【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

文字の大きさ
68 / 160
領地編2

閑話・偽物と本物



(マクファーレン公爵夫人視点)


最近の王都の流行は『プレンダーガストガラス』だ。ただの宝石には出せない煌めき。宝石ではあり得ない大きさや加工。しかもオーダーすればイメージした通りの色合いが出せるところが素晴らしい。

今日は王妃様主催の大切な茶会。ま…わたくしの娘なのですが。


「まあ、ご機嫌麗しくて?マクファーレン夫人」


と談笑しているわたくしに、不躾にも声をかけてきたのはシャーロック公爵夫人。


「まあ、マチルダ様、ご機嫌麗しゅう」


マチルダ・シャーロックは先代シャーロック公爵の後妻だが、のアデルバード・シャーロックの実母。さすがは娼婦上がり…と揶揄されるほどの常識のなさだ。今日もだというのにのようなドレスを身に纏っている。真っ赤な布……いえ、肌面積が非常に多いドレスにギラギラと宝石を縫込み、胸元にはその派手さにそぐわない茶色の宝石の首飾り。


「王妃殿下もご機嫌麗しゅう」

「…………」


さすがは我が娘。そして我らが王妃。非常識にもマチルダを一瞥もせずににしている。四公らと揉めたくないと思っているのかしら。歯痒いわね!無礼打ちしても良いくらいなのに…!

マチルダは同じテーブルにいた伯爵夫人に席を譲らせ、わたくしの正面…王妃殿下の斜め前に陣取った。……あー、あの伯爵夫人の領地は絹織物が盛んで国内の9割はかの領地だというのに……マチルダ、しばらくは国内産の絹のドレスは仕立てられないわね…。

ハア、と王妃殿下が溜息をひとつ。


「マチルダ夫人、ご機嫌は如何かしら」

「まあ王妃様、ご機嫌もご機嫌ですわあ!あたくし、素敵な首飾りを頂きましたのよォ!から」

「……かの…?」


ピクリと王妃殿下の目線がマチルダの胸元に行く。

なんの変哲もない、地味な色合いだ。なぜこの女はこんなに地味な宝石を自慢しようとしているの?じみ、な……


「これはプレンダーガストのガラスですの!ただのガラスではありませんのよ?ほぅら、こうして……」

「………!」


まさか。いえ、でも……

マチルダの持つ首飾りの石の色。茶色いガラスは、陽の光に透かすと淡い空色になった。


あれは、プレンダーガストの未発表の色ガラス…!!


間違いないわ。わたくしが先日、誕生日に夫から贈られた耳飾り。燃えるような赤いガラスは、光に翳すと夫の瞳の藤色になった。まだ世に出す予定ではない。そう…聞いていたのに……!

王妃殿下が目を見開いたのを見て、マチルダがニンマリ笑う。


「先日、が彼の御方と懇意になりましてねェ、ええ、屋敷に招かれた時に頂いたんですよぉ」


オホホホ!と高らかにマチルダが笑う。

な…なんということ!あの糞餓鬼!!まさか胸か!エロガキめ!所詮は巨乳おっぱいか…!?『勇者』となった彼の方 ーーー リオ・プレンダーガストはどの派閥にも属さず、また、不可侵の存在。それが、まさか…っ!?


「……そのガラスは…本当に彼の御方の、プレンダーガストガラスですか…?」

「……え…」


ジ……ットリ、と。王妃殿下の目が、その茶色いガラスに注がれる。


「未発表のそのガラスの名は、プレンダーガストサフィレット。本来ならばそのようなお色ではございません」


するり、と王妃殿下が白い絹の手袋を外す。その指にあるのは…


「これがプレンダーガストサフィレットです」

「…………っ!」


深い蒼のガラスのカット部分が赤く滲み、ゆらゆらと光を放つ。流行りのブリリアントカットではなく、つるりとした引っ掛かりのない、薔薇の蕾のようなカッティング。ああ…これが……


違う。マチルダのガラスは、ただ色が変わるのものだ。


「……マクファーレン夫人の耳飾りイヤリングはプレンダーガストサフィレットのですね。さすがはマクファーレン公爵。愛されておりますね」

「あ…あら……」


娘に言われると面映いものですね。


「こ…!これが、偽物だとでもおっしゃっているのですか!?これは、彼の方に、プレンダーガスト侯爵に……っ」

「いつ、ですか」

「え……」

「いつ、プレンダーガスト侯爵邸へ?」

「あっ…あ、せ、先月ですわ!あたくし、と一緒に、プレンダーガスト領へ……!」

「確かにシャーロック公爵はプレンダーガスト領に行ったと記録があるでしょう。転移門の設置に行かれたと報告がありました」

「そっ…!そう!その時に、屋敷で……っ」

「招かれたのです?」

「そうです!!嫌ですわ王妃様、嫉妬ですか?彼の方はあたくしをマディー、とお呼びになり、美しい花の咲き乱れる庭園でこの首飾りを……」

「ありえません」

「はっ……はあ!?あたくしが嘘をついている、とでも…!?」

「嘘ですね?だって、?」

「……………………えっ…」

「まだできていないのですよ、屋敷が。彼の方はに寝泊まりしているそうです。あと、庭なんて今はないそうですよ?聞きました」

「えっ……」

「まだそんな余裕はない、と」

「ひっ……ぇ、え……っそん、な…!」



「マチルダ夫人」



にこり、と王妃殿下が笑った。王妃としての手本のような笑み。為政者の笑みだ。








そのガラスを入手したのですか?彼のお方は、と仰いました。貴女………嵌められたのですよ、勇者殿に」


感想 76

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。 かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。 そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。 「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」 おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?