【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

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偽神編

ティグレの気持ち、無神経な俺



その日からティグレを追いかけ回した。クソビッチと愉快な愛人たちがサカってようとなんだろうと関係ない。前世では鈍い鈍いと言われ続けた俺だ。なんかこう、他人の感情の機微に疎いらしい。ちゃんと話し合いがしたい。なんで嫌なのかとか、なにが嫌なのかとか。多分、俺も凹むだろうしティグレもまた嫌な思いをするだろう。

でも俺が嫌なんだ。未練がましいけどティグレに好かれたい。甘やかして欲しい。傍にいて欲しい。あんな冷たい顔とか向けて欲しくない。ここに西ノ宮が居たら「俺らしくない」と笑い飛ばすだろう。でも…でもさ、なんかこう……

そんで、こういう時のティグレはすごく反応が早い。

俺が部屋に踏み込んだりする前に逃げる。姿を確認するや否や逃げる。走る。窓から逃げる。屋根を走る。まじかのこの!?まじで追いつけねえ!え…なに?ティグレってこんなに足早かった!?


「ティグレ!!こンのクッソ!止まれ!止まれってば!話があんだって!!」

「おっ…おれにはっ……ないよっ!!聞きたく、ないしっ!はなした…く、ないっ!!追いかけてこないで!!」


なんでこの……くそおおおおお!!


「お待ちになって、プレンダーガスト侯爵」


追いかけっこ2日目。何故か数名の貴族の女生徒たちが立ちはだかる。


「そこを退け!ティグレが…っ!」

「追いかけて、捕まえて。それで?如何なさいます?」

「はあ!?」

「これ以上の『もだもだ』は消化不良のもと。飽きがきてしまいますわ。天が、神が許しても、わたくしども『薔薇を愛でる会』が許しません!!」


なんの話!?


「あれも欲しい、これも欲しいでは単なる『はーれむ』モノではありませんか!ティグレ様のお気持ちをお考えになって!」

「……ティグレの…?」


気持ち?


「そうです!確かに『薔薇を愛でる会』には『総受け』や『すーぱー攻め様』といった概念もございます!でも!でもあんまりではありませんか!!わたくしたち『純愛一夫一夫派』にはあまりに酷く…!!一途なティグレ様に対して、あまりに無神経ではありませんかッ!!」

「無神経……」


泣き崩れてしまったご令嬢を、他の令嬢たちが庇うように支える。

無神経……そっか。俺、無神経だったかぁ…。

そうだよなぁ…。ティグレがヤダって言ってんのに追いかけ回して。か…顔も見たくないくらいに……嫌われて…





それからどうやって帰ったかは覚えていない。

気付いたら、リサがムッツリと口を『へ』の字にして俺にサンドイッチを握らせた。……俺の好きなライ麦の黒パンで作ったハムサンド。ひとくち食べると、俺の大嫌いな香草パクチーがぎっしり入っていた。手の込んだ嫌がらせだなァ、おい…。


「坊っちゃま。私は、そういう鈍くて鈍くて鈍感なところは、坊っちゃまらしくて可愛くて愛おしいと思っています。誰がなんと言おうと。世界中が坊っちゃまを非難したって。リサは坊っちゃまの味方です」


鈍いの重複かよ…。


「仕方のない人ですね。自分のことに鈍くて、好意にも鈍感で……本当に坊っちゃまは、リリにそっくり」


母上まで貶された…。


「逃げ回るあの馬鹿も悪いんです。侍従の本分も忘れて、自分の心を隠し通せなかった未熟者。私の坊っちゃまをこんなに苦しめて。全く…あの馬鹿猫は一体何をやっているのやら。男なら、無理でも告って玉砕して、さっさと次に進みなさいってんですよ、もうっ!」


……セバスが言ってた。今まで会った女性の中で、1番の男前はリサだって。




……明日。


明日、本気で捕まえて。

話をしよう。





もうひとくち。サンドイッチを食べると、二口目はまた大嫌いなものスイートバジルが入っていた。………ぅう…リサぁ……。








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