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H級ゲットだぜ!
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「グョョョョオオオン!」
「えっ、きも」
ボス部屋に入った途端キョンをさらに一回り大きくさせた魔獣、グレートキョンが襲いかかってきた。
血走った目はぐるぐると回転しつつも、なんらかの方法でこちらを正確に捉えているんだろう。まっすぐに突進してくる。
長い舌を振り回してよだれを振り撒いてめちゃくちゃに跳ね回る姿はたいへんキモい。
「ケイ、ちょっと新技試してみるわね」
「えっ、まだあったの?」
「影抜きをたくさん練習したおかげで、さっき思いついたのよ」
ベステルタはスッと両手を構え、抜き手を左右水平に保ち、やや前傾姿勢になる。
……うん、サ◯ダー・ホークの構えっぽい。
「いくわよー……双重《ふたえ》」
ベステルタが両腕を振ると、一瞬彼女の姿がブゥンとぶれた後、その腕から幾十もの透明な空刃が放たれた。
……月◯天衝?
「ョン?」
空気がギチチ、と奇妙に縮む嫌な音。
真正面から食らったグレートキョンは、間抜けな鳴き声を最後に一瞬で絶命した。異常な威力で放たれた原理のよく分からない刃はその身体を徹底的に破壊し、八つ裂きにし、血を蒸発させ、無に帰した。
「あっ」
とベステルタが可愛らしい声をあげる。
グレートキョンを葬るだけでは足らなかった空刃たちがボス部屋の高い天井に到達し、凄まじい音を立てた。
するとその超エネルギーに敗北した天井は、多くの岩石を伴いながら崩落し、ボス部屋はあっという間に瓦礫の山と化した。
「あわわわわ」
「ごめんなさい。少しやり過ぎちゃったわ」
めんごめんご、と謝るベっさん。うん、とてもかわいい。
……ふぅ、なら仕方あるまい。ベステルタの可愛さのためならボス部屋が崩落しようが半壊しようが問題ない。
「大丈夫、素直に謝れて偉いね」
「そうよ。私は冒険を通して成長しているんだもの」
自慢げに胸を張る。ツン、どころかヅン、と大きめにはる乳首をなめ回したい衝動に駆られるがそれはまた今度だ。
「あっ、アイテムがドロップしたね」
「そうみたいね……ああ、これキョンの肉じゃない?」
「うん、そうみたいだ」
ドロップしたのは既に入手済みのキョン肉だった。比較的レアドロらしいが、既出のため感動は薄い。
「いぇーい」
「いぇーい!」
もちろん、喜びを分かち合うことは忘れない。
………………
「大丈夫ですか!? なにやらすごい音と衝撃が伝わってきましたが!」
「あっ、大丈夫っす。ちょっと派手にやりすぎちゃって」
認定してもらおうと職員さんの元へ行くと、かなり焦った様子で対応された。
「派手……ということは、戦闘音ですか?」
「はい。ツレが新技試したところ天井が崩落しまして……問題ないですかね?」
「て、天井が崩落? ボス部屋の壁は非常に硬く、大規模な魔法でやっと破壊できるか、といったものなのですが……」
「ま、まあちょっと弱いところもあったんじゃないんですかね? ははは。耐久性に難あり、MANSUJI、アリーデヴェルチみたいな? あはは」
「は、はあ。まあ部屋自体は再生するので大丈夫ですが」
「じゃあ問題ないですね。よかったよかった。はい、一件落着。認定してもらえますか?」
「……はい」
ものすごく何か言いたそうな認定官さんをゴリ押しして、見事H級と認定してもらった。
H級、ゲットだぜ!
