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偽神編
閑話・神は居られた
(アンティエーヌ視点)
わたくしを建屋内に押し留める護衛騎士たちを押し除け外に出る。『偽神』と呼ばれる異形の存在の最後の悲鳴が聞こえてから少し経ってからだった。
ダンスホールの外は凄惨たる光景だった。魔物の血より鮮やかな何かの液体がそこかしこに水溜まりを作り、真っ赤な血溜まりに倒れ伏すティグレ様と ーーー
それはリオ様に膝枕をしてそこに居た。
淡く発光する半透明の体。不気味さを感じるほどの整った美貌。高位神官にも似た異郷の服を纏ったなにか。息苦しいほどの神々しさと禍々しさ。その男はリオ様の髪を優しく梳き、何事かを囁きながら頬に、首筋にと手を滑らせる。真っ赤な血を噴き出すリオ様の肩口に触れ ーーー 微笑んだ。消失した腕のあたりが白く輝いたかと思うと、それはゆっくりと腕の形をとり光を失っていく。呆然と立ち竦むわたくしの方を見たそれは、唇の端だけで笑い「内緒だ」と言うように人差し指を立てて唇に当てた。
「あ…あぁ…っ!!」
背後から女性の声がした。王妃様だ。
「ああ…ああ……ああぁぁぁ!!神…!神は…ッ、おられた!!」
王妃様は祈りの形に手を組み、滂沱の涙と鼻血を流しながら跪いた。
神?あれが神だと言うのか。神というにはあまりに禍々しく、魔物というにはあまりにも神々しい。
リン…
何かの金属音が響く。ベルより高い、美しい音だった。それの体がゆっくりと、溶けるように消えていく。
音が………戻ってきた。そう。音が、確かに消えていたことに今更気付く。
わたくしは呆然とその喧騒を聞いていた。
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