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舞台裏
【最終話】
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開拓地の朝は早い。開拓地といっても流刑などではなく、新興貴族の領地開拓だ。小規模ながら市場もあるし商店や娯楽施設もある。
ここはシュネー辺境伯領。3年前に爵位を賜ったティア・シュネー女辺境伯の治める領地。
このティア・シュネー様は色々な噂の飛び交うお方である。
曰く、娼婦から成り上がった皇帝陛下の愛人である。
曰く、先代皇帝陛下の隠し子である。
曰く、長き眠りから覚めた『白き善き魔女』である。
そのどれもに信憑性があり、どれもが出鱈目なのだけれど。
ティア・シュネー様は領主館を代理人夫妻に丸投げし、日々、魔獣討伐に明け暮れている。皇都貴族たちの夜会や茶会の誘いも無表情で一蹴し、皇帝陛下の召喚も慇懃無礼にお断りする。というか、お嬢様にこんな辺境をあてがったのは皇帝陛下ではないですか!こうなるのはわかっていたのでは!?
……はぁ…いけませんね。落ち着きましょう。
領主館で働く私たちでも滅多にお会いになれないティア・シュネー様。……まだ、私たちと暮らすのは抵抗があるのでしょう。
私たち領主館で働く者たちはとある事件で記憶を無くした。
薬品工場の事故だと世間では公表されている。
みんなが忘れてしまったから、お嬢様は安心して生きていける。
下働きも、庭師も、護衛も、料理人も、フットマンも執事もメイドも侍女も。子爵夫妻ですら忘れてしまった日々。
あの愛おしく、目まぐるしく、地獄のような日々。
だから私は忘れた振りをしよう。
ずっとずっと、この記憶は墓まで持っていこう。
今度こそ、私がお嬢様をお守りする。今度こそ。今度こそ。絶対に。
だってルルティア様は死んだのだ。
もうララティア様は死んだのだ。
お嬢様は ── 自由だ。
西の空が燃えるように赤い。夕焼けの空に飛竜の連隊の影を見て、私の心は浮き足だった。
今回は何日滞在してくださるのだろう。ああ、お風呂の用意…いえ、まずは料理人に林檎のパイを焼かせなくては…!
私ははしたなくない程度に走る。お嬢様の元へ。
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