ギャル勇者メーシャちゃんに、まとめて全部まかせろし! 〜世界征服たくらむ邪神にガツン! と右脚叩き込みます!!〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)

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ギルド番長

110話 『番長メーシャちゃんは、風と共に……』

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 メーシャたちは表門(とは言っても壊れて原型を留めていないが)に辿り着くと、まず唯一起きていたアメリーに事情を訊きつつ回復させ、続いて気絶していたワルターを助け起こし、それからワルターの仲間たちを助けていった。
 タタラレから救い出した戦士の男が目を覚ますと
『瓦礫の中に俺の仲間がいるはずだ。すまない。君たちには迷惑をかけてばかりだが、どうか助けて欲しい』
 と頼まれ、メーシャは快く承諾。
 サンディーと共に瓦礫をパパっと撤去し、本隊のヒトたちを見つけ出した。
 瓦礫が上手い具合に積み重なっていたお陰で、本隊のヒトたちは重症を受けるだけに済んでいた。
 砦はもう原型どころの話ではなくなったが、こんなに大きな被害が出たにも係わらず、死者ゼロ名。
 奇跡的である。
 この砦(瓦礫も殆ど奪い取って撤去してしまったので殆ど更地だが)の用事を済ませた一行は、仲間の待っている野営地に向かったのだった。
「しかし、メーシャちゃんが回復持ちで良かったぜ」
 ワルターが背伸びをしつつ爽やかに笑う。
「そうね。私は魔力切れで、魔力回復アイテムも無くなってしまっていたし、メーシャさんがいなかったら今頃、モンスターに食べられていたかもしれないわね……」
 シャロンが困った顔でため息をついた。
「あんま褒められると、くすぐったいし~。それよかワルター先輩だ。あのすごい技、めちゃビックリしたんだけど!」
 メーシャは話を切り替えた。頼られるのは慣れているが、褒められるのはあんまり慣れていないのだ。
「あれは……メーシャちゃんなら問題ないかな?」
「そうですね。悪い方ではないようですし、良いでしょう。それに、そう簡単に出せる代物ではないですから」
 ワルターの疑問にアメリーが答える。
「それもそうか。もし出すとしたら、本ニンに覚悟があるってこと。悪用するなんてできないか」
「はい」
「メーシャちゃん、あれはね『シャイニングロード』って言って────」
 ワルターは納得した後『ブレイブライザー』についてメーシャに教えた。
 夢に出た龍に教えて貰ったところから『突拍子もないことだけど』と付け加えつつ、方法やどういう経緯でそうなったか等、オーカス戦での出来事を掻い摘んで伝えていった。
「へぇ~。でも、あーしは七大行? 全部は使えないからな~。まあ、“奪った”やつでいけんのか分かんないけどさ……。バランスとるのとか、どうやんだろ? んー……」
 メーシャは腕を組んで、ひとりでぶつぶつ言っている。
 炎、水、地、風は何とかなりそうだが、雷はバッドバットの際奪わず仕舞い、光と闇はそもそも機会がなかった。
 デウス曰く『ラードロの出す禍々しいオーラはどうやら闇ではない』とのこと。
 それに、小さなころから魔法の鍛錬を休まず続け、魔力の扱いに慣れているワルターだからこそ成功したのかもしれない。
『俺様が創った宝珠があれば、なんとかなるかもしれねえがな……。まあ、こればっかりは腕っぷしが強いだけじゃどうにもなんねえ』
「僕が手伝えれば良かったんですけど、魔法ばかりは……」
 ヒデヨシはラードロの力と魔法の力を合わせた能力を得たが、これも特殊な力なので、もし行の力が有ったとしても『ブレイブライザー』には使えない可能性が高い。
「気にすんなし。これはその内考えよ」
「……もし、メーシャちゃんがどうしても使いたくなったら、オレちゃんかアメリーちゃんに声をかけてよ。教えるからさ」
 そんな様子を見てワルターが言った。
「えっ、イイの?」
 思いがけない提案に、メーシャは目を丸くする。
「恩を返さないなんて、パリピ失格っしょ?」
「あんがと!」
「……それ、野営地に着いたことだし、皆にクエスト完了したこと教えてあげようぜ」
「ほ~い」
 メーシャたちが帰ってくるのを見つけると、野営地にいた皆の顔が明るくなった。
「おお! 無事に帰ったかメーシャ君、ヒデヨシ君!」
 裏門の隊長であるデイビッドが、灼熱さんと氷河を連れてやって来た。
「もち! ラードロはあーしが、タタラレはヒデヨシが、オーカスたちはワルター先輩の隊が倒したよ。あ、オークたちはサンディーが食べちゃったけどね」
