公爵令嬢は奪われる2 〜悪役にならなかった元公爵令嬢が辺境伯に嫁いでからのアレコレ〜

閑話:大英雄な辺境伯と邪神級な彼女

マズイなあ…

なにがマズイって、ギーヴお義兄さんだ。



あの時。

お袋がギーヴお義兄さんに斬りかかった時。

視界の端に、あのタケノコノサト商会の番頭さんが動くのが見えた。

王子の抜刀は間に合わないが、あの番頭さんなら なんとかするだろう。

そして、ギーヴお義兄さんも笑ってるから、なんとかなるだろう。

最悪、この間 取得した『死んで3秒以内なら蘇生できちゃうスキル』で復活だ！すっげ痛いらしいけどwww

そう思って、マリが割って入るのを止めた。

結果、やっぱり番頭さんが華麗なパリィスキルで受け流したんだけど。

けど、その後のマリの様子が明らかに おかしかった。

マリは何かに怯えた。

もしかすると、マリは前世の死の間際を思い出したのかも知れない。

マリは激高した。

そう、静かに、冷たく、畏怖スキルを垂れ流すほど激高したのだ。

『畏怖』なんて そうそう取得できるものじゃない。

魔王72柱でも取得しているものは上位数名。

お袋がマリを邪神と間違ったのはそこだろう。

そしてその激高したマリを、ギーヴお義兄さんは容易く制御した。

お義兄さんが『自分は無事だ』と言い聞かせると、マリはその絶望にも似た『畏怖』を霧散させた。



マズイなあ、と思う。



なにがマズイって、俺がめっちゃ嫉妬してる。

そして、この世界では、きょうだいだろうと親子だろうと、双子だろうと結婚できる。子供だって作れる。

地球みたいに悪い遺伝子の重複がないとかなんとか……すっごいハアハア言いながらユーキが言っていた。

マリを信じてるし、マリが大好きだ。

でも、ギーヴお義兄さんが かっこよすぎてすごく不安なんだけど！！

もー！マズイって！！

ジタバタして焦るのなんて初めてだよ！




そんな俺の手をマリが握る。

「結婚の報告……やっぱりグレンも緊張する？」

俺の手をにぎにぎして、マリが不安そうに聞いてくる。

「ちょっと…怖いなあ……」

不安なのはギーヴお義兄さんなんだけどね！

「…ふふ……一緒だね」

照れたようにマリが笑う。

～～～～っかああああああ！かああああわあああああいいいいいいいいいいいいいいいいい！！！

「マリが手を繋いでてくれたら頑張る(｀・ω・´)」

「え～…もぉ～……(ギュッ) ふ、ふぁいと～///」

おーーーーーー！！

さっきまでの不安とか焦りが一気に引いていく。







今日も俺の彼女は可愛い。邪神級だけど。