75 / 92
【シェパード公爵代理視点】
しおりを挟む運が向いてきた、と思った。
昔、家の外に出した息子が王太子側妃の側近に召し上げられたのは知っていた。側妃が産んだ子供が、王の瞳とも呼ばれる宝石瞳だと。
その双子の王子が黒髪をしているのだと。
うまくやったものだ。蛮族上がりの公爵家の娘。その娘は必ず王妃になる。その噂を聞いて息子を『婚約者候補』に捻じ込んだ。『婚約者』にはきっと王家の王子がなるだろう。運良く王子の側近になれば御の字だ。真の目的は妻と相性の悪い息子をシェパード公爵邸の外に出すだけなのだから。シェパードの血を引く息子は殺せない。それは勇者の血筋だからだ。だからこれは避難。息子を避難させるのだ。私は悪くない。
目論見通り、息子は王太子の側近になった。私は何度か王太子に目通りがしたいと息子に手紙を出していたのだが、ついぞ返事は返らなかった。
その息子はいつのまにか側妃に転がり落ちた蛮族上がりの公爵の娘の護衛として転落した。なにをやっているのだ、アレは。
だが風向きが変わり始める。
側妃となった娘は愚かな王太子夫妻の代わりに公務をこなし、評判も上々。そして側妃の産んだ子供が宝石瞳。運が向いてきた。そう思った矢先だった。
双子の王子は黒髪らしい。
………黒髪。それは息子の髪の色だ。王家は代々、白に近い金の髪だが、シェパード家は黒髪。宝石瞳の双子の王子の父親は、私の息子だ。
運が向いてきた。
宝石瞳の双子の王子は将来、どちらかが王になるだろう。私は、王の祖父になる。
うまくやった。私は公爵だ。双子の宝石瞳の王子の祖父なら宰相…いや、もっと上の地位も望めるだろう。
私はケイレブと側妃に会いに行った。私は双子の王子の祖父だ。祖父が孫に会いに行っておかしくはない。
だが、意気揚々と孫に会いにきた私に城の使用人たちの目が冷たく突き刺さる。冷え切った目で私を見る息子と側妃。生意気な。血統しか取り柄のない出来損ないの息子と、蛮族上がりの公爵家出身の側妃が。
「それで、私の孫は?」
気が利かない。普通は息子と側妃に会いたいと言えば孫も連れてくるだろう。
「宝石瞳の私の孫です。さあ、早く連れてきてください」
側妃の微笑みが消えた。なんだ?バレてないとでも思っていたのか?蛮族の娘は頭が悪いのか。
「ほう?ではお前は私の息子たちが不義の子だとでも言いたいのか?」
312
あなたにおすすめの小説
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
あなたが捨てた花冠と后の愛
小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。
順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。
そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。
リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。
そのためにリリィが取った行動とは何なのか。
リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。
2人の未来はいかに···
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます
ぱんだ
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。
しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。
ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。
セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。
婚約者の番
ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。
大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。
「彼を譲ってくれない?」
とうとう彼の番が現れてしまった。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる