【絶対幼女伝説】 〜『主人公は魔王なのに』を添えて〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)

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紳士さん

3話 〜ハートが熱けりゃ何でもいいのさ〜

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「ふふふふふ、は~はっはっは~! 終わった、終わったぞ!」

 ゼティフォールが一頻り喜んだ後、広場脇にある木でできた椅子に腰かけ、いつの間にか置かれていたコーヒーを啜りつつ余韻に浸る。

「魔王たる私が兵のため、献身的に蘇生魔法を使うのは少しばかり癪に障ったが、ふむ……ずずず。達成してしまえば、なかなかどうして悪くない気分だ」

 文字通り山の様に有った、砕け散った骨はもう無かった。

「しかしこのコーヒー、香りだけでもリラックスできるが美味いな。ふむ、苦味がしっかりしているが、豆のえぐみが感じられぬところをみると、良い豆であり焙煎も素晴らしい。それに、飲み口がスッキリとしていることから、湯加減も絶妙とみた。酸味は控えめで落ち着けるな。あキレが有るにもかかわらず、後味が潮の様に潔く引いていく故にもうひとくち飲みたくなる。疲れた身体に染み渡る」

「おいおい、オレっちのコーヒー勝手に飲んじまったのかよ。いるんなら、早めに言ってくれればよかったのによ~」

 ダンテはおもむろにあらわれ、悔しそうに愚痴をこぼす。

「おっと、ダンテ。すまない、このコーヒーはお前のものであったか。もう殆ど飲み切ってしまった」

「まあ、あんだけ褒めてくれりゃ、攻める気も出てこねえしいいんだけどよ」

「そうか、ご馳走であった。ありがとう」

「ん? 魔王さんにすんなり礼を言われるのは、むず痒い気持ちになるな」

 ダンテはテーブルを挟んでゼティフォールの前に座る。

「そうか? 私は常日頃から相手に敬意をもって接しているつもりだがな」

「ま、世界を闇に包んだ魔王だからな、基本的には礼を言ってもらえるなんて思わねえからよ」

「そんなものか。ああ、それより、少し疑問に思ったのだが、お前はスケルトンであるにも関わらず、コーヒーを飲もうとしていたが、飲めるのか?」

「ああ、なんか、他のスケルトンとは違うみたいでな、意識すりゃ飲み食いできるんだ。あと、肋骨の内側が異次元ポケットみたいになってて、いろんなもの収納できんだよ。めちゃくちゃ便利だぜ」

「他のスケルトンは無いのか、ポケットは?」

「無いみてえだな。ローランも無いみてえだし」

「ふむ、見た目もなにやら他のスケルトンとは違うみたいだ」

「お! 気づいちまったか! そうなのよ、他のやつらは、力がついても見た目が殆ど変わらねえのに、オレは鍛えれば鍛える程筋肉が肥大化するんだよな。その分、筋肉痛みたいなのにもなるんだがよ」

「では、別種のモンスターということなのか?」

「いや、まだ判らねえな。今の所ゴツイスケルトンでしかねえからな。しかし、ちょいと見直しちまったぜ」

「何がだ?」

「偏見なんだけどよ、魔王って魔法ばっかりで近接戦闘とか、筋肉とか、無頓着だと思ってたからな。正直に言えば、あんまり好きにはなれなかったし、忠誠なんざ欠片もなかったんだよ」

「どおりで、敬意が感じられなかったわけだな。ならば、何故魔王軍に入ったのだ? 魔王討伐を成した4英雄のひとりであるお前ならば、大国の騎士に迎え入れられるであろうし、教えを乞いたいモノもいただろう。あわよくば、一国の主にでもなれたであろうに」

「オレは別にそんな大層なことはしたくねえんだよ。そんなことは別にいいじゃねえか。そうだ、それよりオレと手合わせしてくれねえか?」

「…………ああ。いいが、何故だ?」

「漢を知るには、やっぱり拳だろ? あと、白雷の塔はくらいのとうに行くらしいじゃねえか、道中でいつ戦いになってもいいように魔王さんもウォーミングアップしときたいんじゃねえの?」

「確かにな」

「あと、オレも自分の今の実力を知りてえんだ」

「いいだろう、相手してやる」



 広場の中央でダンテとゼティフォールが対峙し、近くで訓練をしていた兵士たちは避難している。

「いつでもいいぞ?」

「ふん、そっちからはしかけて来ねえのか? それとも、相手の出方を見なけりゃ怖くて一歩も踏み出せないか?」

「安い挑発だ。……しかし、それが望みであれば叶えてやろう。いくぞ!」

 ゼティフォールは地面をえぐる様に蹴り、衝撃波を纏いながら距離を詰める。

「速え!」

 ダンテは腕を重ねて頭を守り、防御の構えをとる。

「ぬん!」

 ゼティフォールの拳はダンテの腕で塞がれる。が、ダンテはそのまま数メートル地面を削りながら後ずさりしてしまう。

「重てえ。が!」

 未だ衰えぬ衝撃はどんどんふたりの距離をはなそうとするが、ダンテは身体をひねり空中で回転してエネルギーをいなした。

「ほう」

「関心してる暇はねえぜ!」

 ダンテは空を蹴って、ゼティフォールに目掛けて拳を振り落とした。

 それを寸でのところで躱し、カウンターに回し蹴りを放つ。ダンテはそれをいたのか、体を低く屈めゼティフォールの軸足を払う。

「何!?」

 今度はダンテが、空中で無防備になったゼティフォールに拳をおみまいした。

「どりゃあ!!」

「ぐっ!」

 吹き飛ばされ地面に打ち付けられたが、ゼティフォールはすぐさま地面を叩き体勢を整え、間髪入れずに空中に向かって手刀を放つ。

 手刀はかまいたちを起こしてダンテを襲う。

「ぐぉお!」

 その隙を見逃さず、ゼティフォールはダンテと距離を詰め、大きく息を吸い、腰を落とし、拳を引き、

「はぁあ!!」

 正拳突きを放った。

「ぐはぁっ!?」

 それをもろに喰らったダンテは100メートル以上離れた城の柱に撃ち付けられる。しかし、それだけに留まらず、柱は粉々に砕かれ強固にできた城は瞬く間に大きな風穴を開けた。

「やりすぎたか……?」

 ゼティフォールがダンテを少し心配する。

「…………なめんじゃ、……ねえ!!」

 ダンテは、己を生き埋めにしていた瓦礫を気合いで吹き飛ばす。

「ふっ、やるな!」

 ゼティフォールはふっと笑いすぐに身構えた。

「ぐぅぉ…………」

 しかし、思いの外ダメージが大きく、ダンテはそのまま気を失って倒れてしまった。

「やはり、ただのスケルトンでは無いらしい……」

 その後、ゼティフォールはダンテを衛生塔に運び、治療が始まったのを見届けると、己の部屋に戻った。



 翌日、ゼティフォールが自室で手荷物の確認をしていると、ダンテが訪ねてきた。

「お、そろそろ出発か?」

「ああ」

「誰か伴をつけるのか?」

「ローランとみのたうろすに来てもらう。お前もくるか?」

「いや、傷は治ったが、まだまだ修行が足りねえ」

「そうか? あの一撃を耐えたのだ、十分戦えるのではないか?」

「馬鹿にしちゃいけねえぜ、魔王さんよ。あれ、手加減してただろ? 筋肉の動きは服を着てたって判る」

「お見通しか。だが、戦えると思ったのは嘘ではないぞ」

「へっ。それも判って言ってんだよ。まだ本調子じゃないってのもあるが、そうだな、オレはあんたを認めたんだよ。完全にとはいかねえ、まだ知らねえ事の方が多いからな。だがよ、拳を交わしてあんたが実は熱い漢だってのが判った」

「そんなに簡単に判るものか? ヒトとなりは」

「判るさ。奥底のもんなんて、皆意外と単純なんだよ。複雑にしてんのは外面の方だ。ま、だからよ、魔王さんが何か困った時には助けに行ってやるよ。どこに居てもな」

「どこに居てもか?」

「ああ、地の果てだって、死の国だって行ってやるぜ」

「なぜ、そこまで?」

「ん? 何か、仲良くなる為のキッカケが欲しいのか? 理由が欲しいのか? …………ヒトってのは色んなやつがいる。当然、理由が必要なヒトが多いのは知ってるが、オレはオレだ。オレはあんたの拳が気に入った。それだけだ」

「単純だな」

「ああ、単純だ」

 ゼティフォールが懐にしまっていた懐中時計を取り出し、時間を確認する。

「おっと、引き留めちまったか。じゃあな、気を付けて行ってこいよ」

 ダンテはゼティフォールを抱擁する。

「ああ」

 ──────友とはいいものだな。

 そう思ったゼティフォールであった。

「しかし、骨だけあって風をよく通すのだな。肋骨の辺りが少し肌寒い」

「うるせえ!」


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