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本編
【第二十一話】そして、物語の幕は下りた
(女王視点)
王都の一角で火の手が上がる。あれはソーンヒル子爵邸のある方角か。
「……ロジャー、毒杯の用意をしておけ。一等踠き苦しむやつをな」
「はっ」
「些か情けをかけすぎたな、あの古狸め。いくら血の繋がった父といえど容赦はせぬわ」
ソーンヒルが燃えた、ということは、帝国側の処分が終わったということだ。この手際の良さ。遅くも早くもない、絶妙なタイミング。
計算され尽くし、すべてを見通すような計画。
……ああ、これはきっと、『彼女』の ── 。
「~~~~!!クッソ!!!」
頭を掻き毟って地団駄を踏む。
やられた!!クッソ!!盗られた!!あのいけ好かない男に!従兄弟殿に!!!
「へ…陛下…!」
「プライベートではレジーナと呼べ唐変木!!」
「はっ…はい!……レジーナ…」
「くそ!今夜は飲むぞ!!」
「はい!ご用意いたします!!」
最愛の王配はいそいそと酒の用意を始める。私は童女のように頬を膨らました面をしながらソーンヒルの最期を眺めた。
隣国の間者の温床だった『ソーンヒル』が終わる。
ソーンヒル子爵邸に結界魔法が張られたと聞いた時、帝国の干渉が始まったのはわかっていた。だから『魅了』封じをしたララティアをあの屋敷に戻した。
そして、そこだけを切り取るかのようにソーンヒルは燃えた。
証拠は完全に灰となった。また、工作員と思しき者たちがこぞって姿を消した。
……前ハンティントン伯爵夫人も。
すべてが……私も、離宮に押し込めた先王も、ヴァイス皇帝も、ヴァイスの反体制組織さえ『彼女』のてのひらで踊っていた。二国に跨ったヴァイスの反体制組織と、メンゲルベルグの先王派。彼らのどちらか一方を潰してもだめだった。双方を同時期に潰してこそ根絶やしにできるのだ。
いつから計画されていたのだろう。魅了封じの耳飾りを私に贈ってくれた二年前?
いや……もしかしたら、それ以前から…
ああ、問題が山積みだ。
「カミーユ・アルノー・ヴァイス。ルルがお前の思い通りになると思うなよ…!」
**********************************************
「結局…あの『手紙』は遺書ではなかったのですか?」
「ルルがあんな手紙を残して死ぬわけがない。彼女はアレで、辛辣で狡猾だぞ?あと非常にけちだ。なんの利益もないのに命を投げ打つなど勿体無いことはしない」
「(……あんなに儚げなのに…)」
「あの手紙は先に『王家の影』の検閲が入っていた。ルルは『影』を引っ掻き回すために、ありもしない『資料』を探させ、こちらが準備をする時間を作ったんだ」
「それは…また、なんというか……」
「敵に回したくない女だろう?まああの『死体』だけはどう偽装したか謎だがなぁ…」
「いやはや……彼女が男であれば、なにがなんでも第一王配に据えたでしょうね…」
「同感だ。だがお前のことは手放さないぞロジャー?」
「………は…はい、陛下…」
「レジーナと呼べ!色気のない奴だな!!」
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