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偽神編
ジュール・リュエール・デ・ゼトワール
しおりを挟むラドと一緒に来訪した男は見慣れた色をしていた。白っぽい金の髪、桜色の目。えらく整った顔はどこかで見たような顔をしている。
リュエール・デ・ゼトワールというのは、北方貴族と呼ばれる最北端の小さな国々を纏める小国の名だ。『星の光』の名を持つ王族は『神』の祖を持つという。嘘か本当かは知らないが。
「プレンダーガスト侯爵、私はヘスティア・リュエール・デ・ゼトワールの兄だ」
「……………は?」
え……
「えっ……曾祖母様の…」
「ああ、兄だ」
「は!?!?ちょ……じゃあ………え?ええ!?え……わ、若すぎねえ!?」
曾祖母様の兄ちゃんっつーと80歳オーバーだろ!?目の前の男はどう見ても20代後半から精々30代前半。
「リュエール・デ・ゼトワール家は少々特殊な血筋でね。直系男子の平均寿命は300歳。女子は350歳と長寿。外見も歳を取りにくい。ヘスティアのように若くして死なない限りとても長生きする家系だ」
さらっと大変なことを聞いた気がする。曾祖母様が亡くなったのは50代と記録があった。モンサロ王国の貴族の平均寿命はおおよそ60歳前後。それが……若くして???
いやいやいや。それよりも、だ。
「ジュール・リュエール・デ・ゼトワール?あんたがティグレを、ラドを唆したのか?」
「唆した……とは穏やかじゃあないね。私はモンサロ王国の宰相閣下に話をしただけだよ。『優秀な養子が欲しい』と。まあ欲を言えば君が良かったんだが」
「何を勝手に……!!」
「リオ!」
「………っ」
掴み掛かろうとした俺の腕をティグレが掴む。
「リオ……いい、話なんだ。平民の、娼婦の子供が、貴族の養子になれる。良い話なんだ!それをリオが邪魔しないで!!」
「……………ティグレ……」
ガツンと後ろ頭を殴られたような気がした。
ティグレの生い立ち。ティグレの置かれた状況。ティグレの気持ち。
「俺は……これ以上、リオの傍に、居られない…」
ティグレの目を見る。曇りのない 猫睛石。
ティグレの、本音。
泣きたい気持ちで唇を噛む。
俺は、ティグレのことを、気持ちを、全く考えていなかった。
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