「おめでとう、ケイ」
「ありがとう、ベステルタ。H級って響きがめっちゃいいね。まるで叡智みたいで、僕の明晰な頭脳を讃えているみたいだ」
「そうね。ケイがそう言うならそうなのかも」
にっこり微笑む。肯定感がすごい。全自動肯定亜人だ。
そのまま十一層を攻略するのもよかったけど、カークさんの教えに従ってここらで止めておく。ちなみに次の層の地形は『湿地』だった。曇天と生暖かい風、長細い湿地植物、水辺植物が生い茂り、歩くのも大変そうだ。
学生時代に部活で行った尾瀬を思い出すなー。あれが湿地なのか分からんけど。
十層の広間に戻るとなんかざわついていた。どうやら先ほどのベステル天衝による衝撃がこっちまで伝わってきていたらしい。
「……さっきの揺れって、あんたら、か?」
冒険者の一人が喉をゴクリと鳴らしながら尋ねてくる。
「あ、そうっす。すんませんね、お騒がせして。じゃあ用事があるんで失礼します。ベステルタ、行くよ」
「はーい」
ペコペコと謝りながらその場を後にする。足に力を込めると『ぎゅうん!』とかなりの速度が出るが、それでもコントロールできている。うん、練喚功のノリや良し。黄金の矢との戦いはとても身になったようだ。愛すべきベステルタも「うんうん」、と僕を見て嬉しそうに頷いているので傍目から見てもいい感じなんだろう。
帰りの道も特に問題なく、キョンやらウルフやらを鏖殺して進む。つっても、そんなにいなかった。行きに大方やっつけたからね。
帰りの道すがらに何度か、ホクホク顔で休んでいる冒険者たちに出くわし、ギョッとされた。僕らのおこぼれを回収していた人らだね。バツが悪そうに顔を背けるが全然いいのに。僕もわざとやってることだし。
「……なんだよ?」
比較的若いパーティのリーダーっぽい男の子が、睨んでくる。高三くらいか? 大学一年とかそんくらいだ。若いねー。舐められないように精一杯虚勢を貼る感じがかわいい。彼の肩を叩く。
「気にすんなよ」
「……」
そう言うと、彼は下を向いてなんとも複雑な表情をする。悔しそうな雰囲気だ。きっと才能はあるんだろうな。プライドも高そうだ。それでも装備は割とボロボロで、仲間たちも不安そうな顔をしている。もうなりふり構ってられない状況なんだろう。他人の手柄を奪うような行いをする自分が許せないが、それでもやらざるを得ない。仲間のためにも。葛藤を感じる。
「もっと、堂々としてなよ。別に責めやしないよ」
「……すまん、恩に着る」
そう言って慣れてなさそうに、頭をペコリと下げた。仲間たちも続いて頭を下げる。
きっと彼らは伸びるだろうな。伸びなかったとしても、しぶとく生き残るだろう。こうやってがむしゃらに行動できる人たちだもん。僕よりずっとすごいわ。
………………
「……ん?」
四層の入り組んだ洞窟でベステルタが何かに気付いたように、キュートなおめめをパチクリとさせた。
「どしたの?」
「向こうの方で血の匂いがするわ。あと剣戟の音も……ああ、無くなったわね」
嗚呼、南無三。
また一つパーティが消えてしまったか。これも迷宮の日常だね。
でもわざわざ言うほどのことでも無いだろうに。むしろ彼女の知覚能力なら、今までもたくさんそういうの聴こえてたはず。
……む。
「もしかして、知り合いだったりする?」
「知り合いなのかしらね? ほら、大勢でいっしょに迷宮に潜ったことあったじゃない? 誰だっけ、名前が思い出せないわ。ズラ?」
「ラーズさんね」
ズラなのはジャックナイフさんの方だよ。
「ああそうよそれ。ほら、そいつがみんな連れて潜った時のパーティだと思うわ」
「げえ、マジか」
となると、羽衣、紅蓮隊、デイライトウルフのどれかかな。
「ちなみにドラゴンソードじゃないよね?」
「行きに会った連中でしょ? すりおろした子のいるパーティじゃないわ」
