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領地編2
閑話・ガラス職人姐さんと彫金師ちゃん
(ガラス職人視点)
「……はあ…お互いの色を纏った二人……尊かったですねぇ、姐さん…」
火酒をちびちびやりながら、彫金師ちゃんがつぶやいた。この彫金師ちゃんはプレンダーガストで実力は一番の彫金師だ。なんでも隣国の出身だが男尊女卑で手柄を横取りされまくり、セクハラまでされて、あわや貴族の愛人に…というところで逃げ出してプレンダーガストに流れ着いたらしい。
「うふふ……作って良かったわあ… 猫睛石に似せたガラス……すっごく大変だったのよぉ…」
対してあたしは、自分より背が高い、女にモテるというだけで婚約破棄された元貴族だ。15歳で家出してプレンダーガストに流れ付き、ガラス職人の親方に拾われて今に至る。
「ねえ姐さん……依頼品も凄かったですねぇ…?あれって高位貴族向けですよねェ……」
「そぅねぇ……前回の乳首ピアスもびっくりしたけどぉ…」
そう。我らが麗しの領主様は、この間からエログッズの依頼を持ってくるようになった。前回が揃いの乳首用ピアス。今回が逸物用のリング。共にギリギリまで『赤』を入れたガラスで飾り立てる高級品。親方や兄弟子たちは新しい物に飛びつくので、宝飾品用のガラスはちまちまとあたしが作る。ま、小さなものを作るのって嫌いじゃないし。
「おっきい輪でしたねぇ……誰に頼まれたんだろ…」
グビリ、と火酒を煽る。
「あー、駄目駄目。そういうの詮索したら消されるのが物語のお約束でしょ」
「ですねぇ……」
はぁ…と酒精を吐息と共に吐き出して
「それにしても、あの首飾りはどうするんでしょうねぇ?」
「ああ、あれ?うーん……領主様は釣るんだって言ってたけど……もちろん川とかで魚を釣るわけないわよねえ」
領主様が新年会に出る直前に完成した首飾りは、「とにかくド派手で高価そうに見えたほうがいい。あっ、素材はどこまで安価に作れるか実験してみてくれ」と無茶振りだった。……がんばった。頑張ったのだ。
大振りの宝石もどきはアクセサリーにもならない薄い色の屑ガラスを寄せ集め、ちまちまちまちまと磨いて、川から雲母を取ってきて、それを全部樹脂でいい感じに固めた。お値段は樹脂代だけ。彫金師ちゃんも一緒に川で雲母を取った。手伝ってくれるのかと思ったら、彫金でも使うと大量に用意していた。
彫金師ちゃんは、土台を粘土で作っていた。……嘘でしょ!?流石に丸カンなどは無理だったらしいが、それでも細かすぎる。乾いて硬くなった粘土に、雲母を砕いて薄く糊で溶いたものを鬼気迫る顔で塗り重ねる。そこまでやるか!?結果、ギラッギラペカペカに光る趣味の悪い『偽物』が出来上がった。
あたしは負けじと、さらにギラギラ輝くように屑入り樹脂にダイアモンドカットを施す。どこからどうみても趣味悪い。まるで成金が好む質の悪い蛋白石のようだ。プレンダーガストブルーの箱に、真っ赤な天鵞絨の中敷き。多分、箱の方が高い。何倍も。
領主様の『釣り』が成功したら、多分あのいけすかない小僧は二度とこのプレンダーガストに足を踏み入れることはできないだろう。……破滅してしまえ。領主様とティグレくんの恋路の邪魔をしたり、あたしの彫金師ちゃんを口説こうとしたエロガキは死ね。あたしたちの知らない遠いどこかで死んでくれ。
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