ振り回された。


死ねない。


まだ会えていない。


確かにそのひとと過ごした幸せな日々は覚えているというのに、もうあなたがどんな顔だったかわからないよ。


会いたい。


会いたい。会いたい。


会いたくて、私はこんなところまで来てしまった。


会いたくて、私はこんなに永く生き延びてしまった。


会いたい。


会いたい、会いたい、会いたいよ……。


空に手を伸ばす。


澄み渡った空が ーーー 青い。


ああ、そうだ。こんな日は犬をダシにしてあの人を散歩に連れ出したっけ。

ゲームばっかりしないで遊んでよ!……って。


会いたい。会いたいよ。


涙が溢れる。


私の涙って、まだ残ってたのかぁ。


「……あい…た、い………よ………ほた、か…にぃ…………!」


今度こそ、私が穂高兄を守るから。


今度こそ、穂高兄を殺させないから。


今度こそ、先にあいつを殺してみせるから。























「………まゆ?」












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