パメラがすっかりすりおろされ系女子として認知されているのが可哀想でならない。
あー……さすがに行くか。
いっしょに飲んだ中だし、僕を憧れた目で見てくれた。
正直、行ったら割とショック受けそうでしんどいんだけど、ここで行かないのは無いよね。
「分かった。そしたら案内してくれる?」
「はーい、こっちよ」
ベステルタは脇道を逸れまくり、ずんずんと奥へ進んでいく。途中に出てくる魔獣は別に強くなかったけど、なんとなく元の道に帰さないように出現しているように感じた。まるで「返し」のついた罠みたいだ。
体感五分位、距離的にはけっこう進んだかな。現場に到着した。
散乱したバラバラ死体がいくつもある。内臓を食い荒らされた者、生きたまま切り裂かれた者、頭を潰された者。
彼らから血生臭い、強烈な死の匂いが漂っている。
見覚えのある低ランクにしては整っている装備だ。ああ、このチャラそうな顔には見覚えがある。ぱねぇっす、とか言ってたな。どんな斧がいいのかとか。霧さばきに惚れたとか。それが絶望と苦痛の顔に歪んでいる。
「……紅蓮隊かぁ」
同期最初の脱落者は紅蓮隊だった。イケイケドンドンのパーティで、ポテンシャルのあったパーティだ。
「ていうか君ら、四層まで来てたのかよ。やるな」
確かドラゴンソードのタークは、自分たちよりも攻略が進んでいて焦ってるって感じだったな。せいぜい三層くらいかと思っていたけど、もう四層まで来ていたとは。かなり速いね。
「それでも死んじゃ世話無いよなあ」
チャラ男の見開いた目を閉じ、黙祷を捧げた。
「ケイ、これどうするの?」
「うーん、連れ帰ってあげたいけど」
こんな場所で打ち捨てられて朽ちていくなんてあんまりな気がする。
「こんなバラバラじゃ持って帰っても仕方ないでしょう」
「でも」
「これも冒険よ。ケイ、入れ込みすぎはよくないわ」
……はあ、そうだな。ベステルタの言う通りだ。これも冒険の一部。彼らは自己責任で入り、こうなった。それが……結末だ。
「それに一人まだ生きてるから、連れ帰るならそっちが先じゃない?」
「それを早く言ってください。どの子?」
「これ。この二人が覆いかぶさってるやつ」
僕は慌てて行動に移す。
折り重なるように散らばる遺体を退けると、その下には確かにまだ人がいた。でも息をしていない。
「間に合うかな……」
コスモ印のポーションをぶっかけて様子を見ると、突然「ッ! ゲホッゲホッ!」とむせて息を吹き返した。しかし、依然として意識は失っている。
それでも。
「よかった。一人助けられた。ありがとう、ベステルタ」
「こんなところで死ぬようなやつらに、ケイの時間を割くのはもったいない気もするけど……まあいいわ。どういたしまして。来るわよ」
「みたいだね」
僕らが入ったことによって、この部屋の装置が作動したみたいだ。洞窟の壁が崩れ落ち、そこから魔獣が飛び出してくる。
「ゲッゲッゲッ!」
「グルルルフフゥ!」
「グォフフフゥ!」
なんてことはない、ただのゴブリンとダンジョンウルフとコボルトだ。でも、それぞれの装備が少し良い。数打ち品だけど、手入れされた武器を持っている。さらにコボルトもゴブリンもダンジョンウルフに騎乗しており、機動力が桁違いだ。
通常の五層までの敵には無い動きだ。なるほど、これにやられたんだね。
「ごめん、ベステルタ。この子を守るから適当に狩っておいてくれるかい?」
「ええ」
そして血煙が吹き荒れる。その中で彼女はいつものように優雅な死の舞踏を披露していた。
むにっ。
「ん、あれ?」
むにむに。もにゅ。
「ん、ぅ……」
我が種巣ハンドが勝手に動いている。柔らかい感触と、こりこりとした突起。
「女の子じゃん」
凛々し目の顔つきなので男の子だと思っていた。こんな子、紅蓮隊にいたかな?
