捨てる王子あれば拾う皇子あり?

ねこたまりん

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「お前など、妖精のように可憐なルーシーと比べたら、蠅以下の存在だからな!」

 ルーシーは、ローザの腹違いの妹だ、ということになっている。

 ローザの実母がお産で儚くなった直後に、継母が家に入った。しかも生後間もないルーシーを連れて。

 ローザの父は何も語らないが、周囲の誰もが、ルーシーは父の実子だと信じている。

(語りたくても、何も語れないのよね、あの父上は…)
 
「ムーア卿からは、お前の処分がいかなるものであっても従うという言葉をもらっている。実の親にも愛されないお前などを王城でこき使ってやるのだから、私のほうが慰謝料をもらってもいいくらいだ。そう思わんか?」

 あまりの言いざまに呆れたのか、周囲のひそひそ声に非難の言葉がちらちらと混じるけれども、王子蛆虫は気づく様子もない。

(どんどん酷くなっていくわね、この人。前からここまで最低な王子下衆じゃなかったと思うんだけど、ルーシーと過ごすうちに、本性が磨かれちゃったってことかしら)

「これまでの所業を思えば、毒杯を何倍でもくれてやりたいところだがな。お前のような蠅以下の女でも、実の姉を死罪にはしたくないと助命嘆願した愛情深いルーシーに、死ぬほど感謝するがいい! 死なない程度にな!」

 カフェテラスに野次馬が群がって来たらしく、席に座れず立ち見をする者たちが増えてきた。目的はもちろん、王子クソ虫の茶番の見物だが、中にはゴシップ誌の記者なども混じっているに違いない。

(他国の間諜もいるかもね。王族がこの有様だもの。簡単に乗っ取れそうって思われてるんじゃないかしら、この国)

「おい、なんとか言ったらどうだ?」
「……」
「罪の重さを思い知って、言葉も出ないか? 無様だな!」

 俯いたまま反応のないローザにじれたのか、ヘンリーが挑発してくる。

「我が最愛のルーシーにした仕打ちを少しでも反省するならば、少しは手心を加えてやらんでもないぞ」
「……」
「だんまりか。ならば罪状を一つづつ思い出させてやるから、よく聞け!」

(その罪状とやら、こちらが忘れる以前に、毎度毎度変わるのよね。覚えてられないのは王子ボケのほうでしょうが!)


「まず、ルーシーの大切な形見の品であるブローチを奪った、窃盗の罪だ! 忘れたとは言わさんぞ!」

(あれは私の実母の形見なんだけど! しかも、私の私物入れから盗っていったのはルーシーなんだけど! 別に必要ないからいいんだけどね!)

「次に、自分の侍女を使って、ルーシーに悪口を言わせ、深く心を傷つけた罪だ!」

(ああ、あのヤラセ事件ね。普段私に嫌がらせばっかりしてくる侍女が、棒読みでしょーもない悪口言わされてたから、笑うの我慢するのが大変だったのよ。あの侍女、王子糞害の命令で鞭打ちされてたけど、同情する気にはならなかったわね)

 それでもこっそり侍女に防御魔法を使っていたローザだった。

「さらに、王城の大階段のてっぺんからルーシーを突き落とした罪だ! ルーシーが無傷でなければ、その場で手打ちにされていただろうに、惜しいことをしたものだ!」


(大階段のてっぺんから突き落とされたのは、ルーシーじゃなくて私なんだけど! 階下に瞬間移動したから無事だったけどね。その場で手打ちにしてくれれば、そのまま死んだふりして国外にでも逃げたんだけど、ほんと残念だったわよ!)





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