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閑話:ナイトレイ近衛隊士ロメオ1
ナイトレイに移住した。そしてすぐに近衛隊に配属された。なんだこの流れるような移住……と思ったら、ジュゼッタの計らいだった。なんということだ。うちの妹は可憐なだけでなく頭もいい。
美しい母に似て、雪花の妖精のように可憐な妹。その妹に群がる男どもを蹴散らし続けて…。学園に入ればさらに煩いだろうと覚悟をしていた。覚悟はしていたのに、第三王子のボンクラが妹に一目惚れをして婚約者にした。しかも俺まで側近候補に召し上げた。はっきり言って迷惑だった。迷惑どころか母と妹を連れて国外逃亡までしようと思っていた。母に「まあ…ロメオは母の楽しみを取り上げてしまうのですね…」と悲しそうに言われて諦めたが…。
ナイトレイの血は犬の血筋だと言われている。番犬であり、猟犬。己よりも何よりも主人を愛する血筋。王家はその血が欲しいだけなのだろう。
俺は、その手綱を持つのはグレン様がいい…と思っていたのに。
けれど、学園にとある男爵令嬢が入学してきたことによって事態は変わっていった。
あれほどジュゼッタにまとわりつ……ゴホン…溺愛していた第三王子が男爵令嬢を傍に置くようになり、苦言を呈した俺は鬱陶しがられだした。誰も彼も男爵令嬢を持て囃し、高位貴族令息たちが彼女を姫のように扱った。《魅了》スキルとともに吐き出される言葉は甘く、とても無責任で辟易した。一向に靡かない俺に不安を抱いたのか、男爵令嬢にベッドに引き摺り込まれそうになったことは一度や二度ではない。
大変申し訳ないが、俺の理想は高い。あの美しく完璧な母と可憐で優しい妹を見て育ったのだ。マザコンで何が悪い。シスコン上等だろ!?愛嬌だけが取り柄の脳味噌お花畑女に魅力など麦一粒だって感じない。
そして俺の陥落を諦めた男爵令嬢は、今度はジュゼッタに虐められた、殺されそうになったと嘘をつき始めた。馬鹿なのかこの女は。…馬鹿だったな。けれど第三王子に纏つかれなくなったジュゼッタは他の令嬢たちと楽しそうに喋っていることが多く、ジュゼッタが2~3人いないと無理だろうという『虐め』だった。男爵令嬢の虚言癖が囁かれるようになり、あの女の「ヒドイんですぅ!」を真に受けるのは取り巻きの馬鹿令息たちだけだ。ほんっと……馬鹿だろう…あの女………。
もう我慢ならん。卒業までは黙っておくが、俺の卒業と同時にナイトレイに亡命しよう。こんな国捨ててやる。
そう思って臨んだ卒業パーティー。あと数時間でこの馬鹿どもともお別れだと思うと、口元には自然に笑みが浮かぶ。ジュゼッタは中途退学になるが、ナイトレイの学校に行き直せばいい。案の定、第三王子はジュゼッタに婚約破棄を言い渡した。恋愛小説の読みすぎじゃないのかコイツら……。
けれどジュゼッタは、第三王子と馬鹿女の糾弾をさらりと無視し、なんと大神デウス様までお呼びして婚約破棄と国外追放を誓約させた。
妹が微笑む。一緒に行こうと。
これで落ちないやつは男じゃないだろう!?
可愛い可愛い守ってやりたいと思っていた妹の強かさ。そこもいい。控えめに言って最高だ。
気付いたら俺はジュゼッタにプロポーズしてパーティー会場から逃走していた。そして何故か第一王子殿下の馬車に拾われて国境線の関所まで数日掛けて走り、その先には笑顔のグレン様が待っていた。すべてジュゼッタとグレン様の『悪戯』らしい。
グレン様の従者のダリル伯父さんには拳骨を食らったが…。
その後はよくわからないうちにグレン様の伴侶の元勇者アルヴィン様に引き合わされ、近衛隊に入隊。同じくジュゼッタはナイトレイ本家の執行部?とかいう役所との連携を円滑にする部署に就職した。
すべて終わった。そう思っていたのに。
「ねえロメオくん、ちょっと週末の帰りに本家寄ってくれない?」
グレン様がそう言いに近衛隊の訓練施設に来るまでは。
「ごめんねえ?これ置くところに困るから、おじさんちに持って帰って」
そう言われて渡されたのが、ジュゼッタ宛の大量の釣書だったことを知るまでは。
そして大量の釣書とドーン王国第三王子の恥知らずな手紙を抱えて帰る途中にジェラルド様に呼び止められるまでは。
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※ジュゼッタとロメオくんは普段はナイトレイ本家の寮に住んでて、週末に馬車で2時間かけて分家(ダリル実家)に帰ります。
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