「えっ、きも」
ボス部屋に入った途端キョンをさらに一回り大きくさせた魔獣、グレートキョンが襲いかかってきた。
血走った目はぐるぐると回転しつつも、なんらかの方法でこちらを正確に捉えているんだろう。まっすぐに突進してくる。
長い舌を振り回してよだれを振り撒いてめちゃくちゃに跳ね回る姿はたいへんキモい。
「ケイ、ちょっと新技試してみるわね」
「えっ、まだあったの?」
「影抜きをたくさん練習したおかげで、さっき思いついたのよ」
ベステルタはスッと両手を構え、抜き手を左右水平に保ち、やや前傾姿勢になる。
……うん、サ◯ダー・ホークの構えっぽい。
「いくわよー……双重《ふたえ》」
ベステルタが両腕を振ると、一瞬彼女の姿がブゥンとぶれた後、その腕から幾十もの透明な空刃が放たれた。
……月◯天衝?
「ョン?」
空気がギチチ、と奇妙に縮む嫌な音。
真正面から食らったグレートキョンは、間抜けな鳴き声を最後に一瞬で絶命した。異常な威力で放たれた原理のよく分からない刃はその身体を徹底的に破壊し、八つ裂きにし、血を蒸発させ、無に帰した。
「あっ」
とベステルタが可愛らしい声をあげる。
グレートキョンを葬るだけでは足らなかった空刃たちがボス部屋の高い天井に到達し、凄まじい音を立てた。
するとその超エネルギーに敗北した天井は、多くの岩石を伴いながら崩落し、ボス部屋はあっという間に瓦礫の山と化した。
「あわわわわ」
「ごめんなさい。少しやり過ぎちゃったわ」
めんごめんご、と謝るベっさん。うん、とてもかわいい。
……ふぅ、なら仕方あるまい。ベステルタの可愛さのためならボス部屋が崩落しようが半壊しようが問題ない。
「大丈夫、素直に謝れて偉いね」
「そうよ。私は冒険を通して成長しているんだもの」
自慢げに胸を張る。ツン、どころかヅン、と大きめにはる乳首をなめ回したい衝動に駆られるがそれはまた今度だ。
「あっ、アイテムがドロップしたね」
「そうみたいね……ああ、これキョンの肉じゃない?」
「うん、そうみたいだ」
ドロップしたのは既に入手済みのキョン肉だった。比較的レアドロらしいが、既出のため感動は薄い。
「いぇーい」
「いぇーい!」
もちろん、喜びを分かち合うことは忘れない。
………………
「大丈夫ですか!? なにやらすごい音と衝撃が伝わってきましたが!」
「あっ、大丈夫っす。ちょっと派手にやりすぎちゃって」
認定してもらおうと職員さんの元へ行くと、かなり焦った様子で対応された。
「派手……ということは、戦闘音ですか?」
「はい。ツレが新技試したところ天井が崩落しまして……問題ないですかね?」
「て、天井が崩落? ボス部屋の壁は非常に硬く、大規模な魔法でやっと破壊できるか、といったものなのですが……」
「ま、まあちょっと弱いところもあったんじゃないんですかね? ははは。耐久性に難あり、MANSUJI、アリーデヴェルチみたいな? あはは」
「は、はあ。まあ部屋自体は再生するので大丈夫ですが」
「じゃあ問題ないですね。よかったよかった。はい、一件落着。認定してもらえますか?」
「……はい」
ものすごく何か言いたそうな認定官さんをゴリ押しして、見事H級と認定してもらった。
H級、ゲットだぜ!
