絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

文字の大きさ
222 / 318

ep222 手遅れかも

「シュレア、絶死の森の近くに海ってあるの?」

「近くにはないですね」

「かなり遠いな。私の翼でも五日はかかるぞ」

 うえっ!?
 プテュエラ航空マッハ便でも十日?
 それは……めちゃくちゃ遠いね。

「でもシュレアの樹渡りなら一瞬なんじゃない? トリスと一緒に樹渡りできないかな?」

「シュレアは海の近くの樹木たちと交流してないので不可能です。相変わらずケイの脳みそはダークエイプ以下ですね」

「ひどいよぉ」

「仮に樹渡りできたとして、トリスを抱えながら転移はできないでしょう。物理的に樹に入りません」

 そりゃそっか。トリス、見た目の大きさで言えば知ってる亜人の中で一番大きいもん。次にラミアルカかな。ただ、霧にしまってるムカデくんを含めたらサンドリアが一番大きいんだろうね。

「そっか……プテュエラはどう?」

「ふーむ。どうだろうか。トリス、ちょっと浮かせてみてもいいか?」

「もちろんだぜぃ」

 プテュエラは殲滅魔法を行使し、トリスを空中に浮遊させる。

「おっ、おっ。浮かんだ。プっち~、良い魔力制御だなぁ。手前っちを少しでも浮かせるのはよぉ、お前さんの母親にはできなかったんだぜぃ」

「そうか……でも、ここまでだ」

 そう言ってプテュエラはトリスをゆっくり地面に下ろした。その後、ゆっくり息を吐いてしんどそうな表情をする。

「すまん……私には無理だな」

「いいんだぜぃ。手前っちは特別重いのさぁ……それに、表面の粘液には魔力を受け流す効果があるからなぁ~」

 確かにトリスの巨大な蛸足にはめちゃくちゃ筋肉詰まってるし、見た目以上に重いんだと思う。

「そういうことか。魔力で捉えようにもぬるぬる滑ってしまって、捕まえられなかったんだ」

 フレイムベアの魔力減衰フィールドと似たようなものかな? でもその性質が違いそうだ。

 じゃあトリスを抱えて海まで運ぶのは無理か……って、ちょっと待てよ。

「いや、契約してから現地でトリスを召喚して呼び出せばいいんじゃない?」

「…………あ、忘れてたんだぜぃ」

 ポカンとした表情を浮かべたあと、恥ずかしそうに顔を伏せた。このロリおばちゃんかわいいな。

「亜人召喚かぁ~手前っちにはもう縁が無いものと思って、考えてもみなかったぜぃ。確かにその方法ならいけるかもなぁ」

「おそらく大丈夫でしょう。ただし距離的に相当遠いので、万が一ということがあります」

「ああ。ここからあの海まで亜人召喚した人間などいないだろうからな。私とシュレアで近くまで運べたら、と思っていたんだが」

「……みんな、そこまで考えてたの?」

「……ケイは別にそこまで考えていたわけではなく、トリスと同じように忘れていただけだったんですね」

「全部考えたうえで、私たちに可能か訊いているのかと思ったぞ」

 しらー、っとした二人の目。

 し、仕方ないじゃない。

「アホなのです」

 グサっとくるシュレアの言葉。そうです、わたしがアホな契約者です。

「け、ケイはアホっぽいところが、か、かわいいんだよ!」

 拳をぐっと握ってフォローしてくれるサンドリア。ありがとうね。でも、あんまりフォローになってないからね。

「……そっかぁ、手前っちにも子供ができるかもしれないのかぁ。嬉しいなぁ、嬉しいんだぜぃ。ご先祖様にも、顔向けできるなぁ……」

 ロリ中年はしみじみと遠い目をする。彼女にもいろんな艱難辛苦があったんだろう。

「んじゃあケーくん、手前っちと契約してくれるかぁ?」

「もちろん。トリス、よろしくね」

 よっしゃ! ロリ中年オクトパスからお繁り許可もらったぞ!

