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学園編
閑話・それは甘美な沼
(アビントン侯爵令嬢視点)
わたくしはパトリシア。アビントン侯爵家の次女にございます。我がアビントン侯爵家は代々『王家の影』を務めさせて頂き、例に漏れずわたくしも王妃殿下の専属としてお仕えしております。表向きは学生として王立学園に通い、『主人公』と『攻略対象者』と呼ばれる者たちの監視を任されております。余談ですが『攻略対象者』の1人、ギャリー・グローヴスはわたくしの婚約者でございますが、婚約を白紙にする寸前でございます。『げえむ』が無事に終わり、『主人公』がグローヴス様を選ばなければ、婚約の継続も白紙もわたくしの判断、と陛下からお言葉を頂いていたのですが……無理ですわ、無理。わたくし、夫でも恋人でも下半身に脳がついているような男はお断りですわ。
本日の報告をするべく、王宮を進み、父が勤務する第三秘書室へと向かう。そこから狭い壁の裏の通路を進み、王妃殿下の元へと参じました。
「(王妃殿下、わたくしです)」
「まあ、パトリシア。待っていましたよ、お入りなさい」
壁をココ、コッ…と決められた波長で叩くと壁がズレて扉になる。王妃殿下の考えた魔道具です。
「本日のご報告に参りました」
「いつもありがとう。……その…おふたりは恙無く…?」
「はい、いつも通り、仲睦まじく」
「まぁ…っ」
少女のように目を潤ませる王妃殿下は、とても三十路を越えたとは思えない愛らしさだ。
「それでそれで?!今日のおふたりはどうだったのかしらっ」
「それが……」
わたくしはきゅっと眉根を寄せる。
「王妃殿下……わたくし…わたくしは………甘美な罪を知ってしまいました…!」
「あらっ…まあ?まあまあまあ!パトリシア!貴女、とうとう目覚めたのですね…!」
「か…完敗にございます……まさか、まさかあのような……」
わたくしは甘く見ていた。プレンダーガスト侯爵の毒を。物心つくまえから『影』として生きていけるように育てられた。なにものにも動かされない、冷静な心。あらゆる誘惑にも耐えてみせた。恋になど落ちぬようにと、世界中の美男美女と言葉を交わし、耐性を付けてきた。それが、まさか ーーー
「まさか…っ!あのような甘美な世界があろうとは……!!」
「腐腐腐腐腐腐……知ってしまったのねパトリシア……さあ、見せてちょうだい。貴女の見た楽園を。真実を!」
「……はい…」
わたくしは胸元のブローチを操作した。これはその時の情景を嘘偽りなく記録する魔道具だ。『すくりーん』と呼ばれる白い垂れ幕にあの講義室での情景が映し出される。
「まっ……まあっ!?…ふぁっ!?……あ、あ………ああっ!ま!?むっほぅ!」
王妃殿下がおかしな声を上げ、涙と鼻水でその顔をぐしゃぐしゃにしながら跪いた。……あ。鼻血も出てるわ…。わたくしは王妃殿下にそっとハンカチを差し出した。
「と、と、と…東野様…っ!えっろぉぉぉおおおおお!!メチャエロォォォオオオオオ!!婚約指輪にチュッとか……あざと可愛エロ!!ンッホォォオァァァ!勃ってる!!あれ絶対ティグレきゅんガン勃ちだわエロすぎわろたああああああぁぁぁ!!ウッヒョオオオオオオオオオオ祭りじゃわっしょおおおおおおおおおおぉぉぉいいいい!!」
ああ…王妃殿下が何をおっしゃっているのかわかりませんが、きっとそう……とても尊い事なのでしょう。
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