「おめでとう、ケイ」
「ありがとう、ベステルタ。H級って響きがめっちゃいいね。まるで叡智みたいで、僕の明晰な頭脳を讃えているみたいだ」
「そうね。ケイがそう言うならそうなのかも」
にっこり微笑む。肯定感がすごい。全自動肯定亜人だ。
そのまま十一層を攻略するのもよかったけど、カークさんの教えに従ってここらで止めておく。ちなみに次の層の地形は『湿地』だった。曇天と生暖かい風、長細い湿地植物、水辺植物が生い茂り、歩くのも大変そうだ。
学生時代に部活で行った尾瀬を思い出すなー。あれが湿地なのか分からんけど。
十層の広間に戻るとなんかざわついていた。どうやら先ほどのベステル天衝による衝撃がこっちまで伝わってきていたらしい。
「……さっきの揺れって、あんたら、か?」
冒険者の一人が喉をゴクリと鳴らしながら尋ねてくる。
「あ、そうっす。すんませんね、お騒がせして。じゃあ用事があるんで失礼します。ベステルタ、行くよ」
「はーい」
ペコペコと謝りながらその場を後にする。足に力を込めると『ぎゅうん!』とかなりの速度が出るが、それでもコントロールできている。うん、練喚功のノリや良し。黄金の矢との戦いはとても身になったようだ。愛すべきベステルタも「うんうん」、と僕を見て嬉しそうに頷いているので傍目から見てもいい感じなんだろう。
帰りの道も特に問題なく、キョンやらウルフやらを鏖殺して進む。つっても、そんなにいなかった。行きに大方やっつけたからね。
帰りの道すがらに何度か、ホクホク顔で休んでいる冒険者たちに出くわし、ギョッとされた。僕らのおこぼれを回収していた人らだね。バツが悪そうに顔を背けるが全然いいのに。僕もわざとやってることだし。
「……なんだよ?」
比較的若いパーティのリーダーっぽい男の子が、睨んでくる。高三くらいか? 大学一年とかそんくらいだ。若いねー。舐められないように精一杯虚勢を貼る感じがかわいい。彼の肩を叩く。
「気にすんなよ」
「……」
そう言うと、彼は下を向いてなんとも複雑な表情をする。悔しそうな雰囲気だ。きっと才能はあるんだろうな。プライドも高そうだ。それでも装備は割とボロボロで、仲間たちも不安そうな顔をしている。もうなりふり構ってられない状況なんだろう。他人の手柄を奪うような行いをする自分が許せないが、それでもやらざるを得ない。仲間のためにも。葛藤を感じる。
「もっと、堂々としてなよ。別に責めやしないよ」
「……すまん、恩に着る」
そう言って慣れてなさそうに、頭をペコリと下げた。仲間たちも続いて頭を下げる。
きっと彼らは伸びるだろうな。伸びなかったとしても、しぶとく生き残るだろう。こうやってがむしゃらに行動できる人たちだもん。僕よりずっとすごいわ。
………………
「……ん?」
四層の入り組んだ洞窟でベステルタが何かに気付いたように、キュートなおめめをパチクリとさせた。
「どしたの?」
「向こうの方で血の匂いがするわ。あと剣戟の音も……ああ、無くなったわね」
嗚呼、南無三。
また一つパーティが消えてしまったか。これも迷宮の日常だね。
でもわざわざ言うほどのことでも無いだろうに。むしろ彼女の知覚能力なら、今までもたくさんそういうの聴こえてたはず。
……む。
「もしかして、知り合いだったりする?」
「知り合いなのかしらね? ほら、大勢でいっしょに迷宮に潜ったことあったじゃない? 誰だっけ、名前が思い出せないわ。ズラ?」
「ラーズさんね」
ズラなのはジャックナイフさんの方だよ。
「ああそうよそれ。ほら、そいつがみんな連れて潜った時のパーティだと思うわ」
「げえ、マジか」
となると、羽衣、紅蓮隊、デイライトウルフのどれかかな。
「ちなみにドラゴンソードじゃないよね?」
