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嫁のお仕事
しおりを挟むなしくずしに嫁になった。まあループから救出してくれた人だし、何より顔がいい。なんていうか、もうドストライクだ。性格はアレだけど、それを減点しても顔がいい。それになんかすっげえ優しいし。
千早はなんと魔王様だったらしい。
この世界にいる7人の魔王の1人、傲慢のルシファー。
んー、まあ傲慢って言えば傲慢なの?でも優しいし、筋は通ってると思う。ちょっと俺に対する感情が振り切れまくってると思うけど。
んで。
嫁のお仕事は通訳だ。なんの?って……魔王である千早と《眷属》とかいう鬼っぽツノを生やしたマッチョおにーさんたちの。
千早たち魔王たちはこの異世界に転移するときに『代償』を支払った。大きなものが通るほど、大きな代償がいるらしい。それは年齢だったり言葉や視覚、記憶……そのひとが大切だったものが奪われることが多い。
千早が支払ったのは聴覚。
千早はもう500年近く、無音の世界で生きてきたらしい。
怖いと思うよ?だって聞こえないんだもん。自分の声さえ。聞こえないから自分の声が段々とおかしくなったのを知った千早は、喋るのをやめた。指先に魔力を灯らせ、空間をタブレット代わりに筆談で生きてきた。それでも戦闘力は魔王随一っていうんだから恐ろしい。
千早たち魔王は、《伴侶》とかいうお嫁さんを見つけて『互いに愛し愛される』ようになれば代償は戻ってくるらしいけど……。
そんで、千早は俺を見つけた。
正直本当に俺なの!?って思うんだけど、千早が聞こえるのは今んとこ俺と兄弟である魔王たちの声らしい。
「タぶん親父タチのコエもきこエるとおもウ。あア、ユきハ可愛くテかワいくてカワイイ、おレの救世主ダ」
そう言いながら、千早は俺を抱きしめて頬擦りする。
最初はデスボイスだった千早の言葉は、今は抑揚とかめちゃくちゃだけど俺と一緒に訓練中だ。500年喋らなかったんだ。ゆっくり根気強くやっていけばきっと戻る。眷属のみんなも「千早様が喋った…!」とまるで『クラ●が立った!』みたいに涙ぐんで喜んでたし。
俺が眷属のみんなの声を千早に教えて、千早が直に喋る。それだけでこんなに喜んでもらえるんだから俺も嬉しくなってくる。
なにかご褒美はいるかと千早に訊かれて、つい「お芋食べたい!」って叫んだ。
「イも?」
「うん、お芋!俺が育った村って、芋がよく育ったんだ。まあ…芋しか育たなかったっていうか。甘いサツマイモみたいなのとか、ジャガイモみたいなのとか、サトイモみたいなもっちりしたのとか……あ、サトイモみたいのは茎も食べれたよ!スポンジみたいでシャクシャクしてね…」
「……いモ、スきカ?」
「うん……えっと…芋とか…野菜、好きだよ?」
「ふム…」
千早は顎に手を当てて考え込んでしまった。
え……だって、魔王城ってお肉が主食なんだもん。初日は吐いちゃって食べれなかったけど、お肉も好きだよ?転生して滅多に食べれなかったけど。脂ののったお肉はまだ無理だけど、今はササミっぽいお肉を食べさせてもらってる。あと、城下?の固いパンを小さく切ってもらって飲み物でふやかして食べてる。
「よシ、親ジをよボウ」
んっ???
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