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選択権はないらしい
しおりを挟む天馬がふわりと舞い上がる。アキと俺2人分の重みなんか感じさせないような羽ばたきで。眼下に幹部たちが壁に沿って作られた階段を、軍馬で物凄い速さで追いかけてくるのが見える。人1人分くらいしかない階段であの速度…。馬のコントロールが有り得ないレベルだ。
クレバスから出ると、目の前には赤が広がっていた。
エイリヒサの鎧の色だ。
「………っ!!ユスティア!!」
聞き慣れた声で誰かが呼んだ。
「……シルヴェスター…」
2年前まで友人だった男だ。赤い鎧を身に纏い、王の身でありながら前線と死の淵を荒らして駆け抜け、エイリヒサを大陸有数の軍事強国に押し上げた男。エイリヒサ国軍の鎧が赤いのは、敵兵の血を落とすのが面倒だったのだと揶揄され、恐れられる赤。
「……ふーん?」
俺の腕の中のアキが不機嫌そうな声をした。顔は見えないが、これはものすごく拗ねている時の声だ。まずいやばい俺が悪いんじゃないけど。
「ねー、ユスぅ?コレがユスのお友達だったオジサン?」
「……あー…ああ、うん…」
言い方がねちこい。これはかなりキている…。
「……っ!貴様が、強欲のマモンか…!」
いいえ違います。異世界転移の天使です。
「シルヴェs……」
名を呼ぼうとしたら腕を抓られた。痛い。地味に痛い。
「アキ…?」
「ユスは黙ってて。もう一回昔の男の名前なんて呼んだら閉じ込めて縛って薬キメさせて狂うまで犯すからね?」
「アッ、ハイ」
俺に選択権はないらしい。
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