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最終話
あんなに大事になったってのに、俺は生き残った。
あのあと。
視界が真っ白になって、誰かと話をした気がするんだが。
んで。
目が覚めたら《久遠》とベロチューしていた。噛んだけど。蹴ったけど。
食い散らかされた『グレン』の体と、《オリジン》の本体の方は、「えっ?あれなんだったの?」って言うくらい治ってた。
夢かと思ったけど、《久遠》に襟首掴まれてジタバタギャーギャー言ってる《唯一》があれは現実だと肯定する。
ベロチューで貰った魔力は「第一世代3柱分の魔力だ」って《久遠》がドヤ顔で言ったから、「えっ?一眞とも粘膜接触したの!?」って訊いたらすっげえ嫌そうな顔してた。ほんっとお前刹那一筋なんだなあ…。
ジタバタ暴れてた《唯一》だったものは、俺が抱っこすると大人しくなった。あれぇ?噛み付いてこないの?おかしいなあ???見た目は赤ん坊だけど、中身は……ホラ、ねぇ?
食われてから再生した部分は見事に服がなかったから、《久遠》の羽織を奪って解決。手袋と靴と、襟と袖とズボンの切れっ端って格好じゃ結界から出れない。出たら死ぬ。死因は羞恥で。マッパより恥ずかしい。
結界から出たら、死にそうな顔した嫁たちと、これまた死にそうな顔した見知った奴ら。駆け寄った嫁たちを押しのけて刹那が抱きついてベロチューかましてきた。……ねえ、お前と《久遠》って、チューまでは浮気じゃないとか?いや、わかってるよ。魔力うめえ。でも嫁が怖いからそろそろ離して。
で。
離してもらったら腕の中に赤子。うん、察するよね。
「うわぁ!グレンのちっちゃい頃そっくりだあ!」なんて言って手を出したレイの指がごっそり消失するというハプニングがあった。瞬時に治癒したからほとんど気付かれてないけど。痛みも血も出る前に瞬間治癒。元聖者なめんな。
新《唯一》は、どうやらまるっと記憶を失って、ガツガツ食った俺を親だと認識しているらしい。それってどうなの?で、俺以外が触るとめっちゃ怒る。あんなに(顔だけは)大好きだっただろう《桜座》さえも威嚇する。それってどうなの!!??
……おかしいなあ。第一世代が産んで、第二世代と同列に扱わせるのが復讐だったのに。さぞや屈辱だろうとワクワクしたのに。蓋を開ければ俺に従順なだけの猛獣赤子。うん、やべえ。天上の御方々、回収お願いします。
世界は急速に広がっていく。
供給の止まっていたエネルギーも正常に流れ出した。《唯一》という電源ケーブルが正常になったおかげだろう。
新《唯一》はユイと名付け、とりあえずグレン・ナイトレイの第一子として登録された。嫁たちがソワソワしてるが2人目は産まん。今度は何が出てくるか恐ろしい。だって時折神託めいた声が聞こえるんだもん。「楽しそうだから私の依代も作ってくれないかな?」とか……。お断りだ(ブルブル)
ドーン王国はもうガッタガタだったけど、予定通りというかなんというか、やっぱりマクシミリアンが戴冠した。城ごとセドリック王も王太子も消えてなくなったからね。
で、ドーン国王マクシミリアン1世になったマクシミリアンは、恐ろしいことに俺の嫁になった。
ーーー は???意味がわからない…!
ナイトレイに併合されるためのお飾りかと思ったらホントに初夜までやった。もちろん兄ちゃんたちの前で。ニコニコしながら「私はさほど性欲は強くないので月に一度のお渡りで構いませんよ?」とか言いやがった。やめてマジやめて。泣いてる子もいるんですよ!(ここに)
ブレイブリー・ドーンという物語が終わる。
引っ掻き回して変えまくった悲劇の運命は、多少はマシになったのだろうか。誰も彼も助けたいなんて思わない。残念ながら俺は勇者でもヒーローでもないからだ。
けど、俺の好きな人たちが笑顔でいれる。そんな優しい物語になっただろうか。
やっとよちよち歩き出したユイを抱いて。丘の上から夕日を見せる。
黄金に輝く麦畑。夕陽に照らされる領地。夕餉を作る家の煙。家路を急ぐ男。農道を走っていく賑やかな子供たち。
ユイ。これがお前が守っていく世界だ。
愛して、守って、慈しんでいく世界だ。美しいだろう?
嬉しいなあ、楽しいなあ。なあ、ユイ?
俺の悪戯は成功したかな?
愛し子が笑う。無邪気に。嬉しそうに。
願わくば
この世界が、お前にとって愛おしく美しいものであるように。
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