「んじゃあ、さっそく……と行きたいところだけどよぉ。その前にお前さん達の用を済ませないとなぁ~。何か手前っちに用があって来たんだろぉ?」

「あ」

 あ、そうだったそうだった。
 それが目的の一つだったんだよな。トリスは古株そうだし、いろいろ話聞けたらいいんだけど。

「実は知り合いのアセンブラ教徒がさ……」

 と、僕はシャロンちゃんとその敬虔なアセンブラ教徒のお母さん、シャロンさんの話をし始める。

………………
…………
……


「……んふぅ~なるほどなぁ~」

 最後まで話し終えると、トリスは難しい顔をしてため息を吐いた。

「なんともまぁ、手前っちの契約者はすんごいやつだったんだなぁ~。そりゃ亜人が何人も侍りもするんだぜぃ」

「おかげさまでね」

 トリスは感心しつつも難しい表情を崩さなかった。

「……体内から歯車みたいな音が音がするアセンブラ教徒かぁ~。ケーくんがジオス神より与えられたスキルでもどうにもできなかったんだよなぁ?」

「うん……一回目は効いたんだけど、二回目は浄火が効かなかったんだ。ベステルタが習得した“影抜き”って技のおかげで事なきを得たんだ」

「うむむ、ベステっちの技がなんで通ったのかはとりあえず横に置いとくんだぜぃ。まず、なぜ神から賜ったスキルが効かなかったか……そりゃ相手にも神由来のスキルが付与されてるからなんだぜぃ」

 うん……言われてみればそうなるか。神の力に対抗するには神の力じゃないとな。

「トリス、そのスキルが何だか分かるのか?」

「んぁ~分かるぜぃ。そりゃアセンブラ教が使う外法スキル、アセンブライズ《刃狂魔化》だなぁ~。まさかもう出現してるとはなぁ~。計算よりも百年早いんだぜぃ」

 あ、アセンブライズ?

「初めて聞きました。どのようなスキルなのですか?」

「まぁ~端的に言うと、敬虔なアセンブラ教徒を『増幅装置』にするスキルなんだぜぃ。こいつらが増えるとアセンブラ神の力が強まって、復活しちゃうんだぜぃ」 

 ……。


 は?


 ちょっと待って、アセンブラ神が復活? 


 え、そういう話になってくるの?


「アセンブライズはものすんごーく、高度な技術と、彼の神に対する信仰心、親和性、体力がないと発現しないんだぜぃ。今のアセンブラ教のトップたちは軒並み枯れそうなジジイのはずだから、不可能だと計算結果が出てたんだけどなぁ~……くそぉ~っ」

 トリスが悪態をついて蛸足を振り下ろすと、その可愛らしい見た目とは裏腹に、ズシィンと周囲に局地的な地震でも起きたかのような揺れが走った。

「……取り乱したんだぜぃ。ごめんなぁ。アセンブライズされた敬虔な教徒は、その身の内に『歯車の種』を宿すんだぁ。で、それが育っていくと、その身はだんだんと人ならざるものに変化していくのさぁ~。やがて完全にアセンブライズが進行すると、体内から『きりり』と歯車が軋む音が鳴るようになるのさぁ~」

「……それって、もう、助からないの?」

「助からないぜぃ。神の御業による種族変異だからなぁ~。これを覆すにはより上位の力が必要だが、ジオス神の力は弱くなっちまってるからなぁ……」

 ……シャフナ、さん。
 いや、シャロンちゃん。
 理解が追いつかない。どう、すれば。

「で、でも。ベステルタの影抜きは効果があったよ?」

「んあぁ~。それはほんとにすごいよなぁ。人が織り、亜人が成した技が神の御業に届きうるなんてよぉ~。たぶん、影抜きはアセンブライズによって深いところに生じた『影』を祓ったんだなぁ。
 影は本体と一心同体の存在だからなぁ~。浄火では専門が違うから効果が無かったんだろうなぁ」

