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王都編
ハイかイエスか御意だろう!!
ニップルピアスを納品した翌朝、ラドがニッコニコでやってきた。足取りは軽く、肌艶が良く、口元はだらしなくない程度に緩み、口調は花が咲き、なんというかこう……むかつくほどに『幸せオーラ♡』が出ている。
「明日の披露目式はこれを身に付けなさい。それから、ピアスは最高の出来でした。朝まで盛り上がりました。あんなに可愛い弟は久しぶりでしたよ。はぁ…最高でした…!あ、弟は今日はまだ寝てます。………聞きたいです?」
「左様ですか。全くもって聞きたくありません」
「くふふ…そう言わずに。幸せのお裾分けですよ」
「不要です」
オッサン2人の猥談とか、いっらねえええええええ!!
「そうです?残念ですね。うちの弟は可愛いのに…」
「ンンッ!…あー、はい。衣装。衣装ですね!恐縮です!ありがとうございます!!」
ラドは明日の披露目式に着る服を仕立ててくれたらしい。
「大公家の執事や乳母が張り切りまして。どうやって調べたのか貴方の体のサイズも調査済みだったようですよ。あの人たち、貴方を本気で囲い込むつもりですね」
色々と怖っええええええ!!
あー、でもそっか。ラドは大公家の人たちとは良好な関係なのか。うんうん、安地大事。
受け取った衣装をティグレに渡す。……エルマー・ゲージはまだ来ていない。あいつ何やってんだ!?今日から配属だよな?配属初日に連絡もなく遅刻欠勤とか、ヒノモトの大企業なら即懲戒免職、軍なら第一級前線配置だ。でもまあ、あいつが居ないからラドもエロ話しようとしてるんだろうし。
「あ、そうだ。今朝城から食材届きました。ありがとうございます」
「ああ…あれは王妃殿下もあれこれ指示をしていたようだね」
城から届けられた食材は、醤油や味噌、塩、胡椒、鰹節や乾燥昆布などといった調味料に加え、ベーコン、玉子、野菜、焼きたてのパンと至れり尽くせりだった。欲を言うと米だ。白米が食べたい。玄米でも良い。お孫ちゃん……王妃様の采配もだが、ティグレが厨房の使用人たちと仲良くなったのも良かったのだろう。朝食!非常に!美味かった!!
「いやぁ~!遅れた遅れたー!」
乱れた格好をしてエルマーが現れる。その弛みきった態度にイラッとするが、こういうのは注意するだけ無駄だ。
「……エルマー・ゲージ。君は本日からリオ・プレンダーガストの護衛に任命したはずだが?」
「あっ…殿下…!えーと…ええ、ちょっと寝坊して、ですね…?」
その胸元のキスマークは一体なんだろう。前世の悪友、西ノ宮という男は女にも男にもだらしない阿呆だったが、時間に遅れたことはなかった。自分に非がある場合には言い訳もしなかった。ティグレに至っては時間前に行動を始め、俺の先回りをする優秀さだ。本人の生まれ持った気質に加え、リサとセバスの教育の賜物だろう。……むう。比較をしてはいけない。だがこれは……
「……ラド殿下、彼は私の護衛に向いていないのでは?」
「えっ…!?こ、困るよ~!親父に言われてるんだって!」
「なら何故、時間に遅れる?お前の私生活に口は出さないが、『仕事』をするにはまだ早いのでは?」
トン、とエルマーの首のキスマークのあたりを指で叩く。もちろん俺の首だが。
「え~?なに?嫉妬?」
「私が?何に対して?お前に?……ハァ………二度とは言わない。私の『護衛』をやりたかったら耳の穴かっぽじってよーく聞け?時間に遅れるな。乱れた服装でウロウロするな。言い訳をするな。最後に。目上の者の会話に首を突っ込むな。……以上だ。返事は?」
「えー……こえぇな、もー………うー、うん。わかったよ…」
「………」
イラァッとする。ここはハイかイエスか御意だろう!!
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