側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや

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【シャーロット視点】

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「痛っ…!」

「あっ……も、申し訳…ございませ……」


また私の髪がブラシに引っかかった。この…!


「ヘタクソ!!もういい!触らないでッ、アンタはクビよ!!」

「そ…そんな……シャーロット様…!」

「出て行って!!まともに髪をセットできる人を呼んできなさいよ!!」

「は…はいっ…!」

「ああもう!イライラするッ!!お城の侍女は髪もとけないの!?」


私はクシャクシャと頭を掻き回した。何もかもがうまくいかない。お妃様ってもっとキレイで楽しくてキラキラしているものだって思ってた。たくさんの侍女に傅かれて、寝ぼけてる間に髪もドレスも魔法みたいに仕上がってるんだと思ってた。

それなのに……


「日に日に侍女の質が落ちている気がするわ」


そうよ、お城に来たての時はなんでもできる侍女がいたじゃない。確かパ、パリ…パ、パティ?そんな名前の……


「ねえ、以前にパティとかいう侍女が居たでしょ!?あの侍女はどうしたのよ!」

「パティ…パティ……ああ、パトリシア、でございますか?」


私の傍に控えるだけしかしない侍女が言った。


「そうよ、何度か髪やドレスを任せたけど、あれがいいわ!呼んできて!」

「パトリシアはエマ様の専属侍女でございます。今は王宮にはおりません。シャーロット様のお世話をさせて頂いた時は多分、引き継ぎの期間の人手が足りずに見かねて手伝ったのでしょう」

「いいじゃない!エマは側妃になるんでしょう?だったらパトリシアはお城の所有物よ!私が使っても良いじゃない!」

「シャーロット様……」


目眩を堪えるみたいに侍女は額に手を当てた。


「パトリシアはエマ様の所有する人材です。給与もエマ様が出しておりますし、王宮に貸し出されていただけで…」

「じゃあエマから買い取って!あれがいいの!だってみんな髪をとかすのもコルセットを締めるのもヘタクソじゃない!!」

「シャーロット様!!」

「ひっ!?」


びっくりした!!なによ!怒鳴ることないじゃない!!


「パトリシアはエマ様に忠誠を誓っております。買い取るなどと……侍女はモノではありません!それにパトリシアはシーグローブ公爵家の侍女。行儀見習いがてら箔をつけにきた王宮の侍女とは違うのです。パトリシアはエマ様のために生き、エマ様が死ねと言えば即座に自決できる『シーグローブの狗』でございます。最も……エマ様は誰かに死ねなどと……世界が滅ぶとしても口にしないでしょうが」

「な…によ……」


みんなして、エマ、エマ、エマって!!あんなのただの負け犬じゃない!!私に婚約者を寝取られた負け組女でしょ!?


「もういいわ!!あんたも出て行って!!」






「………はい。ではシャーロット様、これでわたくしはお暇いたします。お元気で…」












********************************************

裏設定

パティの本名を知る侍女は侯爵令嬢パトリシアの年下の従姉妹。冤罪で陥れられ、没落した従姉妹一家を救えなかったことを家族で今も悔やんでいる。

多分この後はどこかの貴族の後妻に収まった。



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