「行きに会った連中でしょ? すりおろした子のいるパーティじゃないわ」
パメラがすっかりすりおろされ系女子として認知されているのが可哀想でならない。
あー……さすがに行くか。
いっしょに飲んだ中だし、僕を憧れた目で見てくれた。
正直、行ったら割とショック受けそうでしんどいんだけど、ここで行かないのは無いよね。
「分かった。そしたら案内してくれる?」
「はーい、こっちよ」
ベステルタは脇道を逸れまくり、ずんずんと奥へ進んでいく。途中に出てくる魔獣は別に強くなかったけど、なんとなく元の道に帰さないように出現しているように感じた。まるで「返し」のついた罠みたいだ。
体感五分位、距離的にはけっこう進んだかな。現場に到着した。
散乱したバラバラ死体がいくつもある。内臓を食い荒らされた者、生きたまま切り裂かれた者、頭を潰された者。
彼らから血生臭い、強烈な死の匂いが漂っている。
見覚えのある低ランクにしては整っている装備だ。ああ、このチャラそうな顔には見覚えがある。ぱねぇっす、とか言ってたな。どんな斧がいいのかとか。霧さばきに惚れたとか。それが絶望と苦痛の顔に歪んでいる。
「……紅蓮隊かぁ」
同期最初の脱落者は紅蓮隊だった。イケイケドンドンのパーティで、ポテンシャルのあったパーティだ。
「ていうか君ら、四層まで来てたのかよ。やるな」
確かドラゴンソードのタークは、自分たちよりも攻略が進んでいて焦ってるって感じだったな。せいぜい三層くらいかと思っていたけど、もう四層まで来ていたとは。かなり速いね。
「それでも死んじゃ世話無いよなあ」
チャラ男の見開いた目を閉じ、黙祷を捧げた。
「ケイ、これどうするの?」
「うーん、連れ帰ってあげたいけど」
こんな場所で打ち捨てられて朽ちていくなんてあんまりな気がする。
「こんなバラバラじゃ持って帰っても仕方ないでしょう」
「でも」
「これも冒険よ。ケイ、入れ込みすぎはよくないわ」
……はあ、そうだな。ベステルタの言う通りだ。これも冒険の一部。彼らは自己責任で入り、こうなった。それが……結末だ。
「それに一人まだ生きてるから、連れ帰るならそっちが先じゃない?」
「それを早く言ってください。どの子?」
「これ。この二人が覆いかぶさってるやつ」
僕は慌てて行動に移す。
折り重なるように散らばる遺体を退けると、その下には確かにまだ人がいた。でも息をしていない。
「間に合うかな……」
コスモ印のポーションをぶっかけて様子を見ると、突然「ッ! ゲホッゲホッ!」とむせて息を吹き返した。しかし、依然として意識は失っている。
それでも。
「よかった。一人助けられた。ありがとう、ベステルタ」
「こんなところで死ぬようなやつらに、ケイの時間を割くのはもったいない気もするけど……まあいいわ。どういたしまして。来るわよ」
「みたいだね」
僕らが入ったことによって、この部屋の装置が作動したみたいだ。洞窟の壁が崩れ落ち、そこから魔獣が飛び出してくる。
「ゲッゲッゲッ!」
「グルルルフフゥ!」
「グォフフフゥ!」
なんてことはない、ただのゴブリンとダンジョンウルフとコボルトだ。でも、それぞれの装備が少し良い。数打ち品だけど、手入れされた武器を持っている。さらにコボルトもゴブリンもダンジョンウルフに騎乗しており、機動力が桁違いだ。
通常の五層までの敵には無い動きだ。なるほど、これにやられたんだね。
「ごめん、ベステルタ。この子を守るから適当に狩っておいてくれるかい?」
「ええ」
そして血煙が吹き荒れる。その中で彼女はいつものように優雅な死の舞踏を披露していた。
むにっ。
「ん、あれ?」
むにむに。もにゅ。
「ん、ぅ……」
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