「じ、じゃあ」

「でも残念ながら、根本的な解決にはならないんだぜぃ。そのシャフナって信者はもう、完全にアセンブライズされちまってるからなぁ。一度影を祓っても、またすぐに発生するぜぃ」

 僕は返す言葉もなく、黙り込む。

「アセンブラ神が、ふ、復活したら、ど、どうなるの?」

 サンドリアがおそるおそる尋ねた。

「うん、ちょっとそこだけ、待ってくれなぁ~。もうほとんど答えは出てるけど、念の為裏取りしてくるんだぜぃ」

 そう言ってトリスは十三本の蛸足を順番になぞっていく。脚はボウッ……と青白くかすかに発光して、彼女の手を淡く照らした。

「んん~たぶんこの知識だなぁ……」

 彼女はある脚の付け根にしばらく手をかざす。まるで何かを読み取ってるかのようだ。

「シュレア、あれは何をやってるの?」

「記憶から知識を読み取っているのですよ」

 彼女はトリスの邪魔をしないようにそっと答えた。その声には尊敬の色がある。

「トリスカイデイカが長老と呼ばれるのは、亜人随一の記憶力にあります。彼女の一族はその十三本の脚それぞれに、独立した脳を持っています。そこに、先祖から受け継いだ知識や知恵、記憶を溜めることができるんです」

 な、なるほど。ただのフィジカル筋肉オクトパスじゃなかったのか。そう言えば蛸って頭良いって言うもんね。

「また彼女たちはその脳を複雑な演算に用い、未来や厄災に対する方策を講じてくれているんです。過去、それで何人もの亜人が救われました」

 すげー、ガチで長老やん。トリスめっちゃ頭良いんだな……。

「よ~し、裏取りが済んだんだぜぃ。待たせたなぁ」

 ふぃ~と中年蛸JCが長めの息を吐いた。仕草はマジでおっさんなんだよな。

「分かったのか?」

「おぉ~ばっちりなぁ~。
 さあてと、お前さんたちぃ。手前っちが話す前に、心の準備しとけよぉ~冷静になぁ~。平常心で何言われても動じずに受け止めるんだぜぃ」

(そ、そんなこと改めて言われると緊張してしまう)

 口調は相変わらず間延びしているが、その瞳はとても真剣でまさしく亜人の古老といった迫力を感じさせる。

「……ふぅ。問題ありません。話してください」

「私も大丈夫だ」

「あ、あたしも」

「わ、わいちゃんも」

「うっし、じゃあ端的に結論から話すぜぃ~……」

 トリスは肩を竦めるように、おどけた調子で言った。

「ケーくんから聞いた話、十三脳の記憶、そして手前っちがずっと昔から行っていた演算、これらを組み合わせて総合的に判断するとなぁ~……。


 もう、この世界『手遅れ』なんだぜぃ」


 トリスカイデイカの、妙に平静な声が河辺に響いていった。

 
感想 30

あなたにおすすめの小説

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

男女比の狂った世界で俺だけ美醜逆転してるんだが…。

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、青山春。 日本によく似たパラレルワールド(男女比1:9)で彼女を作るために色々する物語。 前世の記憶のせいで、俺だけ美醜が逆転してしまっているので、この世界で可愛いと言われている子達には興味がない…。 うん。ポジティブに考えれば、前世で女優やモデルを出来る容姿の子とお付き合いできるのでは!? と、幼少期に光〇氏計画を実行しようとするも断念。 その後は勉強出来るのおもしれぇ! 状態に陥り、時が流れ大学に入学。 そこで義務を思い出し二十歳までに彼女が欲しい!いなきゃしんどい!と配信を始めてみたり…。 大学の食堂で出会った美人とお近づきになろうとしたり…! 作者が暗い話が嫌いなので、基本的に明るめの話構成になってるはずです。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!