「すばらしい活躍だな。まさに英雄と言えよう! しかし、そのサンディー? とは、誰の事だ? もし既に面識があるのならすまないが……」
 デイビッドは、クエストクリアの立役者を全員ギルドに報告し、特別報酬をお願いしたいと思っていたのだ。だが、残念ながらサンディーという名には聞き覚えが無かった。
「ああ、サンディーとは面識ないカンジか。サンディーはね、サンドワームで、あーしの友達。ちょいちょい手伝ってくれてんの。ギルドには入ってないけどね」
「ほ、ほう……! サンドワームと、友達……!?」
 デイビッドは戦慄した。
「あ、見てみる?」
「いや、遠慮しておこう。サンドワームと言えば、数多の冒険者を返り討ちにしてきたモンスター。つまり、下手にここに出てしまうと混乱を招きかねないからな……」
 この動揺っぷりから察するに、デイビッドもサンドワームに辛酸をなめさせられたのかもしれない。
「そっか。それもそうだね」
「ほっ……。まあ、そのサンディーにも何らかの形で報酬が出るようにはしよう」
「おっ、イイの? あんがとだしー!」
「お嬢! 実は、あっしたちも報酬を貰えることになったんでぃ!」
 横に控えていた灼熱さんが嬉しそうに言った。
「護衛をしたお礼だって、ウチも。お金はいらないと言ったら、美味しい豆をくれてね……!」
 氷河も満足そうだ。
「よかったじゃん、ふたりとも!」
「道中モンスターが現れたんだが、ふたりのお陰で怪我ニンを増やすことなく、ここまで辿り着く事ができたのだ。それで報酬を渡そうにもお金はいらないとのことだったから、渡そうと思った同額の価値の金の豆をな」
 デイビッドが補足した。
「金の豆……。それって、美味しいの?」
 メーシャが首を傾げる。確かに、高級そうではあるが決して美味しいイメージがわかないのも事実。
「そうだな、美味いのは美味いと思う。でも、俺はあんまり豆を食わないから、違いがいまいち分からなくてな……」
 デイビッドはバツの悪そうな顔だ。
「そか。まあ……うん。おけ」
 メーシャはデイビッドを見て納得する。
 心の中で『トラの獣人だもん。しゃーない』と思ったのは内緒だ。
「なあ、これって、植えたら増やせるのかぃ?」
 灼熱さんが嬉しそうにデイビッドに尋ねる。
「ああ。でも、肥料をやりすぎると、それこそサンドワーム以上に幹が伸びるらしいから気を付けてな」
 ではなく。つまり、草というよりは、もしかすると某童話の豆の木のレベルまで育つのかもしれない。
「ロマンじゃん……!」
 メーシャも金の豆が欲しくなってしまったのだった。
「これから俺たちは野営地を畳んだり、ギルドに報告するための調査や後始末をしないといけない。だが、メーシャ君たちは疲れているだろうから、まっすぐ帰るといい。まあ、本音は今回良い所がなかったから、せめてこれくらいは役に立ちたいといったところだが……」
「それは助かります。僕は結構疲れちゃいましたし……」
 ヒデヨシはメーシャのポケットの中で眠そうに言った。
「良かった。では、ギルドには連絡しておくから、気が向いた時に報酬を受け取りに行ってくれ」
「おけです! じゃ、デイビッド隊長、ありがとうございましたー」
 メーシャは笑顔で敬礼をした後、ヒデヨシ、灼熱さん、氷河も後に続いた。
「……ああ、すまない。最後にひとつだけ、良いだろうか?」
 そして、メーシャが踵を返し、さて帰ろうとしたところ、デイビッドが思い出したように声を掛けた。
「ん? なぁに?」
 メーシャが顔だけデイビッドに向ける。
 デイビッドは、色々訊きたかった。
 強さの秘訣、なぜモンスターと心を通わせることができるのか、見たことのない能力のこと、それほど強いにも係わらず何故最近まで一切名前を聞かなかったのか、なぜラードロを前にして恐れを抱かなかったのか、他にも細かい事を色々訊きたかった。
 だが、それを全て聞いたとして、自分自身が強くなったり、ジン生の役に立つわけでは無い。それに、武人の事を根掘り葉掘り聞くのは野暮ってものだ。
 だから『ひとつだけ』訊くことにした。
「……メーシャ君、君は。君は……何者なんだ?」
 デイビッドはメーシャを見据え、神妙な面持ちで訊いた。
 すると『ふっ』と爽やかに笑い、

 ひとことそう言って、メーシャは風を浴びながら去っていった。
「バン……チョウ……!!」
 デイビッドは、『番長』について何も知らなかったが、ただ、そういうがこの世に存在することだけは、しかと心に刻まれたのだった……。
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