56 / 92
セオドア様が「やっといて」と言ったのですもの
しおりを挟むさて困りました。王太子殿下のお仕事って、肩書きだけは陸軍元帥なのです。騎士団とか近衛とか、その他諸々を統括なさるお仕事。お飾りですけど。
けれど、セオドア様が「やっといて」と言ったのですもの。何かありますね?
軍事はさっぱりわからないので、お父様に専門家はいないかとお伺いしたところ、なんとセバスが出張してきました。
「ほっほ、これでも若い頃は軍師などやっておりまして」
わあ、セバスがとっても頼もしいです。
通常業務はアリサや侍女軍団が良い感じに回してくれるようになりました。わたくしは確認してサインするだけ。空いた時間にセバスの『お嬢様でもわかる軍の健全運営講座』を受け、「実際に見てみましょう」、とルネライト王国軍を調査すると……あらあら、まあ…。出ます出ます不正の数々。賄賂、横領、裏口入団は当たり前、暴力事件に婦女暴行。被害は城下にも及び、苦情と陳述書は握り潰されておりますね。わたくし、正義漢ぶるつもりはございませんが、これから運営していく王家の印象は良くしておきたいものです。
「お嬢様、追い込み猟は迅速に、徹底的に、ですぞ?鼠一匹逃さぬつもりで下準備を致しましょう」
わあ、セバスがちょっと怖いです。
「セバス師匠、一斉摘発後の空いた穴はどうしましょう」
「良い事に気付きましたね、エマくん」
くすくすと2人で笑い合います。あら?ケイレブがちょっと引き気味ですわ?
「城下の警邏の半分は冒険者を使いましょう。お嬢様の狗にSランクが居ましたね?」
「Sランクというとニックか鬼哭丸ですね。鬼哭丸は境界地域で武者修行中ですから、ニック……そうですね、彼なら多少は王都冒険者ギルドに顔が効くでしょう。それに騎士を養うより冒険者を日雇で雇った方がお安くなりますね」
「あとは警備体制の見直しを。仕事と言いながら詰所で遊んで、いざとなったら出動も渋る騎士など要らんでしょう」
「あらあら、まあ。手厳しい」
「騎士団だけではなく荒事専門の部隊も必要ですな。この国の騎士とやらはぬるすぎる。今この国が戦争になれは目も当てられぬほど食い荒らされますぞ?私なら兵を1万ほど貸していただければ、5日…いえ3日で制圧してみせましょう」
制圧しないでくださいませ。
******************************************
裏設定
セバス本名、セバスティアーノ。元はエマの祖父の狗。『シーグローブの狗』は主人が死ぬと殆どが殉死するが、セバスはエマの父親にスライドして仕えた変わり者。とある戦闘国家の軍師として仕えていたが、エマの祖父が傭兵として率いた軍に負けて捕虜に。そのまま『シーグローブ』自体に惚れ込んで仕え始める。多分80代のお歳。彼と同年代のプリムローズは彼の名前を聞くと舌打ちするほど有名だった。
264
あなたにおすすめの小説
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
あなたが捨てた花冠と后の愛
小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。
順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。
そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。
リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。
そのためにリリィが取った行動とは何なのか。
リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。
2人の未来はいかに···
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます
ぱんだ
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。
しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。
ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。
セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。
婚約者の番
ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。
大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。
「彼を譲ってくれない?」
とうとう彼の番が現れてしまった。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる