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【商人視点】
しおりを挟む機巧大国アヴァロンは最先端の技術と文化の都市だ。巨大な建物のような城と、それを囲むように整備された美しい街。魔王と呼ばれる絶対君主が統治し、技術や文化は異世界のものだ。
入国は容易ではない。
まず最初に書類審査。これは金貨を山と積もうとも認可が下りない。次に魔王国独自の身辺調査。帝国の王侯貴族だろうが後ろ暗いことが有れば却下される。そうして篩にかけていき、アヴァロン魔王国の利益になる者だけが入国を許可される。因みにこれは許可後に摺り替えなどの不正は一切効かない。アヴァロン専用に同一に育てられた双子だったとしても。
そうして入国を許された者だけがこの長い列に並ぶのだ。
アヴァロンは宝の宝庫だ。物理的なものだけじゃない。技術や文化、思想、全てにおいて他国を凌駕する。この国の品に慣れてしまった富裕層は、もうアヴァロン無しでは生きていけないとまで言われている。
斯く言う俺は、この列に並ぶのは3回目だ。
小さな商会の商人見習いの俺が何故か審査に通った。確かに俺は悪いことはしちゃダメだって爺ちゃんに鉄拳制裁で育てられた爺ちゃんっ子だ。曲がったことは嫌いだし、人が良いとはよく言われる。まあ決め手は薄らぼんやり覚えている前世の記憶らしいが。
列に並びながら、商会長に渡された買い付けメモをもう一度確認する。
これ以外には個人的にショウユとミリンとコメを買って、持ち出し禁止のビールで一杯やって、あとは………
ふと。
顔を上げると、そこには信じられない光景があった。
一言で言うなら、魔王が天使を抱っこしてる……。
………ああ、いや、待て。ここじゃ『天使』は蔑称なのか!?いやだけど俺の語彙力じゃそうとしか表現できない。
全身黒尽くめの、凍えるような威圧感の超絶美形と、ホワホワした春の日差しみたいな白と桜色の美少年。横を通り過ぎたのは一瞬だったけど、それでも俺の心臓がとんでもなく大騒ぎした。
その魔王と天使は俺たちの列の隣を擦り抜け、迷いのない足取りで関係者用の通用口に入って行った。高位の役人が慌てて対応しにきたところを見ると………まあ、7人の魔王の1人…なんだろう。
後にそれは、『傲慢のルシファー』とその伴侶だったのだと知る。
クッソ!もっとしっかり見て拝んどくんだったぜ!!
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