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偽神編
歯と歯
追いかけっこ3日目。気配感知と身体強化まで使ってティグレを追い詰める。疫病学教室。つまり別館の端も端で、人気は全くない。だってさっきキンバリー講師は「ごゆっくりぃ~」とか言いながらそそくさと逃げた。……良いんだ。少し外してもらう予定だったから。
「……はぁ…やっと捕まえた」
「…………」
ティグレは俯いて目を逸らす。
「……なあ、ティグレ。お前にすっごい負担かけてたのを思い知った。ごめん」
「………」
「…今は、王都の屋敷にリサに来てもらって、執事っぽいことをウォーレンにやってもらって、なんとか回してる」
「………っ…そ、そう……俺が、いなく、ても…」
「違う!あ、いや…違わないけど、違う。その……あれだ。労働環境がキツいってんなら、その、改善できるから…」
ああ、クッソ!なんか言葉が見つからねえ。語彙力半壊中。なんか……何言っても言い訳にしかならないっつーか…。
「……その、あと………あとさ。俺…かな…。俺、結構無神経なことした、よな?自分じゃあんまりわかんなくて、だな…その……」
「…………………違う、よ…」
「……え…?」
「…違うよ……。俺が、出て行ったのは……リオのせいじゃない。でも、リオのせいで……」
どういうこと?
「……侍従の仕事も…辛くなかった。違うんだ……俺が、やりたかった。リオの、世話。全部、したくて……」
「でもティグレ?その…ぶっ倒れただろ?やっぱ無理して…」
「だから違う。俺、聖女様に……し、(嫉妬、して…)」
え…?なに?聞こえない。なんて言って…?
「リオだって、今からは俺がいない方が良いんだって。だって聖女様と婚約するんだろ?け…結婚も……」
「えっ……え、ええ…いや、待て?待て待て待て!なんでそんな話………」
あっ、あれか!ティグレがぶっ倒れてた時にアンティエーヌがそんな話したな!?アンティエーヌも興奮しまくってたから忘れかけてたけど……あー、あれ?あれ聞かれてた?でも、その……
「…え?なんで?なんでアンティエーヌが関係すんだよ?」
「………っ!するよ!!するにきまってるだろ!」
「えっ…なんで……?」
「なんで…って………」
あ…。
一瞬だけこっちを見て。
ティグレが泣きそうな顔をした。
違うんだよティグレ。俺はお前にそんな顔をさせたいんじゃない。
いつもは無表情でも、ふとした拍子にふわっと。そう、見間違いかと思うくらいふわっと笑うんだ。それが嬉しくて。一緒に美味しいものを食べたり。綺麗な景色を見たり。ティグレが笑うと嬉しくて。宝物を見つけたみたいに嬉しくて。
誰にも、あげたくない、とか。ずっと一緒にいれるんだって……思い、上がってた…。
「ティグレ…?」
「………っ」
顔が、見たくて。
また俯いてしまったティグレの頬に触れる。
俺よりでっかくなっちまったティグレは、今は講義室の隅っこで身を縮こまらせて。
「………やめて…やめてよ、リオ…」
あんなにチビでガリで、ぼろっぼろだったのになぁ、お前。大きくなっ………
ガツッと。
腕を掴まれた。
…………は?
いや、あれだ。避けることだってできたと思うけど。なんか好きにさせてやろうって思って。
殴られるのかなー?とか。ちょっと覚悟して。
ティグレの手が痛まなけりゃ良いけど、とかぼんやり考えながら。
そのでっかい両手で頭を包むように掴まれて。あれ?頭突き?とか思いながらティグレの顔を見て。
ああ、やっぱりきれいだ。
猫みたいに縦長の虹彩の金瞳。ティグレの目なら1時間でも眺めていられ…………
んっ???
あれ???
えっ!?顔……近くね?えっ?え……???
ガチッと。
ティグレの歯と俺の歯がぶつかる。
えっ………えっ、え…ちょ…???まっ…待て。待て待て待て待て待て!?!?
あまりのことに硬直する俺を突き飛ばして。
ティグレは泣きながら走り去ってしまった。
「………は……………?」
ズルズルとその場にへたり込む。
えっ………え?ど…どういう、こと???
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